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事件番号/事件名裁判年月日/裁判所判決書
[下級] [刑事] 平成31(わ)28  255ViewsMoreinfo
平成31(わ)28
本件は,心中を目的とした承諾殺人と死体遺棄の事案である。
事案の概要
令和元年5月14日
佐賀地方裁判所
詳細/PDF
HTML/TEXT
[下級] [刑事] 平成27(わ)155  291ViewsMoreinfo
業務上横領,殺人
平成27(わ)155
本件の犯人であるか)第2 殺害行為と死因1 本件の犯人は,油圧ショベル(本件ショベル)で,軽自動車(本件車両)ごと被害者らを攻撃して穴に落とし,その上から土砂をかけるなどして埋めた。この加害行為は被害者らを死亡させる危険性の高い行為であり,犯人は,その危険性を認識したにとどまらず,被害者らを殺害する目的で,あえてその加害行為をした。そして,被害者らは,その加害行為の結果,死亡した。したがって,犯人について,被害者らに対する殺人罪が成立する。2 以下,補足して説明する。被害者らの死亡cのBの敷地内の穴から埋められた男性の遺体が発見され,その側に埋められた本件車両から女性の遺体が発見された。これらの遺体は,DNA鑑定の結果や免許証等の遺留品から,被害者らである。殺害行為(穴に埋めて殺害したか)ア 加害行為の態様証拠により認定できる事実から推認すると,本件の犯人が被害者らにした加本件車両に乗車して事務所前に到着した被害者らを,降車する前にすぐに攻撃した。被害女性は本件車両のドアがロックされた運転席でシートベルトをしていたから,犯人は,運転席にいた被害女性を車ごと攻撃し,殺害したことが分かる。別の場所で殺害したなら,そのまま埋めればいいだけで,手間をかけて車に乗せ,シートベルトをする必要はない。本件車両そのものを攻撃する必要もない。また,本件ショベルで運転席の被害女性を攻撃するには,車で到着してすぐの降車前か,帰り際の停車中を狙うしかない。実際にルーフの損傷には横ずれがないから,打撃時に車は停止していた。被害者らは午後3時に事務所に呼び出されており,被害男性も本件車両の側に埋められていたから,被害女性が本件車両を運転し,被害男性がこれに同乗して事務所に到着したことが分かる。その際,犯人は,110番通報等のリスクを避ける必要があるから,被害者らを同時に攻撃するしかない。しかも,帰り際だと被害者らが乗車するタイミングのずれや,自分が本件ショベルに乗り込むタイミング次第で,同時に攻撃するのは難しい。また,帰り際に攻撃したのであれば,被害男性が持っていたボイスレコーダーに犯行当日の記録があったと考えられるが,そのような記録はなかった。したがって,犯人は,被害者らがBの事務所付近に車をとめることを予想し,その付近に置いた本件ショベルに乗り込んで待ち伏せ,被害者らが到着してすぐに,本件ショベルを操作し,被害者らを車ごと攻撃したと推認できる。本件ショベルが午後3時頃から午後6時15分頃まで稼働していたことからも,被害者らが事務所に到着してすぐに攻撃し,相応の時間をかけて穴に埋めたことが分かる。ルーフにスケルトンバケットを振り落とした。本件車両のルーフは,ボンネット付近まで大きくへこみ,全面に擦過傷があり,その損傷が本件ショベルのスケルトンバケットの底面のます目と一致したから,犯人は,本件ショベルを操作し,本件車両のルーフにスケルトンバケットの底面を振り落とし,被害者らを攻撃したことが分かる。被害女性の頭の皮がめくれていたのは,ルーフ等で頭部に打撃を受けた結果とも考えられる。スケルトンバケットとキャタピラーで本件車両を挟み込んだ。本件車両を穴まで引きずっていった。本件車両の運転席ドア等に,直線状に5か所の硬い突起物ようのもので押し込まれた痕跡があり,これらと本件ショベルのスケルトンバケットの爪の位置が一致したから,犯人は,本件ショベルを操作して,スケルトンバケットを運転席ドア等に振り下ろし,その爪で同ドア等を突き刺したことが分かる。被害女性の右足が欠損していたが,ちょうど運転時の右足と爪を突き刺した位置が一致する。また,助手席ドアに円弧状を描く損傷があったから,犯人は,更に本件ショベルを操作し,スケルトンバケットを動かして本件車両を引き寄せ,スケルトンバケットとキャタピラーで本件車両を挟み込んだことも分かる。さらに,事務所付近から穴の方向に向かってアスファルトにスケルトンバケットの爪の痕跡があり,本件車両の底部に3か所の擦過傷があったから,犯人が本件車両を穴の方向に引きずったことは間違いない。本件車両をルーフを下にして深さ約5mの穴に落とした。本件車両と被害男性に土砂をかけるなどして埋めた。本件車両は穴の中の地下約5m付近に,ルーフを下にして埋められていたから,犯人は,被害者らを車ごと攻撃した後,穴まで引きずり,本件車両をルーフを下にして深さ約5mの穴に落としたことが分かる。その後,被害男性がどのようにして車外に出たのかは不明であるが,穴に落ちた衝撃で車外へ出ても不自然ではない。いずれにしても,犯人は,本件車両と被害男性の上から,本件ショベルで土砂をかけるなどして,被害者らを穴の中に埋めたことは間違いない。イ 加害行為の危険性と殺害目的車内にいたとはいえ,かなり重量のあるスケルトンバケットで車ごと攻撃するのは危険である。その上で,穴に落として埋めることが,被害者らを死亡させる危険性の高い行為であることは,誰にでも分かる。当然,犯人は,その危険性を認識していたにとどまらず,被害者らを殺害する目的で一連の加害行為をしたことは間違いない。ウ 弁護人の主張弁護人は,本件の犯行態様は不明であり,結局,殺意があるかも不明であるから,殺害行為の立証は不十分であると主張する。しかし,前記の加害行為があったことは,本件車両や現場の状況等に関する客観的事実から推認できる。そして,その限度でも殺害行為と殺意があったことの立証は十分である。細かな犯行態様が不明であってもこの結論は動かない。弁護人は,犯人が被害者らを待ち構えていた証拠はないし,被害者らが待ち構えられているところに近づくはずがないと主張する。しかし,犯人が被害者らを待ち構えていたことは,本件の客観的事実や犯人の立場になって考えることで推認できる。また,Bのような現場では,仮に犯人が被害者らが停めた車の近くで本件ショベルに乗り込んでいても,それは普通の光景であり,誰も気にとめない。本件では,被害者らが犯人が待ち構えていると考えなかっただけである。弁護人は,被害者らは110番通報もせず,逃げようとした形跡がないから,本件ショベルで攻撃された際に生きていたとは考え難いと主張する。しかし,被害者らは,本件の直前まで日常生活を普通に送っていた。通報等の形跡がないから加害行為の前に死んでいたというのは通常ありえないことであって,被害者らに通報や逃走をする余裕がなかっただけと考えるのが常識的である。被害者らが加害行為の前に死んでいれば車ごと攻撃する必要はないし,シートベルトをする必要はない。犯人がした加害行為によって被害者らが死亡したことは,常識に照らして間違いない。死因(窒息により殺害したか)ア 死因の認定被害者らの遺体の鑑定結果等からは,医学的にみれば,いずれの死因も不明である。しかし,前記のとおり,証拠上,殺害行為があったことと,それによって被害者らが死亡したことは,いずれも明らかであり,被害者らに対する殺人罪が成立することは間違いない。そして,殺害行為の具体的内容と2名が死亡した点で,行為責任の中核部分が定まるから,更にその中で具体的な死因が何であるかは,刑の軽重とは関係が薄い。本件の加害行為の内容を踏まえると,その結果,打撃で死亡したのか,穴にたまった水で溺死したのか,土砂により窒息死したのかは,偶然の要素が強く,その点から刑の軽重はつけられない。したがって,被害者らの死因については,医学的に精密な認定をする必要はなく,常識に照らして認定すればよい。イ 被害女性の死因被害女性は,車ごと攻撃され,シートが大きく開くほどルーフやピラーに挟まれ,逆さの状態で穴に落とされており,全身に圧迫を受けている。その状況を考えると,胸郭の運動が制限されて呼吸不全を起こし,窒息により死亡したと認められる。ウ 被害男性の死因被害男性は,車ごと攻撃されて穴に落とされ,車外で土砂を身体に直接かけられて埋められており,全身に打撃や圧迫を受けている。これらによって肋骨が多発骨折し,フレイルチェストによる呼吸不全を起こして窒息した可能性があることは,医師の所見が一致した。それに伴う外傷性ショックについては,傷や出血が少ないので可能性が低い,同時に進行した可能性が否定できないと医師の所見が割れた。さらに,土砂による全身圧迫が肋骨多発骨折の原因となるかについても医師の所見が割れたが,少なくとも,土砂で埋められた態様からいって,全身が圧迫され,これにより胸郭の運動が制限されて呼吸不全が起こる可能性があることは否定できない。被害男性にうっ血等の窒息死の典型的な所見はなかったが,土砂による広い作用面を考えると,血の逃げ場がないから不自然ではない。そうすると,被害男性は,フレイルチェスト又は胸郭運動制限のいずれかによって呼吸不全を起こし,窒息して死亡したと認められる。ただし,外傷性ショックが先行した可能性も残るから,「窒息等により死亡」したと認定するのが相当である。エ 弁護人の主張弁護人は,被害女性について,窒息死の所見がないのに状況だけから窒息死と認定するのは無理だから,死因は不明であり,あえていえば上あご骨折及び脳内出血という頭部外傷が死因になった可能性があると主張する。しかし,前記のとおり,死因について医学的に精密な認定をする必要はない。被害女性が置かれた状況や身体に受けた外力からは,窒息により死亡したと考えるのが最も自然である。上あご骨折及び脳内出血は,死因に結びつくような程度のものではない。これらの頭部外傷は,ルーフ等による打撃か,バケットの爪による打撃の結果と考えた方が自然である。弁護人は,被害男性について,圧死の所見がないこと,当時,降雨により穴に相当水がたまり,被害者らが車ごと穴に落ちた際に生きていれば溺死する可能性が高いのにその所見がないこと,穴に埋めるのには相応の時間がかかること等から,被害者らは死亡してから穴に埋められたのであり,生き埋めされてはいないと主張する。たしかに,本件では,被害者らがいつ死亡したかは不明であり,確定できない。呼吸不全や外傷性ショックの進行が早ければ埋める前に死亡した可能性があり,その進行が遅ければ埋めた後に死亡した可能性がある。結局,本件では,被害者らが生きたまま埋められたかどうかは不明であることを前提とするしかない。そうすると,犯人が被害者らが生きていることを認識しながら,あえて生き埋めにしたとも認定できない。したがって,弁護人の主張は,その根拠とする実験等が正確であるかは疑問があるものの,その結論には賛成できる。検察官は,犯人は被害者らを生き埋めにして殺害したと主張するが,本件ではそのような認定はできない。第3 犯人性1 被告人が本件の犯人であることは,証拠によって認められる以下2の各事実から推認できる。弁護人の主張を踏まえても,この推認は揺るがない。したがって,被告人が本件の犯人であると認定した。2 以下,補足して説明する(以下の年を示さない日付は,いずれも平成26年のものである)。犯行場所を,被告人が管理していたことア 犯行場所等から,どんな犯人であるといえるか。犯行場所は,Bの敷地である。Bに関係のない第三者が,敷地内に入り込み,犯行を準備し,自由に穴を掘り(あるいは掘られた穴を自由に使い),その穴に被害者らを埋めることは,ほとんど不可能といっていい。少なくともBの従業員等の関係者でなければ,そのようなことはできない。事務所の鍵が従業員らで管理され,本件ショベルの1本しかない鍵が事務所内で保管されていたことからもそういえる。また,Bの一般の従業員が,自分の会社の敷地に,殺害した被害者らを埋めるなんて普通はしない。後でその同じ場所に穴を掘られたら犯行が発覚してしまうから,そのような場所は選ばない。犯人がBの敷地を選んだのは,そこが自分のテリトリーであり,事後的に管理しやすく他人の掘り起こしなども防げたからである。このように考えると,犯人は,Bの従業員等の関係者で,かつ,ある程度の裁量を持った幹部クラスであると推認できる。イ 被告人は,Bで,どんな立場であったか。被告人は,Bの経営者であった。被告人は,犯行場所の管理責任者であり,その敷地内で,自由に穴を掘り,自由に重機を使用できる立場にあった。もちろん,埋めた場所をその後どう利用するかを決められる立場にあった。ウ犯行場所等から絞ることができる犯人に,被告人はきれいにあてはまる。被告人なら犯行は容易であった。埋めた土地をその後どう利用するかも決められるから,穴の掘り返しによる発覚を防ぐことも容易であった。これらは,第三者ではほとんど不可能であり,Bの従業員というだけではかなり難しい。したになる。犯行は,Bの関係者で,被告人だけが可能であったことア 犯行時間の認定8月15日午後1時半に,本件車両がBの事務所に最寄りのICを通過した。被害者らは同日午後3時に事務所に呼び出された。本件ショベルは,同日午後3時頃から午後6時15分頃まで稼働していた。これらによると,犯行は8月15日午後3時頃から午後6時15分頃までの間に行われたと推認できる。イ 犯行時間に,犯行場所の近くに,被告人がいたこと被告人の携帯電話の発信時の接続基地局は,8月15日の午後3時までの4回が犯行場所から南西に約700mの位置にあり,15時7分,18時54分,19時7分の3回が犯行場所から東に約300mの位置にあった。犯行場所から電話をして確認すると,全部が後者の基地局を経由した。そうすると,被告人は,犯行時間に,犯行場所の近くにいたから,犯行は可能であり,事務所の鍵を所持し,重機の運転も上手にできたから,犯行は容易であった。また,被害者らは,8月頃,Bの事務所に被告人を訪ね,事務所から車1台分離れた付近に車を停めた。被告人は,そのことも知っていたはずだから,同月15日も,被害者らが以前と同じような場所に車を停めることを予想し,その付近に置いた本件ショベルに乗り込んで待ち伏せた上で,到着してすぐの被害者らを車ごと攻撃することも容易であった。ウ 犯行時間に,犯行場所の近くに,Bの他の従業員がいなかったこと8月15日,Bはお盆休みで休業しており,被告人以外のBの従業員は,いずれも出勤しなかった。したがって,この従業員らに犯行はできなかった。エ犯行場所等から,犯人は,Bの従業員等の関係者で,かつ,ある程度の裁量を持った幹部クラスまで絞ることができる。その中で,犯行は,Bの関係者では,被告人だけが可能であり,かつ,容易であった。これらを一緒に考えると,被告人が犯人であることをかなりの程度まで推認させる事情になる。犯行時間,犯行場所に,被告人が被害者らを呼び出したことア 呼出し行為は,犯人がしたといえるか。被害者らは,8月15日午後3時にBの事務所に呼び出された。そして,その頃,Bの敷地内で攻撃され,穴に埋められるなどして殺害された。その経緯や,時間が近接し,場所が一致することから,呼出し行為は犯人がした可能性が高い。イ 呼出し行為は,被告人がしたといえるか。男性が被害者らを呼び出した状況が,ペン型のボイスレコーダーに録音されていた。その声を聞いた被告人の息子と,被害男性と一緒にBの事務所を訪ねたFが,いずれも男性は被告人であると証言した。これらによると,呼出し行為は被告人がしたといえる。ウ 事実が持つ推認力呼出し行為は犯人がした可能性が高く,被告人はその呼出し行為をしているから,被告人が犯人である可能性が高いが,第三者に呼出し行為を依頼された可能性がなくはないことを考えると,呼出し行為だけでは犯人とは言い切れない。しかし,呼び出した時期がお盆であり,誰もいないタイミングであったこと,被告人が1200万円を返済できると嘘を言って被害者らを呼び出したこと,被告人が従業員に廃棄物が来ると告げたこと,被告人が8月15日に被害男性に電話をかけたことなどの事実を一緒に考えると,被告人が,被害者らを殺害するために,犯行時間,犯行場所に被害者らを呼び出したと考えるのが最も自然である。したがって,これらは被告人が犯人であることを強く推認させる事情になる。犯行準備を,被告人がしたことア 被告人は,どんな行為をしたのか。被告人は,8月8日,被害者らに対し,同月15日に取引があるから1200万円を返済できると嘘を言って,同日午後3時にBの事務所に呼び出した。同月12日,Hに指示をして本件ショベルの先端をスケルトンバケットに取り替えさせ,本件ショベルをfからcに移動させた。同月13日,Gに指示をしてcに被害者らが埋められていた穴を掘らせた。その際,Gに対し,その穴に取引先が持ってくる廃棄物を埋めると説明したが,同月18日には,取引先が廃棄物を持ってこなかったと告げた。イ アの行為が,犯行準備といえるか。被告人は,被害者らをお盆に事務所に呼び出したが,確実に来てもらうために高額の金銭を返済できると嘘を言い,かたや犯行の準備をすすめたといえる。8月8日の呼出し行為は,犯行の準備そのものである。Gが掘った穴から被害者らの遺体が出てきた以上,その穴を掘った行為が犯行の準備でなかったというのは無理がある。本件ショベルのバケットの取り替えとcへの移動は犯行のわずか3日前であり,その取り替えたスケルトンバケットの爪を運転席ドア等に突き刺して使用している。したがって,アの行為は犯行の準備であったといえる。ウ被告人が犯行の準備をした以上,被告人が犯人であると考えるのが自然であになる。エ 弁護人の主張弁護人は,被告人は自分で穴を掘れるのに,人を殺す穴をわざわざ従業員に掘らせることはしないと主張する。確かに,人を殺す穴を他人に掘らせることは一般的にはしないが,状況によって異なる。被告人は,小遣い稼ぎのために,違法な廃棄物の受け入れをパトロールなどを避けて休日に繰り返しやっており,その穴をいつも従業員らに掘らせていた。そうすると,敷地に穴を掘る行為は,Bではほとんど通常の業務としてやっていたから,被告人が,今回,穴を掘らせても疑われることはないだろうと考え,従業員にいつもの仕事をさせただけである。むしろ,被告人がいつもと違って自分で穴を掘れば,かえって目立って疑われるリスクもあったといえる。弁護人は,他の場所なら目立たないのに,事務所のすぐ近くの人目につく場所に人を埋める穴は掘らないと主張する。しかし,事務所付近で車ごと攻撃し,車ごと埋めるつもりであれば,できるだけその近くに埋めた方が簡単であり,離れた場所だとそこまで運ぶ労力がかかってしまう。また,事後的にみても,事務所から目の届きやすい場所の方が,掘り返しを防ぐなどの管理をしやすいメリットが大きい。弁護人は,穴を掘る行為等は,廃棄物を埋めるためであり,Bでは通常の業務であったから(現に複数の穴から廃棄物が出ている),犯行準備とはいえないと主張する。確かに,穴を掘らせる行為等だけをみれば,通常業務の一環であるが,その前後のいきさつから考えると,今回は通常業務を装っただけである。穴から遺体が出ているのに通常業務だというのには無理があるし,通常の業務で掘った穴を,車ごと埋めるのにたまたま利用することになったというのは,都合が良過ぎる。また,被告人は,虚偽の事実を告げて被害者らを事務所に呼び出した上で,穴を掘るなどしている。しかも,被告人は,Gに廃棄物の受け入れはなかったと告げたが,これまで,穴を掘ったのに業者が廃棄物を持ち込まなかったことはなかった。廃棄物を受け入れなかったなら,すぐに穴を埋めもどす必要もない。これらのいきさつを一緒に考えると,アの行為が犯行の準備であったのは明らかである。犯行動機が,被告人にあることア 被告人は,被害者らと,どんな関係であったか。被告人は,被害男性から多額の借金をしていたが,平成12年頃には返済をやめ,被害男性もその督促をやめた。Bは,fの土地を残土処分場として利用し,その土地に業者から受け入れた廃棄物を不法に投棄していた。そのfの土地の約3割は,被害男性が実質的に所有していた。被害男性は,平成26年,土地の売却等を依頼したIから,Bがfの土地に不法投棄をしていることを聞くと,間もなく被告人に対し,fでの不法投棄を告発するなどと告げ,fの土地を三千万円で買い取るように迫った。また,被告人に対し,かつての貸金やfの土地の賃料を名目に,数千万円の返済を求め,集金にも行くようになり,6月11日には,被告人にその返済を約束させた。被告人は,同月中に被害男性に200万円を返済したが,その後,連絡をとらずにいると,被害男性は,7月15日,Fと被告人を訪ね,強く被告人に返済を迫り,同月末までに多額の金銭の返済を約束させた。被告人は,8月8日,Bの事務所で,被害男性に対し,8月15日の午後1時に取引があるから1200万円を返済する,盆休みで誰もいないので午後3時に来てほしいなどと告げた。当時cの土地の一部を太陽光発電用地として売却する計画はあったが,被告人がいう金銭が支払われる見込みはなかった。被害女性は,長年にわたり,被害男性の仕事を手伝い,同人の金銭の管理をしていた。平成26年当時,被害男性が用事があるときに,同人を車に乗せて出かけることが多く,8月8日までに何度も,被害男性と一緒にBの事務所を訪れていた。イ その関係は,殺害の動機となるか。被害男性は,被告人に多額の金銭の返済等を何度も執拗に迫った。その際にfの土地の不法投棄を告発することをちらつかせて脅した。被告人に買い取りを求めた三千万円はかなり法外な金額であり,被害男性は被告人から金銭を回収することを楽しんでいた。被告人は,6月には200万円を返済してしのいだが,その後,被害男性が満足できるような金銭を準備できず,追い込まれていった。その中で,このままではfでの不法投棄を通報されるなどしてBの事業が継続できなくなることを恐れ,被害男性の殺害を決意するに至ったと推認できる。また,被告人は,被害女性に対して直接殺害するような動機はなかったが,被害女性が被害男性といつも一緒に来て事情も知っていたから,被害男性の仲間であり,一緒に殺害するしかないと考え,殺害を決意するに至ったと推認できる。したがって,被告人には,被害者らを殺害する十分な動機があったといえる。ウ被告人は,被害者らを殺害してもおかしくない動機を持っていた。この事実は,他者が動機を持ちうる可能性を排除しないから,被告人が犯人であることを強く推認する事情とはいえない。しかし,被告人が,被害者らに対して殺害行為に及ぶだけの理由について,十分に納得できるものであるから,被告人が犯人であることを推認させる事情になる。エ 弁護人の主張弁護人は,被害男性は,莫大な債務をかかえており,被告人個人を訴えても会社の財産はとれないから,できるだけ粘り強く被告人から回収をしようとしたはずであり,そのためにはBに営業を続けてもらう必要があるから,不法投棄の告発などしないと主張する。確かに,被害男性は少しでも被告人から金銭を回収して息子らに残したかったと考えられるが,被告人の返済が満足になされなければ,それに怒り,代償として告発をすることは十分にあったといえる。告発などしないとは断言できない。弁護人は,被告人は,被害男性が告発なんてしないことは分かっていたから,返済期限をのらりくらりと引き延ばしていただけで,殺害の動機はないと主張する。しかし,被害男性が短期間のうちに何度も事務所まで押しかけたことや,実際に被告人に請求する様子からは,被害男性の要求はかなり執拗であった。被告人は,のらりくらりと返済期限を引き延ばすことが通じなくなり,現実に告発されるかもしれないという危機感を募らせたと考えられる。その結果,被告人は,事業継続できなくなることを恐れて殺害を決意したと推認できる。隠ぺい工作を,被告人がしたことア 被告人は,どんな行為をしたのか。被告人は,8月17日,本件ショベルをcからfに移動させ,同月18日以降,埋めた穴付近を整地した。同月21日以降に,取引先の残土を,fではなくcに運ばせ,埋めた穴付近に積ませた。同月23日,本件ショベルのスケルトンバケットが取り替えられた。イ アの行為が,犯行隠ぺい工作といえるか。新しい穴だとすぐに分かるので,穴があったことを分からなくなるようにした上で,その場所の掘り返しをさせないようにするために,わざわざ穴の上を整地し,残土を置いたと考えるのが自然である。しかも,その残土は鳥栖の現場に使う予定だったのに,1年以上,使わずに置いたままであり,その上には植物等も生えていた。また,犯行から2日後に本件ショベルを移動させ,スケルトンバケット自体も取り替えられており,これらは凶器をできるだけ現場から遠ざけようとしたと考えるのが自然である。したがって,アの行為は犯行の隠ぺい工作といえる。ウ被告人が犯行の隠ぺい工作をした以上,被告人が犯人であると考えるのが自然である。したがっる事情になる。総合評価以上のとおり,本件では,被告人が犯人であることを強く推認させる事情が複数そろっている。検察官が主張するとおり,これらのすべてが偶然にそろうことは考えられないから,被告人以外の者が犯人であったならば,合理的な説明ができない。したがって,本件では,被告人が本件の犯人であることが合理的な疑いを入れない程度に立証されている。(適条)罰 条 第1 いずれも刑法199条第2 刑法253条科刑上一罪の処理 第1 刑法54条1項前段,10条(犯情の重いCに対する殺人罪の刑で処断する)刑種の選択 第1 無期懲役刑を選択併合罪の処理 刑法45条前段,46条2項本文未決勾留日数の本刑算入 刑法21条(未決勾留日数中730日を上記刑に算入)訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)1 量刑の中核となる殺人について,同種事案の量刑傾向(殺人,単独犯,同種の罪の数2~4件)を確認し,その中で,被害者2名が殺害された事案に絞り,死刑又は無期懲役が求刑された事例にあたった上で,被告人に科すべき刑について検討した。2 本件では,被害者2名の尊い生命が奪われ,いずれも穴に埋められた。犯行の結果はまことに重大であり,被害者らの受けた苦しみ,無念さは計り知れない。遺族が犯人に対して厳しい刑を求めるのは当然である。このように,本件は,結果が極めて重大な事案であり,犯行態様,特に殺害の手段,方法の執拗性・残虐性,計画性の程度,犯行の動機,犯行に至る経緯の内容次第では,死刑を選択することもあり得る事案である。
事案の概要
平成30年8月6日
佐賀地方裁判所 刑事部
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[下級] [刑事] 平成29(わ)136  306Views
平成30年3月26日
佐賀地方裁判所
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[下級] [民事] 平成29(ヨ)2  389ViewsMoreinfo
玄海原発再稼働禁止仮処分申立事件
平成29(ヨ)2
本件は,債権者らが,人格権による妨害予防請求権に基づき,債務者が設置している玄海原子力発電所3号機(以下「本件3号機」という。)及び4号機(以下「本件4号機」といい,本件3号機と併せて「本件各原子炉施設」という。)の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案である。
事案の概要
平成30年3月20日
佐賀地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成29(わ)137  266Views
平成30年3月6日
佐賀地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成29(わ)134  462Views
平成29年12月1日
佐賀地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成28(わ)220  394Views
平成29年11月20日
佐賀地方裁判所
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[下級] [民事] 平成23(ヨ)21  487Views
玄海原子力発電所3号機等再稼働差止仮処分申立事件
平成29年6月13日
佐賀地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成26(わ)3  478ViewsMoreinfo
業務上過失致死
平成26(わ)3
本件キャンプへの参加児童は小学3年から6年までの児童22名であって,その遊泳能力には個人差があり,予測困難な行動に出るおそれもあった上,川遊び予定場所はj川の流れに沿った距離にして90mを超え,右に湾曲するなどしている流域であったため,川への入水場所であるスロープから川遊び予定場所の下流域を見渡すことは困難であるばかりか,水深が2mを超える場所があるなどの自然の河川であったのであるから,適切な監視態勢や溺れた場合の救助態勢が整わない状態で児童らを同所及びその付近で遊ばせるなどすれば,児童らがj川に入水し,水流に流されて深みにはまるなどして溺水する危険があった。被告人Eは,川遊び予定場所で以前に実施された同様の体験イベントにおける川遊びにスタッフとして参加した経験などから,そのように溺水する危険があることを知っていた上,本件キャンプの企画・立案段階において,同協議会事務局側担当者として,本件倶楽部の実質的な代表補佐の地位にあったB等と協議する中で,川遊びに際しては例年どおり本件キャンプに参加する成人スタッフ全員で川遊びをする児童らが溺水しないように監視することを確認した上,上司である被告人Cや被告人Dらに対し,本件キャンプは同倶楽部の主導の下で行われるものであり,川遊びについても同倶楽部の成人スタッフの指示に従って行動するものである旨を説明するなどしていた。ところが,Bは,本件キャンプ当日である同月24日,本件川遊びプログラムを開始するに際し,成人スタッフらと参加児童22名全員で前記「J」から川遊び予定場所に移動し,成人スタッフ全員で監視に当たるという予定を変更し,自らは川遊び場所には移動せず,他の成人スタッフの一部と男子児童ら17名だけを先に川遊び場所へ移動させることにしのであり,被告人Eも,被告人Dなどを通じてBがそのような変更をしたことを知ったのであるから,被告人Eは,男子児童らに付き添って川遊び予定場所に移動する成人スタッフに対し,監視,救助態勢が整うまでは児童らが前記j川に入水しないよう監視を指示するなどして児童らが溺水しないように成人スタッフによる監視態勢を整えた上で上記川遊びプログラムを開始すべき業務上の注意義務があった。それにもかかわらず,被告人Eは,これを怠り,男子児童らに付き添って川遊び予定場所に移動する成人スタッフに対して上記指示をするなどして監視態勢を整えることをしないまま,Bによる予定の変更に従い,Bから男子児童ら17名だけを先に川遊び場所へ移動させるよう指示を受けた被告人Dらに対し,その指示に従うよう指示して他の成人スタッフの一部と男子児童ら17名だけを先に川遊び場所へ移動させて本件川遊びのプログラムを開始した。この過失により,児童らの1人I(当時8歳)をj川に入水させ,同日午後3時55分頃,同河川において,同人を溺水させ,よって,同月27日午前9時38分頃,長崎県大村市 ef 丁目 g 番地 h 所在の i 病院において,同人を低酸素性脳症により死亡させたものである。(事実認定の補足説明並びに被告人C及び被告人Dの無罪の理由)1 当裁判所は,被告人Eに対する予備的訴因は認められるものの,被告人らに対する主位的訴因及び被告人C及び被告人Dに対する予備的訴因はいずれも認められず,被告人C及び被告人Dはいずれも無罪であると判断したので,その理由を説明する。2 被告人らに対する主位的訴因及び被告人C及び被告人Dに対する予備的訴因別紙のとおり3 前提事実関係各証拠によれば,本件の事実経過について,概ね次の事実が認められる。本件倶楽部は,平成6年頃,伊万里市 a 町b(以下「b」という。)地区の活性化等を目的とし,古代米「黒米」の栽培及びこれを原料とした加工品の開発促進や都市住民との交流を図るためのイベント開催等の事業を行うことを目的としてb地区に居住する住民らが構成員となって設立された団体である。本件倶楽部は,当初はz市役所とは関係なく,独自に黒米の栽培,収穫,料理等を行うイベント「農業体験スクール」などの企画運営を行っていたが,平成12年頃から,独自の企画のほかに,z市からの打診を受け,z市役所と連携して様々な企画を催行するようになった。z市は,平成16年頃から,当時のk部m課n係が所管となって,地産地消事業の一つとして,都市部の参加者を募り,z市内の農村部で地元の農産物を収穫してその料理を試食して貰うという「H2」と称する体験イベント等を各地区の受入れ団体と連携して実施することとし,本件倶楽部と一緒に行ってきた体験イベントも,その企画の一部として取り込まれることになった。本件倶楽部は,平成12年頃から,Aが代表者を務め,Bが監査役に就任していたが,Aが会社勤めのために日中に連絡を取りづらいということから,上記体験イベントの企画立案等に関するz市側の担当者との連絡や打合せは専ら,z市役所の隣にあるz市Oに勤務していたBが内線電話を使用したり,同市役所を直接訪れたりして行っていた。被告人Eはz市の職員であり,平成17年4月頃から,同市k部m課n係員として,グリーン・ツーリズム,すなわち,都市部の住民を対象とした農山漁村における自然,文化,人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動を行う事業等に関する事務を担当し,z市側の担当者として,本件倶楽部との間で,上記「H2」に関する企画立案等のやり取りや打合せを全て行っていた。z市は,平成19年度から,本件倶楽部と共同して,「H2」の夏休み特別企画として「H1キャンプ」と称する都市部の小学4年から中学3年の児童を対象にしたb地区における農家への民泊を伴う農村交流を目的とする体験イベントを開催するようになったところ,この体験イベントには,公募に応じた小学1年から中学生の児童が参加すると共に,本件倶楽部側のAやB,被告人Eも主催者側の成人スタッフとして参加して児童らを引率した。この体験イベントでは,プログラムの一つとして,伊万里市 a 町bc番地d所在の「J」(以下「J」という。)南南東約700m先のj川での参加児童らによる川遊びが行われた。この川遊び場所は,川の流れに沿って90mを超える距離があり,下流方向に向かって右に湾曲する形状になっているため,入水場所であるスロープから川遊び場所の下流域を見渡すことが困難な状態になっていた上,下流側には水の流れる岩盤がスライダー状になっている部分があり,その出口部分から流水が流れ落ちる場所の数m先には水深2mを超える場所がある流域が続いていた。この年のH1キャンプの各種プログラムは,基本的には地元団体である本件倶楽部が中心となり,z市側からスタッフとして参加した者は,本件倶楽部の成人スタッフの指示に従う形で進められた模様であり,中核プログラムの1つである川遊びについては,食事の後片付け等のため,「J」に残り,後から現場に行ったEを除き,「J」から川遊び場所へは成人スタッフと参加児童全員で移動し,本件倶楽部の会員であり,救命救急士の資格を有するPが中心となって堤防の上で全員が準備運動をした上で,監視に当たる成人スタッフを各所に配置してから児童らを入水させて行われた。なお,この川遊びの最中,z市側から参加した職員のQは,児童が溺水する危険を察し,上記スライダー状になった部分の出口付近に立ち,その下流にある深みのある流域に児童らが立ち入らないように監視していた。平成20年度も,前年に引き続き「H1キャンプ」が行われたところ,小学2年から中学生の児童約17名がこれに参加し,本件倶楽部側のAやB,z市側の被告人Eも前年同様成人スタッフとして参加し,児童らを引率した。このイベントでも,プログラムの1つとして上記 と同じ場所で,同様の方法により川遊びが行われたが,同19年度とは異なり,Qは参加しておらず,上記のように児童らの足が届かない深みのある流域も川遊びの場所となった。その場所では,児童らは遊泳したり,数mの高さがある護岸ブロックの上から川面に飛び込んだりするなどしていたが,その周辺には本件倶楽部の成人スタッフ数名が配置について,児童らの行動を監視していた。平成21年3月30日,グリーン・ツーリズムに関する事業を推進するため,z市内の各団体が個々に実施してきたグリーン・ツーリズム事業の窓口を一本化し,対外的な受入れなどの仕組みづくりの効率化を図ると共に,z市内の各団体の連携を深め,地域一体となって同事業に取り組み,その充実を図るための官民共同による団体として,F協議会(以下「本件協議会」という。)が設立され,本件倶楽部も本件協議会の会員となった。本件協議会の事務処理は,z市k部m課に置かれた事務局によって行われていたが,協議会が行うグリーンツーリズム事業の企画立案等は,協議会事務局と会員が協議して行っていた。このような中で,平成21年度も,平成19年度及び同20年度に実施された例に倣ってH1キャンプが企画され,上記同様の川遊びのプログラムも予定されていたが,天候不順により中止された。平成22年4月1日,z市の組織改編に伴い,同市k部にL課が新設されると共に,同課にF係が新設され,これに伴い,本件協議会も同課に移管されてその事務局も同課内に置かれることになった。被告人Cは,同日,同課課長に就任するのに伴い本件協議会の事務局長となり,被告人Dも,同日,同課副課長兼F1係長に就任するのに伴い本件協議会の事務局員となった。被告人Eも,同日から同課F1係員となり,本件協議会に関する事務,グリーンツーリズム体験交流の推進に関する事務等に関し主査を務めると共に,本件協議会事務局の事務局員を務めることになった。このような中で,被告人Eは,同年5月頃までに,本件倶楽部等と調整を進めながら,本件キャンプの実施を含む「H2」の平成22年度の年間計画案を作成し,同月14日,本件協議会の幹事会において,その承認を得た。その後,被告人Eは,Bとの間で,電話で本件キャンプについて打合せを行い,被告人Bの提案により,従前行っていたプログラムであるモクズガニ漁は取りやめることにしたが,川遊び(以下「本件川遊び」という。)を含む従前とほぼ同様の本件キャンプのプログラムを決定し,同年6月10日頃,これを記載したチラシを添付した「開催伺い」を起案し,被告人C及び被告人Dの決裁を受けた。なお,被告人Eは,その間の同年5月18日頃,市役所を訪れたb地区のR区長から,本件キャンプの際に行う川遊びで児童らが溺れたりする可能性があるので救助用の浮き輪を用意したらどうかという提案を受け,その後,被告人Cと協議した上でSの忘れ物の浮き輪を準備することにすると共に,被告人Cの指示により,参加児童への指示を明確に伝えるためにホイッスルを準備することとした。被告人EとAやBは,同年7月7日,b公民館において,上記R区長と共に本件キャンプについて打合せを行った。その際,被告人EからB,Aらに本件キャンプのプログラムの内容を記載した上記チラシが交付され,本件キャンプのプログラムの内容について種々話合いがなされたところ,Bの提案により,従前行っていたカブトムシ捕りをプログラムから外すことが決まり,本件川遊びに関しては,Bから事前に確認した川の水量の報告を受けて,例年どおり,被告人E,A及びBを含む成人スタッフが全員で児童らの監視に当たる計画で川遊びを実施することが確認された。本件協議会が本件キャンプに参加する児童の募集を行ったところ,被害児童を含む小学3年から6年の児童22名(うち,小学3年は6名,男子児童17名,女子児童5名)の参加が決まり,被告人EはBに対し,同年7月15日頃,電話で参加児童が22名であることを伝えた。また,同月中旬頃までに,本件キャンプに参加する本件協議会側の成人スタッフとして,被告人Eのほか,被告人C,被告人D,z市役所k部L課観光係のT及び同課F1係嘱託職員のUの参加が決まった。なお,平成19年に実施されたのH1キャンプについては,z市からは,m課課長,担当者である被告人E及び上記Qなどが,平成20年に実施されたH1キャンプについてはm課課長及び被告人Eなどしか参加していなかったが,本件キャンプに関しては,人手が足りないので参加して欲しいという被告人Eからの求めに応じて,被告人Cの参加が決まり,他の成人スタッフについては,被告人Eの手伝って欲しいとの依頼や,被告人Cの「L課ができたのでL課みんなで参加しよう」といった提案を受けて参加が決まったものである。A及びBは,平成22年7月21日,本件倶楽部の会員らを集め,会員らに対し,被告人Eから渡された本件キャンプのパンフレットを配布して各プログラムの内容を説明し,本件川遊びの時の監視員を募ったところ,P,V,W及びXの4名が参加することが決定した。このうち,PとVは過去に川遊びプログラムに参加したことがあったが,WとXは今回が初めての参加であったところ,AとBは,例年どおりの方法で児童らに川遊びをさせれば大丈夫などと考えており,上記成人スタッフらに対し「子供を監視してほしい」などと指示をしたのみであった。被告人Eは,同年7月22日頃,Bと電話で打合せを行い,本件協議会側の成人スタッフの役割分担表を作成したことなどを伝え,Bからは,本件倶楽部側から参加する成人スタッフが6,7名であることを確認した上で,Bに対し,「地元主導でお願いします。」などと伝えた。被告人E,被告人C及び被告人Dは,同年7月23日,z市k部L課において,本件キャンプに参加するT及びUと共に,本件キャンプの打合せを行った。なお,祭りに参加していた被告人Dは,10分ほど遅れて出席した。その打合せの中で,被告人Eは,同人が作成した「危険ポイントは…川遊び中,苔のついた岩を歩いているときの転倒や深いところで溺れる可能性があるので,目を離さないようにお願いします」などと注意事項が記載された役割分担表と当日のタイムスケジュールを配布すると共に,本件協議会側の成人スタッフの本件キャンプへの係り方に関しては,現地では地元の本件倶楽部の成人スタッフが主体となるのでサブ的に動いて欲しいこと,本件川遊びの際には,地元の本件倶楽部の成人スタッフが監視に就くので,その指示に従って配置に就き,地元の人と一緒に児童らを見て欲しいこと,Tには滑って下るスライダー状になった場所で監視について欲しいので水着を持ってきて貰いたいこと,川には車で全員が行くこと,深みがあって児童が溺れたりする危険があるので,児童から目を離さないようにして欲しいことなどを伝えた。本件キャンプは,本件協議会側が参加児童を引率して現地である「J」に到着するのが遅れたため,同年7月24日午前10時10分頃,予定時刻より約10分遅れで開始された。同日午後のプログラムは,午後1時30分から,班別に分かれた児童らが地元の民家を回って夕食の食材を分けてもらう「おすそ分け大作戦」,午後3時から,「J」でアイスクリームを食べる「おやつタイム」,午後3時30分からj川での本件川遊びとなっていたが,「おすそ分け大作戦」の終了が遅れ,同日午後3時を過ぎてから,「おやつタイム」となったため,川遊びを開始時刻どおりに始めるのが困難な状況になりつつあった。このような中で,Aは,本件キャンプの前日夜遅くまで夏祭りに参加し,当日も早朝から本件キャンプの準備である草刈り作業をして睡眠不足であったため,「J」の事務室で椅子に座って休んでいたところ,いつの間にか眠ってしまっていた。Bは,同日午後3時30分過ぎ頃,先にアイスクリームを食べ終わった男子児童らが次のプログラムである本件川遊びに気が向き,水着に着替えたり,走り回ってはしゃいだりし始める一方,女子児童らは,まだアイスクリームを食べており,また,「男子児童らがいるところでは着替えたくない」などと言い出したため,男子児童らから先に川遊びの場所に連れて行くこととし,Pに対し,「J」の玄関付近で被告人Dの運転する市役所の車を本件川遊びの予定場所(以下「本件川遊び場所」という。)まで案内するように指示し,これには全員が乗り切れないので先に男子児童らを連れて行き,被告人Dが車で女子児童らを迎えに戻る際に迂回路を案内することなどを指示した上,その場にいた被告人D,T及びUに対しても,先導するPの後を追って,男子児童らを先に連れて行くよう指示した。被告人Dは,これを受け,被告人Eに対し,男子児童らを先に連れて行っていいのか尋ねたところ,被告人Eは本件倶楽部の成人スタッフに確認の上,被告人Dに対し,男子児童らを先に連れて行き女子児童らを迎えに来るように言った。また,Uも,被告人Eに対し,なぜ別々に行くのかを尋ねたところ,被告人Eから,女子児童らは事情があって遅れる旨の説明を受けた。そこで,被告人DはT及びUと共に,男子児童らを被告人Dが運転する10人乗りワゴン車と,Tが運転する8人乗りワゴン車に分乗させ,Pが運転する車の後を追随して,被告人D運転のワゴン車,T運転のワゴン車の順に「J」を出発し,本件川遊び場所へ向かった。被告人Cは,その頃,「J」で休んでいたが,気が付くと被告人D運転のワゴン車とT運転のワゴン車が出発するところであったため,慌てて外に出たところ,その場には被告人EとUだけが残っており,被告人EからPが児童らの乗ったワゴン車を先導しているとの説明を受けた。被告人Cは,男子児童らだけを先に川遊びの場所に連れていくという上記やり取りを知らず,誰からも説明を受けなかったため,児童らと本件倶楽部の成人スタッフは全員,j川に向けて出発したと思い,被告人Eに準備していた浮き輪が車に積載されていることを確認し,被告人Eからホイッスルを受け取った上,待っていたUをその車に乗せ,上記2台のワゴン車の後を追ってj川へ向かった。その後,Bは,「J」にまだAがいることを確認し,さらに,本件川遊び場所にあるスライダー状の部分の出口先にある深みの手前に張ろうと考えていたロープを自宅から持ってくることを忘れていたため,これを取りに自宅に戻った。また,Vも,岩場で滑って遊ぶための肥料袋を取りに自宅に帰った。その一方で,XとWは,j川には向かわず,女子児童らと共に「J」にとどまった。被告人Dは,本件川遊び場所付近で男子児童らを車から降ろした後,「J」に残してきた女子児童5名を連れに行くため,Pの案内でワゴン車を運転してその場所を後にした。そして,上記2台のワゴン車から降りてその場に残された被害児童を含む男子児童らは,本件倶楽部側の成人スタッフも,本件協議会側の成人スタッフも誰一人として川遊びの状況を監視していない状況の下でj川に入り始めた。被告人Cは,Pや被告人Dらに若干遅れて本件川遊び場所に到着し,児童らが川に入っていくのに気付いたが,男子児童らは本件倶楽部の成人スタッフらに引率されていると思っており,自分は浮き輪を膨らませないといけないと考えていたため,自動車から浮き輪などを降ろし,入水場所であるスロープ付近で,T及びUと共に浮き輪を膨らませようとし,その途中で,児童らの声が聞こえなくなったことに気づいて,下流の方に行ってみたが,本件川遊びをする場所を確認しただけで,元の場所に戻り再び浮き輪を膨らませようとしていた。同日午後3時55分頃,被害児童が溺水した。その頃,Bはロープを準備して自宅から本件川遊び場所に向かう途中であり,被告人Eは,「J」内あるいはj川に向かう途中で,女子児童らと一緒にビデオ撮影するなどしていた。また,Aは,「J」で目を覚ました後,マイクロバスを運転して一人で本件川遊び場所へ向かったが,Aが本件川遊び場所に着いたのは,被害児童が溺水した後であった。4 主位的訴因の検討以上の事実経過を前提に,まず,主位的訴因の当否について検討する。弁護人らも種々指摘しているとおり,主位的訴因に関しては検討すべきが点が少なからず認められるところであるが,主位的訴因の核心部分である注意義務及び過失行為の内容如何について検討する。主位的訴因の掲げる注意義務は,結論的には「児童らが溺水するのを未然に防止すべき注意義務」とされている要請し,川遊びの際には児童らにライフジャケットを着用させた上,児童らの監視態勢や危険指導の方法,児童らの引率から入水させるまでの手順等の実施計画を策定し,被告人られをしない場合には川遊びをする範囲を深みのない場所に限定した上,児童らの監視態勢や危険指導の方法,児童らの引率から入水させるまでの手順等の実これもしない場合には川遊びの中止を決定・協議すべきであったこととされ,これらの手段・方法を採らずに溺水防止の注意義務に違反した過失行為として又はは「川遊びの中止について協議しなかった」こととされていると解される。そこで,以下においては,まず,⑴検察官は,本件川遊び場所は大人でも足が届かない程深い場所が広範囲にわたって存在する危険な場所であり,参加した小学校低学年の児童らが想定外の行動に出ることが間々あることは経験則上明らかであること,本件キャンプに参加した成人スタッフの過半数は初参加者であり,参加スタッフの中には川の体験活動の専門家や水難救助の専門的な知識・能力を有している者はいなかったこと,本件キャンプ開始前にライフジャケットを準備して児童らに着用させることは可能であったことなどを根拠として,被告人らは,児童らが溺水するのを未然に防止するため,児童らに着用させるライフジャケットを準備し,本件川遊びの際にはこれを児童らに着用させることとし,それができないのであれば,本件川遊びの場所を深みのない場所に限定した上で,本件川遊びの際の監視態勢,児童らに対する事前の危険指導の方法,児童らの引率から入水までの手順等を定めた実施計画を策定させ,これを成人スタッフ全員に周知させるべきであったなどと主張する。そして,これに沿う証人Y及び同Zの公判供述などがある。しかしながら,検察官の主張する過失の訴因構成に賛同することはできない。本件における過失を考えるに当たっては,被害児童死亡の時点から時間軸を遡っていき,死亡に最も近接した時点における具体的な注意義務の内実如何を検討するのが相当である。これに従って検討すると,前記認定のとおり,被告人EはB及びAと協議の上,本件川遊びを例年通りの方法で行うこととし,成人スタッフ及び児童らが全員で移動して成人スタッフ全員で川遊びをする児童の監視に当たるということを決めていたことが認められる。本件において予定されていた上記のような本件川遊びの実施計画は周到なものではなく,やや漠然としたものであったことは否めないものの,平成19年度及び同20年度に実施されたH1キャンプにおいては,いずれも川遊び場所への移動は,被告人E以外の成人スタッフ全員と参加児童全員で行い,参加児童らに準備運動をさせ,成人スタッフによる監視態勢を採った上で,児童らを入水させており,平成19年度は,川遊び場所は児童らの足が届かない深みの手前までに限定され,平成20年度は,その深みのある場所も川遊びの場所になり,そこで泳いだり,護岸ブロックの上から川面に飛び降りたりする児童もいた。その際,ライフジャケットが準備・着用されていなかったのはもとより,成人スタッフの中に水難救助の専門的な教育を受けた者はいなかったものの,成人スタッフら数名がその付近に立って,監視及び救助態勢を採っており,いずれの川遊びにおいても児童らが溺水するなどの事故は生じていない。本件川遊び場所にはスライダー状の部分の出口先に水深の深い箇所があるなど,溺水事故が発生する相応の危険性があったことは明らかであるが,そこで川遊びをすれば相当高度の確率で溺水事故が発生する程の危険性があったとはいえないと思われる。もっとも,本件キャンプに参加したのは小学3年の児童が6名,4年が6名,5年が8名,6年が2名であり,スタッフにおいて児童の体力や水泳能力等の把握もできていなかったことなどを考慮すると,本件川遊びを実施するに際しては相応の溺水事故防止策を採っておく必要があったことは多言を要しない。そこで,どの程度の溺水事故防止策を採っておく必要があったかについて検討するに,参加児童が突然予想のつかない行動に出る蓋然性があったことなどを考慮しても,その年齢などに照らし,予定していた例年どおりの監視態勢が採られ,現場に居合わせた成人スタッフから監視・救助態勢が整う前に入水しないように注意されたり,入水しようとした際に制止されたりすれば,特段の事情がない限り,その制止を振り切ってまで参加児童が入水するとは考え難い。このような事情に照らせば,被告人らが平成19年度及び同20年度と同様の監視・救助態勢を採る限り,被害児童が溺水するといった結果が生じる蓋然性は相当程度低くなっていたものと考えられる。先に認定したとおり,本件においては,例年どおりの引率手順と監視・救助態勢を採ることが予定されていた上,本件協議会側においては溺水防止のために浮き輪を準備し,これを川遊びの際に使用するものとしていたのであり,これらの措置が滞りなくなされてさえいれば,本件の結果発生は十分防ぐことができたと考えられる。本件溺水事故が発生した原因は,平成19年度及び同20年度の川遊びの際に採られていた監視態勢すら採られず,成人スタッフが児童らを引率して集団行動すべきであるのにこれを分散させた結果,監視する成人スタッフが誰1人としていない状況下で児童らに川遊びをさせたことにほぼ尽きると考えるのが相当であり,ライフジャケットの準備・着用,川遊びの場所の限定,周到な実施計画の策定・周知がなされなかったことがそもそもの原因であったとは認め難く,このような高度な結果回避義務を被告人らに負担させることは相当とはいえない。上記⑶に係る点について更に,検察官は,被告人らについて,上記のような周到な実施計画の策定,周知をしないのであれば,本件川遊びのプログラムの開始前に被告人CはAらと協議して川遊びの中止を決定すべきであり,被告人D及び被告人Eはその中止を被告人Cに進言すべきであったとも主張する。しかしながら,上記のとおり,被告人らには上記実施計画の策定・周知の義務があったとはいえず,これを前提とする中止を協議・進言・決定すべき義務が存しないのは当然である。また,本件キャンプの開始後,本件川遊びのプログラム開始までの間に,被告人らが,周到な実施計画が策定・周知されていないことが大きな問題であることに気付き,本件川遊びプログラムを中止しなければならないと判断する契機となるような事情の発生・変更も認められない。検察官の主張は採用することができない。5 予備的訴因について本件の予備的訴因は,要旨,被告人らには本件キャンプ当日,成人スタッフらと共に児童らに付き添って川遊び予定場所に入水するなどして川遊び中の児童が溺水しないように監視し,児童が溺水した場合には直ちに救助出来る態勢を採った上で川遊びをさせるプログラムを開始すべき注意義務があったにもかかわらず,その態勢を採らないまま本件川遊びをさせるプログラムを開始した過失があったとするものと解される。主位的訴因を検討した際に言及したとおり,本件川遊び場所の危険性の程度,参加した児童の年齢や行動傾向,平成19年度及び同20年度の監視・救助態勢の実情等に照らし,上記予備的訴因の掲げる注意義務の内容は基本的に妥当なものとして是認することができる。ところで,被告人らやA及びBは,平成19年度及び同20年度の川遊びにも参加したか,今回が初めての参加であるかという本件川遊び場所に関する経験値,これに伴う本件川遊びの危険性に対する認識の程度などが異なっている上,本件川遊びの企画・立案への関与にも濃淡があることに徴すると,上記内容の注意義務が被告人らやA及びBの全員に均等に課せられるかについては,なお慎重に検討する必要があると思われる。そこで,この過失を誰が課せられるかを検討する前提として,被告人ら,A及びBが本件川遊びにおける成人スタッフとして果たすことが期待されていた役割について検討する。ア 検察官は,本件キャンプは本件協議会と本件倶楽部の「共催」によるものであり,弁護人らは,本件キャンプは本件倶楽部が企画立案を行っており,本件協議会は事務的な手続に関与するものにすぎなかったと主張している。ところで,予備的訴因は,上記のとおり,本件キャンプ当日において参加児童の監視・救助態勢を採らないまま本件川遊びのプログラムを開始するという過失行為に係る注意義務が問題であるところ,本件川遊びの際の監視・救助態勢の大枠は事前に定められていたものの,成人スタッフ各人が本件川遊びの当日,現地においてどのような役割を分担して果たすべきかなどの細目的事項については定められていなかったことに徴すると,現場においてこれを適宜決定して指示・指導する者がいることが必須であり,その者の指示・指導の下で状況に即した具体的な監視・救助態勢が整えられることが予定されていたというべきである。従って,ここで問題となるのは,実質的にみて本件キャンプないし本件川遊びの当日の進行を誰が責任を持って指示・主導していくべき役割を担っていたのかということであり,これは,本件協議会と本件倶楽部との形式的な関係や,各成人スタッフの各組織における役職等の地位から離れて,実質的に定められなければならない問題である。このような視点に立って前記認定の事実経過を検討すると,本件キャンプに関する両組織の関係について以下の事実が重要であると考えられる。すなわち,①本件倶楽部は,設立当初は独自のイベントの企画運営を行っていたところ,平成12年頃,z市役所からの打診を受け,一緒にイベントを行うようになったこと,②平成16年頃から始まったイベント「H2」については,z市と各地区の受入れ団体とが連携する形で行われ,市の担当者と受入れ団体との間で協議をしながらイベント内容の企画立案を行う一方,参加者の募集や申込みの受付などの事務作業についてはz市又は本件協議会の事務局が行っていたこと,③そのイベントの一つである「H1キャンプ」についても,同様に,z市側又は本件協議会側の担当者である被告人Eと,本件倶楽部の実質的な副代表であるBとの間で打合せを重ねながら,企画立案をしてきたこと,④平成22年度の本件キャンプの企画立案についても,本件倶楽部側はBが担当し,本件協議会側は被告人Eが行ってきたが,プログラムの内容は,従前からのプログラムを基礎にBの提案に従って決まっていったこと,⑤平成19年度及び同20年度のH1キャンプは,本件倶楽部の成人スタッフが中心となって進められ,川遊びについても,本件倶楽部のPが中心となって準備運動などを行い,z市側から参加した成人スタッフは基本的にその指示に従って監視を行うなど,本件倶楽部が主体となって行っていたこと,⑥本件キャンプの2日前には,上記の様な経緯を前提に,被告人EからBに対して「地元主導でお願いします。」などと伝達がされ,本件キャンプに関しても,本件倶楽部が中心となって行っていくことが確認されたことが認められる。以上によれば,本件キャンプの企画内容は,基本的には現地の状況をよく知る本件倶楽部側の担当者であるBが提案したものを本件協議会側担当者の被告人Eが受け入れて作成されたものであり,また,本件キャンプ当日の進行についても,本件倶楽部の成人スタッフが中心となって進めていくことが予定されていたものであるから,本件キャンプの実施については,基本的にはBを中心とした本件倶楽部側の成人スタッフが主導して行うべき立場にあったものと考えられる。もっとも,本件協議会側(本件協議会設立前はz市側)においても,本件以前からH1キャンプの参加募集や申込み等の事務を担当し,その担当者であった被告人Eにおいて,Bと協議をして本件キャンプを含むキャンプの企画立案を行った上,これに2度参加して川遊びも行っていたのであるから,本件協議会が単なる参加者の募集,申込みの受付等の事務作業だけを行う立場にあったとは解されず,川遊びの危険性を含む本件キャンプの全体像を把握し,その企画内容や実施状況に問題があれば,その変更を促すべき立場にあったと考えるのが相当である。イ そして,各組織内における各成人スタッフの地位についてみると,まず,本件倶楽部内においては,その形式的な代表者はAであったものの,本件キャンプの企画立案はBが中心となって行っていたものであり,当日の進行も,基本的にはBが中心となって行われ,Aの指示で進行していた様子は窺われない。殊に,本件川遊びの開始については,BがAに一切相談することがなかったばかりか,「J」の事務室で居眠りをしていたAの所在を探そうともしておらず,B1人の判断で男子児童らのみをまず本件川遊び場所に連れていくことを決定し,他の成人スタッフにその旨の指示を出し,男子児童らの移動が始まったのであるから,Bが主導的な立場にあり,Aは,Bと並んで本件キャンプを主導すべき立場にあったとまではいえず,Bを補佐する立場にとどまっていたと考えるのが相当である。ウ これに対し,z市役所内における各成人スタッフの関係についてみると,まず,被告人Eについては,本件キャンプの企画立案に携わっただけでなく,これまでの参加経験から本件川遊びの危険性をも知っていたのであるから,本件川遊びを含む本件キャンプの全体像を把握し,その実施状況などに問題が生じた場合には,これに対処すべき本件協議会側の担当者であったと考えるのが相当である。実際にも被告人Eは,男子児童らのみを川に連れていくことになった際,確認及び指示を求めた被告人D及びUに対し,男子児童らを先に連れていくよう指示し,被告人Cに対しても本件川遊び場所への移動を指示しているのであるから,被告人Eは,Bに次いで本件キャンプを主導すべき立場にあったものと認めるのが相当である。また,被告人E以外の成人スタッフについてみると,いずれもH1キャンプには初参加であり,参加するに至った経緯も,被告人Eからの手伝いの要請を受けたり,被告人Cの提案で参加することになったにすぎない。また,本件キャンプ前日の打合せにおいて,被告人Eから,本件協議会側からの参加スタッフの本件キャンプへの係り方について,本件倶楽部が主体となるのでその成人スタッフの指示に従うように説明を受け,本件キャンプ当日も,被告人Eからの指示どおり,本件倶楽部側の成人スタッフの指示に従って行動した上,本件川遊びの開始に当たっても,Bと被告人Eの指示を受けて移動を始めたものである。このような事情に鑑みれば,被告人E以外の本件協議会側参加スタッフについては,本件キャンプを主導すべき立場にあったとはいえない。被告人Eについてア 以上を前提として,まず,被告人Eの責任について検討する。前記認定のとおり,本件キャンプの計画においては,本件川遊びを行うに当たり,成人スタッフ全員と参加児童ら全員が一緒に本件川遊び場所まで移動し,準備運動をした上で,成人スタッフによる監視態勢を整えた上で,児童らを入水させる予定となっていた(もっとも,被告人Eは別の用件に従事するため,本件川遊びには移動開始当初からではなく途中から参加する予定であった。)ところ,本件川遊びのプログラム開始の前に,アイスクリームを食べ終わった男子児童らが川遊びに気が向き,水着に着替えたり,走り回って騒いだりし始めたことなどから,BがPや被告人D,T及びUに対し,男子児童らを先に連れていくように指示をし,被告人Eにおいても,被告人Dから,男子児童らを先に連れて行っていいのか尋ねられたのに対し,男子児童らを先に連れて行き女子児童らを迎えに来るように指示し,Uから,何故別々に行くのかを尋ねられたのに対しても,女子児童らは事情があって遅れる旨の説明をして男子児童らを先に連れていくよう指示している。これらの指示により,被告人DはTと共に,男子児童らを本件川遊び場所へ連れて行き,本件川遊び場所で男子児童らを車から降ろした後,Pと共にその場を離れることになり,その場に残ったTと続いて到着した被告人C及びUについては,本件川遊び場所に移動するよう指示されただけであったため,その三者で浮き輪を膨らませる作業を始め,その結果,被害児童が,成人スタッフが誰も監視していない状況下で川に入水し,溺水するに至ったものである。以上のような経過からすれば,被害児童が溺水するに至った主要な要因は,Bが全員で移動するという当初の予定を変更して男子児童らのみを本件川遊び場所に連れていくこととした上,被告人Eにおいても,現地に残ることになるTに対し,監視態勢が整うまで男子児童らを川に入水させないように指示することも,Bに対し本件倶楽部の成人スタッフに男子児童らを監視させるように要請することもないまま,Bによる上記予定の変更を容認し,被告人Dらに対して上記移動を指示したことにあると認められる。そして,被告人Eは,前記のとおり,Bと共に本件川遊びを含む本件キャンプのプログラム全体を把握しており,Bに次いで本件キャンプを主導すべき立場にあったものである。当初の予定とは異なり,成人スタッフと児童らの全員で移動するという計画が変更され,男子児童らを先に本件川遊び場所に移動させることになり,その移動を開始する時点では,自身もBも本件川遊び場所に移動せず,被告人Dも男子児童らを川遊び場所に連れて行った後,「J」に戻るために本件川遊び場所を離れることになっており,被告人Cについてはその場におらず,Uも「J」の駐車場にいた上,本件倶楽部の他の成人スタッフであるA,X,Wについては,その所在や行動を把握していなかったのであるから,男子児童らを先に本件川遊び場所へ移動させるに当たっては,現地に向かう成人スタッフに対し,成人スタッフが揃うまで男子児童らを川に入水させないように指示しなければ本件川遊び場所において成人スタッフの監視がない状態が生じ,男子児童らが監視,救助態勢のない状態で川に入水する可能性があることは十分に予見し得たと考えられる。そして,このことは,被告人Eが供述するように,たとえPが駐車場を出発し,Vもその後から出発したのを見ていたとしても,同人らが男子児童らを監視することを被告人Eが自ら,あるいは,Bを通じて確認していない以上,自らが果たすべき役割を果たしたとはいえないというべきである。したがって,被告人Eが上記のように被告人D及びUに指示をして男子児童らのみを移動させて本件川遊びプログラムを開始するに当たっては,本件川遊び場所に残る成人スタッフに対して男子児童らが入水しないように監視しておくよう指示したり,あるいは,本件倶楽部の成人スタッフに対し,男子児童らと共に川遊び場所に移動し,その場で男子児童らが入水しないように監視しておくよう指示すべき注意義務があったというべきである。イ これに対し,被告人Eの弁護人らは,被害児童の溺水は,本件川遊び場所で男子児童らに付き添っていた成人スタッフ全員が男子児童らから目を離すという異常な行動によって発生したものであるから,被告人Eの上記行為と被害児童死亡という結果との間に刑法上の因果関係を認めることはできない旨主張する。しかしながら,前記認定のとおり,被告人Eは男子児童らを先に連れていくことを前提とする指示をしたものの,被告人Cに対しては,何らその計画の変更について伝えていない。そのため,被告人Cは,「J」から本件川遊び場所に移動するに当たり,計画が変更されて男子児童らだけを先に移動させるということは知らず,男子児童らだけでなく女子児童らを含めた児童全員が移動したものと考えており,また,「J」では被告人EとUを除き,他の成人スタッフを見ておらず,既に本件倶楽部の成人スタッフも一緒に移動したものと考えていたのであり,本件の証拠上も,本件川遊び場所において一緒に浮き輪を膨らませていたTやUから,男子児童らだけが移動したという話や,成人スタッフが現地に着いていないという話を聞いていたというような事情も窺われない。また,被告人Cは,浮き輪を膨らませている途中,児童らが気になり,本件川遊び場所を確認するために一度下流の方に状況を見に行っており,その際,児童らの状況をきちんと把握せず,元の場所に戻って再び浮き輪を膨らませる作業に入っているが,上記のとおり,被告人Cは,本件キャンプ当日は,本件倶楽部の成人スタッフの指示を受けるべき立場にあり,その成人スタッフからの指示は一切なく,むしろ,救助用に用意した浮き輪を早く膨らませないといけないと考え,それを行っていたのである。被告人Cは被告人Cなりに児童らが溺水しないようにするための準備行動をしていたとみることも可能であり,本件倶楽部の成人スタッフの指示がない状況下で率先して男子児童らを監視すべき義務があったなどということはできない。同様に,本件倶楽部の成人スタッフの指示を受ける立場にあったT及びUについても,そのスタッフからの指示は一切なく,むしろ,本件キャンプ実施において主導的立場にあるBの指示に従って本件川遊び場所に移動し,他に本件倶楽部の成人スタッフからの指示を一切受けないまま,被告人Cと共に,救助用に用意した浮き輪を膨らませていたものであるから,この両名について率先して男子児童らを監視すべき義務があったということはできない。また,VやPについては,男子児童らと行動を共にしていなかったのであるから,そもそも,男子児童らから目を離すという行動をとったものではない。結局,被告人C,T及びUの行動は,Bや被告人Eの指示によって誘発されたものにすぎず,本件の被害児童の溺水,死亡という結果はBや被告人Eの上記行為の危険性が現実化したものと認められるから,上記行為と結果との間の因果関係は否定されない。被告人Eの弁護人らの上記主張は採用することはできない。ウ また,同弁護人らは,女子児童らを監視する被告人Eに男子児童らを監視することの期待可能性はなかったと主張するが,上記のとおり,川遊び場所へ移動した成人スタッフに対して監視を指示するなどすれば足りるのであるから,期待可能性がなかったとはいえない。なお,被告人Eは,上記のとおり,z市役所の職員として,川遊びという危険性を伴う本件キャンプに継続して関わっていたものであるから,業務性が認められることは明らかである。被告人Cについて次に,被告人Cについて検討する。先に説示したとおり,被告人Cは本件川遊びを含む本件キャンプを主導すべき立場にあったとはいえず,Bや被告人Eの具体的な指示に従って児童らを監視することが期待されていたにとどまる上,事実経過に即してみても,本件キャンプ当日,B及び被告人Eが男子児童らを本件川遊び場所に向けて「J」から移動させることを決めた時点では「J」の中にいたものの,男子児童らを先に移動させると決めたBや被告人Eから何ら相談を受けることもなく,B及び被告人Eのみの判断によって本件川遊びプログラムが開始され,被告人Cが気付いた時点においては,既に男子児童らは「J」から本件川遊び場所への移動を始めていたものである。このような事実経過に鑑みれば,被告人Cが予備的訴因に掲げられた「本件川遊びプログラムを開始した」とみることはできない。従って,被告人Cの過失責任を問うことはできない。被告人Dについて更に被告人Dについて検討する。上記のとおり,被告人Dは,B及び被告人Eから,男子児童らを先に本件川遊び場所へ移動させるよう指示を受け,これに従い,本件川遊びプログラムの開始に関わったことが認められる。しかしながら,前記のとおり,被告人Dは,本件キャンプの手伝いを依頼されて本件キャンプに参加するに至ったものであり,被告人Eから,当日は本件倶楽部の成人スタッフの指示に従って行動するように指示されていたものである。そして,被告人Dは,本件川遊びプログラムの開始に当たり,本件倶楽部の成人スタッフであり,本件キャンプを主導していたBから,男子児童らを先に移動させるよう指示を受け,それが当初の予定とは異なっていたことから,Bに次いで本件キャンプの主導的な立場にあった被告人Eに改めて指示を仰いだ上で,その指示を受けて行動をしたにすぎない。このような本件キャンプにおける被告人Dの立場を前提とすれば,被告人Dには,自ら監視態勢の整備を確認したり,その確認ができない場合にはB及び被告人Eの指示を拒むなどして男子児童らの移動を取りやめさせるまでの役割が期待されていたとは認め難い。従って,被告人Dは,Bや被告人Eが男子児童らを移動させて本件川遊びが開始された際にこれに追従して本件川遊び場所まで男子児童らを搬送したにとどまるというべきであり,これをもって被告人Dに本件川遊びをさせるプログラムを開始した過失があったと考えるのは相当ではない。被告人Dについても過失責任を問うことはできない。(法令の適用)罰 条 平成25年法律第86号附則14条により同法による改正前の刑法211条1項前段刑種の選択 罰金刑を選択宣告刑の決定 罰金40万円労役場留置 刑法18条訴訟費用の負担 刑事訴訟法181条1項本文(量刑の理由)本件は8歳の児童が自然の川の深みで溺れ,その生命を失うに至ったという事案である。
事案の概要
平成29年5月29日
佐賀地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成26(わ)3  471ViewsMoreinfo
業務上過失致死
平成26(わ)3
本件キャンプへの参加児童は小学3年から6年までの児童22名であって,その遊泳能力には個人差があり,予測困難な行動に出るおそれもあった上,川遊び予定場所はj川の流れに沿った距離にして90mを超え,右に湾曲するなどしている流域であったため,川への入水場所であるスロープから川遊び予定場所の下流域を見渡すことは困難であるばかりか,水深が2mを超える場所があるなどの自然河川であったのであるから,適切な監視態勢や溺れた場合の救助態勢が整わない状態で児童らを同所及びその付近で遊ばせるなどすれば,児童らがj川に入水し,水流に流されて深みにはまるなどして溺水する危険があった。被告人Bは,川遊び予定場所で以前に実施された同様の体験イベントにおける川遊びにスタッフとして参加した経験などから,そのように溺水する危険があることを知っていた上,本件キャンプの企画・立案段階において,F協議会事務局側担当者と協議する中で,川遊びに際しては例年どおり本件キャンプに参加する成人スタッフ全員で川遊びをする児童らが溺水しないように監視することを確認し,同倶楽部に所属する人員の中から川遊びの監視要員として参加する成人スタッフを募るなどしていた。被告人Bは,本件キャンプ当日である同月24日,本件川遊びプログラムを開始するに際し,成人スタッフらと参加児童22名全員で前記「J」から川遊び予定場所に移動し,成人スタッフ全員で監視に当たるという予定を変更し,自らは川遊び場所には移動せず,他の成人スタッフの一部と男子児童ら17名だけを先に川遊び場所へ移動させることにした。そのような変更をするのであれば,男子児童らに付き添って川遊び予定場所に移動する成人スタッフに対し,監視,救助態勢が整うまでは児童らが前記j川に入水しないように監視するよう指示するなどして児童らが溺水しないように成人スタッフによる監視態勢を整えた上で上記川遊びプログラムを開始すべき業務上の注意義務があった。それにもかかわらず,被告人Bは,これを怠り,男子児童らに付き添って川遊び予定場所に移動する成人スタッフに対して上記指示をするなどして監視態勢を整えることをしないまま予定を変更し,他の成人スタッフに指示して他の成人スタッフの一部と男子児童ら17名だけを先に川遊び場所へ移動させて本件川遊びプログラムを開始した。この過失により,児童らの1人I(当時8歳)をj川に入水させ,同日午後3時55分頃,同河川において,同人を溺水させ,よって,同月27日午前9時38分頃,長崎県大村市 ef丁目 g 番地h所在の i 病院において,同人を低酸素性脳症により死亡させたものである。(事実認定の補足説明及び被告人Aの無罪の理由)1 当裁判所は,被告人Bに対する予備的訴因は認められるものの,被告人らに対する主位的訴因及び被告人Aに対する予備的訴因はいずれも認められず,被告人Aは無罪であると判断したので,その理由を説明する。2 被告人らに対する主位的訴因及び被告人Aに対する予備的訴因別紙のとおり3 前提事実関係各証拠によれば,本件の事実経過について,概ね次の事実が認められる。本件倶楽部は,平成6年頃,伊万里市 a 町b(以下「b」という。)地区の活性化等を目的とし,古代米「黒米」の栽培及びこれを原料とした加工品の開発促進や都市住民との交流を図るためのイベント開催等の事業を行うことを目的としてb地区に居住する住民らが構成員となって設立された団体である。本件倶楽部は,当初はz市役所とは関係なく,独自に黒米の栽培,収穫,料理等を行うイベント「農業体験スクール」などの企画運営を行っていたが,平成12年頃から,独自の企画のほかに,z市からの打診を受け,z市役所と連携して様々な企画を催行するようになった。z市は,平成16年頃から,当時のk部m課n係が所管となって,地産地消事業の一つとして,都市部の参加者を募り,z市内の農村部で地元の農産物を収穫してその料理を試食して貰うという「H2」と称する体験イベント等を各地区の受入れ団体と連携して実施することとし,本件倶楽部と一緒に行ってきた体験イベントも,その企画の一部として取り込まれることになった。本件倶楽部は,平成12年頃から,被告人Aが代表者,被告人Bが監査役に就任していたが,被告人Aが会社勤めのために日中連絡を取りづらいということから,上記体験イベントの企画立案等に関するz市側の担当者との連絡や打合せは専らz市役所の隣にあるz市Oに勤務していた被告人Bが内線電話を使用したり,同市役所を直接訪れたりして行っていた。Eはz市職員であり,平成17年4月頃から,同市k部m課n係員として,グリーン・ツーリズム,すなわち,都市部の住民を対象とした農山漁村における自然,文化,人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動を行う事業等に関する事務を担当し,z市側の担当者として,本件倶楽部との間で,上記「H2」に関する企画立案等のやり取りや打合せを全て行っていた。z市は,平成19年度から,本件倶楽部と共同して,「H2」の夏休み特別企画として「H1キャンプ」と称する都市部の小学4年から中学3年の児童を対象にしたb地区における農家への民泊を伴う農村交流を目的とする体験イベントを開催するようになったところ,この体験イベントには,公募に応じた小学1年から中学生の児童が参加すると共に本件倶楽部側の被告人Aや被告人B,z市側のEも主催者側の成人スタッフとして参加して児童らを引率した。この体験イベントでは,プログラムの一つとして,伊万里市 a 町bc番地d所在のJ(以下「J」という。)南南東約700m先のj川での参加児童らによる川遊びが行われた。この川遊び場所は,川の流れに沿って90mを超える距離があり,下流方向に向かって右に湾曲する形状になっているため,入水場所であるスロープから川遊び場所の下流域を見渡すことが困難な状態になっていた上,下流側には水の流れる岩盤がスライダー状になっている部分があり,その出口部分から流水が流れ落ちる場所の数m先には水深2mを超える場所がある流域が続いていた。この年のH1キャンプの各種プログラムは,基本的には地元団体である本件倶楽部が中心となり,z市側からスタッフとして参加した者は本件倶楽部の成人スタッフの指示に従う形で進められた模様であり,中核プログラムの1つである川遊びについては,食事の後片付け等のため,「J」に残り,後から現場に行ったEを除き,「J」から川遊び場所へは成人スタッフと参加児童全員で移動し,本件倶楽部の会員であり,救命救急士の資格を有するPが中心となって堤防の上で全員が準備運動をした上で,監視に当たる成人スタッフを各所に配置してから児童らを入水させて行われた。なお,この川遊びの最中,z市側から参加した職員のQは,児童が溺水する危険を察し,上記スライダー状になった部分の出口付近に立ち,その下流にある深みのある流域に児童らが立ち入らないように監視していた。平成20年度も前年に引き続き「H1キャンプ」が行われたところ,小学2年から中学生の児童約17名がこれに参加し,本件倶楽部側の被告人Aや被告人B,z市側のEも前年同様成人スタッフとして参加し,児童らを引率した。このイベントでも,プログラムの1つとして上記 と同じ場所で,同様の方法により川遊びが行われたが,同19年度とは異なり,Qは参加しておらず,上記のように児童らの足が届かない深みのある流域も川遊びの場所となった。その場所では,児童らは遊泳したり,数mの高さがある護岸ブロックの上から川面に飛び込んだりするなどしていたが,その周辺には本件倶楽部の成人スタッフ数名が配置について児童らの行動を監視していた。平成21年3月30日,グリーンツーリズムに関する事業を推進するため,z市内の各団体が個々に実施してきたグリーンツーリズム事業の窓口を一本化し,対外的な受入れなどの仕組みづくりの効率化を図ると共に,z市内の各団体の連携を深め,地域一体となって同事業に取り組み,その充実を図るための官民共同による団体として,F協議会(以下「本件協議会」という。)が設立され,本件倶楽部も本件協議会の会員となった。本件協議会の事務処理は,z市k部m課に置かれた事務局によって行われていたが,協議会が行うグリーンツーリズム事業の企画立案等は協議会事務局と会員が協議して行っていた。このような中で,平成21年度も,平成19年度及び同20年度に実施された例に倣ってH1キャンプが企画され,上記同様の川遊びのプログラムも予定されていたが,天候不順により中止された。平成22年4月1日,z市の組織改編に伴い,同市k部にl課が新設されると共に,同課にzF1係が新設され,これに伴い,本件協議会も同課に移管されてその事務局も同課内に置かれることになった。Cは,同日,同課課長に就任するのに伴い本件協議会の事務局長となり,Dも,同日,同課副課長兼F1係長に就任するのに伴い本件協議会の事務局員となった。Eも,同日から同課F1係員となり,本件協議会に関する事務,グリーンツーリズム体験交流の推進に関する事務等に関し主査を務めると共に本件協議会事務局の事務局員を務めることになった。このような中で,Eは,同年5月頃までに,本件倶楽部等と調整を進めながら,本件キャンプの実施を含む「H2」の平成22年度年間計画案を作成し,同月14日,本件協議会の幹事会においてその承認を得た。その後,Eは,被告人Bとの間で,電話で本件キャンプのプログラムの内容について打合せを行い,被告人Bの提案により,従前行っていたプログラムであるモクズガニ漁は取りやめることにしたが,川遊び(以下「本件川遊び」という。)を含む従前とほぼ同様の本件キャンプのプログラムを決定し,同年6月10日頃,これを記載したチラシを添付した「開催伺い」を起案し,C及びDの決裁を受けた。なお,Eは,その間の同年5月18日頃,市役所を訪れたb地区のR区長から,本件キャンプの際に行う川遊びで児童らが溺れたりする可能性があるので救助用の浮き輪を用意したらどうかという提案を受け,その後,Cと協議した上でSの忘れ物の浮き輪を準備することにすると共に,Cの指示により,参加児童への指示を明確に伝えるためにホイッスルを準備することとした。Eと被告人Aや被告人Bは,同年7月7日,b公民館において,上記R区長と共に本件キャンプについて打合せを行った。その際,Eから被告人Bや被告人Aらに本件キャンプのプログラムの内容を記載した上記チラシが交付され,本件キャンプのプログラムの内容について種々話合いがなされたところ,被告人Bの提案により,従前行っていたカブトムシ捕りをプログラムから外すことが決まり,本件川遊びに関しては,被告人Bから事前に確認した川の水量の報告を受けて,例年どおり,被告人両名を含む成人スタッフが全員で児童らの監視に当たる計画で川遊びを実施することが確認された。本件協議会が本件キャンプに参加する児童の募集を行ったところ,被害児童を含む小学3年から6年の児童22名(うち,小学3年は6名,男子児童17名,女子児童5名)の参加が決まり,Eは被告人Bに対し,同年7月15日頃,電話で参加児童が22名であることを伝えた。また,同月中旬頃までに,本件キャンプに参加する本件協議会側の成人スタッフとして,Eのほか,C,D,z市役所k部l課観光係のT及び同課F1係嘱託職員のUの参加が決まった。なお,平成19年に実施されたH1キャンプについては,z市からは,m課課長,担当者であるE及び上記Qなどが,平成20年に実施されたH1キャンプについてはm課課長及びEなどしか参加していなかったが,本件キャンプに関しては,人手が足りないので参加して欲しいというEの求めに応じてCの参加が決まり,他の成人スタッフについては,Eの手伝って欲しいとの依頼や,Cの「l課ができたのでl課みんなで参加しよう」といった提案を受けて参加が決まったものである。被告人A及び被告人Bは,平成22年7月21日,本件倶楽部の会員らを集め,会員らに対し,Eから渡された本件キャンプのパンフレットを配布して各プログラムの内容を説明し,本件川遊びの時の監視員を募ったところ,P,V,W及びXの4名が参加することが決定した。このうち,PとVは過去に川遊びプログラムに参加したことがあったが,WとXは今回が初めての参加であったところ,被告人Aと被告人Bは,例年どおりの方法で児童らに川遊びをさせれば大丈夫などと考えており,上記成人スタッフらに対し「子供を監視してほしい」などと指示をしたのみであった。Eは,同年7月22日頃,被告人Bと電話で打合せを行い,本件協議会側の成人スタッフの役割分担表を作成したことなどを伝え,被告人Bからは本件倶楽部側から参加する成人スタッフが6,7名であることを確認した上で,被告人Bに対し,「地元主導でお願いします。」などと伝えた。E,C及びDは,同年7月23日,z市k部l課において,本件キャンプに参加するT及びUと共に,本件キャンプの打合せを行った。なお,祭りに参加していたDは,10分ほど遅れて出席した。その打合せの中で,Eは,同人が作成した「危険ポイントは…川遊び中,苔のついた岩を歩いているときの転倒や深いところで溺れる可能性があるので目を離さないようにお願いします」などと注意事項が記載された役割分担表と当日のタイムスケジュールを配布すると共に,本件協議会側の成人スタッフの本件キャンプへの係り方に関しては,現地では地元の本件倶楽部の成人スタッフが主体となるのでサブ的に動いて欲しいこと,本件川遊びの際には,地元の本件倶楽部の成人スタッフが監視に就くので,その指示に従って配置に就き,地元の人と一緒に児童らを見て欲しいこと,Tには滑って下るスライダー状になった場所で監視について欲しいので水着を持ってきて貰いたいこと,川には車で全員が行くこと,深みがあって児童が溺れたりする危険があるので,児童から目を離さないようにして欲しいことなどを伝えた。本件キャンプは,本件協議会側が参加児童を引率して現地である「J」に到着するのが遅れたため,同年7月24日午前10時10分頃,予定時刻より約10分遅れで開始された。同日午後のプログラムは,午後1時30分から,班別に分かれた児童らが地元の民家を回って夕食の食材を分けてもらう「おすそ分け大作戦」,午後3時から,「J」でアイスクリームを食べる「おやつタイム」,午後3時30分からj川での本件川遊びとなっていたが,「おすそ分け大作戦」の終了が遅れ,同日午後3時を過ぎてから,「おやつタイム」となったため,川遊びを開始時刻どおりに始めるのが困難な状況になりつつあった。このような中で,被告人Aは,本件キャンプの前日夜遅くまで夏祭りに参加し,当日も早朝から本件キャンプの準備である草刈り作業をして睡眠不足であったため,「J」の事務室で椅子に座って休んでいたところ,いつの間にか眠ってしまっていた。被告人Bは,同日午後3時30分過ぎ頃,先にアイスクリームを食べ終わった男子児童らが次のプログラムである本件川遊びに気が向き,水着に着替えたり,走り回ってはしゃいだりし始める一方,女子児童らはまだアイスクリームを食べており,また,「男子児童らがいるところでは着替えたくない」などと言い出したため,男子児童らから先に川遊びの場所に連れて行くこととし,Pに対し,「J」の玄関付近でDの運転する市役所の車を本件川遊びの予定場所(以下「本件川遊び場所」という。)まで案内するように指示し,これには全員が乗り切れないので先に男子児童らを連れて行き,Dが車で女子児童らを迎えに戻る際に迂回路を案内することなどを指示した上,その場にいたD,T及びUに対しても,先導するPの後を追って,男子児童らを先に連れて行くよう指示した。Dは,これを受け,Eに対し,男子児童らを先に連れて行っていいのか尋ねたところ,Eは本件倶楽部の成人スタッフに確認の上,Dに対し,男子児童らを先に連れて行き女子児童らを迎えに来るように言った。また,Uも,Eに対し,なぜ別々に行くのかを尋ねたところ,Eから,女子児童らは事情があって遅れる旨の説明を受けた。そこで,DはT及びUと共に,男子児童らをDが運転する10人乗りワゴン車と,Tが運転する8人乗りワゴン車に分乗させ,Pが運転する車の後を追随して,D運転のワゴン車,T運転のワゴン車の順に「J」を出発し,本件川遊び場所へ向かった。Cは,その頃,「J」で休んでいたが,気が付くとD運転のワゴン車とT運転のワゴン車が出発するところであったため,慌てて外に出たところ,その場にはEとUだけが残っており,EからPが児童らの乗ったワゴン車を先導しているとの説明を受けた。Cは,男子児童らだけを先に本件川遊び場所に連れていくという上記やり取りを知らず,誰からも説明を受けなかったため,児童らと本件倶楽部の成人スタッフは全員,j川に向けて出発したと思い,Eに準備していた浮き輪が車に積載されていることを確認し,Eからホイッスルを受け取った上,待っていたUをその車に乗せ,上記2台のワゴン車の後を追ってj川へ向かった。その後,被告人Bは,「J」にまだ被告人Aがいることを確認し,さらに,本件川遊び場所にあるスライダー状の部分の出口先にある深みの手前に張ろうと考えていたロープを自宅から持ってくることを忘れていたため,これを取りに自宅に戻った。また,Vも,岩場で滑って遊ぶための肥料袋を取りに自宅に帰った。その一方で,XとWは,j川には向かわず,女子児童らと共に「J」にとどまっていた。Dは,本件川遊び場所付近で男子児童らを車から降ろした後,「J」に残してきた女子児童5名を連れに行くため,Pの案内でワゴン車を運転してその場所を後にした。そして,上記2台のワゴン車から降りてその場に残された被害児童を含む男子児童らは,本件倶楽部側の成人スタッフも,本件協議会側の成人スタッフも誰一人として川遊びの状況を監視していない状況の下でj川に入り始めた。Cは,PやDらに若干遅れて本件川遊び場所に到着し,児童らが川に入っていくのに気付いたが,男子児童らは本件倶楽部の成人スタッフらに引率されていると思っており,自分は浮き輪を膨らませないといけないと考えていたため,自動車から浮き輪などを降ろし,入水場所であるスロープ付近でT及びUと共に浮き輪を膨らませようとし,その途中で児童らの声が聞こえなくなったことに気づいて下流の方に行ってみたが,本件川遊びをする場所を確認しただけで,元の場所に戻り再び浮き輪を膨らませようとしていた。同日午後3時55分頃,被害児童が溺水した。その頃,被告人Bはロープを準備して自宅から本件川遊び場所に向かう途中であり,Eは「J」内あるいはj川に向かう途中で,女子児童らと一緒にビデオ撮影するなどしていた。また,被告人Aは,「J」で目を覚ました後,マイクロバスを運転して一人で本件川遊び場所へ向かったが,被告人Aが本件川遊び場所に着いたのは,被害児童が溺水した後であった。4 主位的訴因の検討以上の事実経過を前提に,まず,主位的訴因の当否について検討する。弁護人らも種々指摘しているとおり,主位的訴因に関しては検討すべきが点が少なからず認められるところであるが,主位的訴因の核心部分である注意義務及び過失行為の内容如何について検討する。主位的訴因の掲げる注意義務は,結論的には「児童らが溺水するのを未然に防止すべき注意義務」とされているところ,溺水防止の手段・方法としては,大要, ライフジャケットの準備を要請し,川遊びの際には児童らにライフジャケットを着用させた上,児童らの監視態勢や危険指導の方法,児童らの引率から入水させるまでの手順等の実施計画を策定し,被告人らを含む成人スタッフに周知すべきであったこと, これをしない場合には川遊びをする範囲を深みのない場所に限定した上,児童らの監視態勢や危険指導の方法,児童らの引率から入水させるまでの手順等の実施計画を策定し,被告人らを含む成人スタッフに周知すべきであったこと,これもしない場合には川遊びの中止を決定・協議すべきであったこととされ,これらの手段・方法を採らずに溺水防止の注意義務に違反した過失行為としてもの 又はものとしては「川遊びの中止について協議しなかった」こととされていると解される。そこで,以下においては,まず,に係る点を検討し,その後, に係る点を検討する。⑴ 点について検察官は,本件川遊び場所は大人でも足が届かない程深い場所が広範囲にわたって存在する危険な場所であり,参加した小学校低学年の児童らが想定外の行動に出ることが間々あることは経験則上明らかであること,本件キャンプに参加した成人スタッフの過半数は初参加者であり,参加スタッフの中には川の体験活動の専門家や水難救助の専門的な知識・能力を有している者はいなかったこと,本件キャンプ開始前にライフジャケットを準備して児童らに着用させることは可能であったことなどを根拠として,被告人らは,児童らが溺水するのを未然に防止するため,Eに児童らに着用させるライフジャケットを準備させ,本件川遊びの際にはこれを児童らに着用させることとし,それができないのであれば,本件川遊びの場所を深みのない場所に限定した上で,本件川遊びの際の監視態勢,児童らに対する事前の危険指導の方法,児童らの引率から入水までの手順等を定めた実施計画を策定し,これを成人スタッフ全員に周知すべきであったなどと主張する。そして,これに沿う証人Y及び同Zの公判供述などがある。しかしながら,検察官の主張する過失の訴因構成に賛同することはできない。本件における過失を考えるに当たっては,被害児童死亡の時点から時間軸を遡っていき,死亡に最も近接した時点における具体的な注意義務の内実如何を検討するのが相当である。これに従って検討すると,前記認定のとおり,被告人B及び被告人Aは,Eと協議の上,本件川遊びを例年通りの方法で行うこととし,成人スタッフ及び児童らが全員で移動して成人スタッフ全員で川遊びをする児童の監視に当たるということを決めていたことが認められる。本件において予定されていた上記のような本件川遊びの実施計画は周到なものではなく,やや漠然としたものであったことは否めないものの,平成19年度及び同20年度に実施されたH1キャンプにおいては,いずれも川遊び場所への移動はE以外の成人スタッフ全員と参加児童全員で行い,参加児童らに準備運動をさせ,成人スタッフによる監視態勢を採った上で,児童らを入水させており,平成19年度は,川遊びの場所は児童らの足が届かない深みの手前までに限定され,平成20年度は,その深みのある場所も川遊びの場所になり,そこで泳いだり,護岸ブロックの上から川面に飛び降りたりする児童もいた。その際,ライフジャケットが準備・着用されていなかったのはもとより,成人スタッフの中に水難救助の専門的な教育を受けた者はいなかったものの,成人スタッフら数名がその付近に立って監視及び救助態勢を採っており,いずれの川遊びにおいても児童らが溺水するなどの事故は生じていない。本件川遊び場所にはスライダー状の部分の出口先に水深の深い箇所があるなど,溺水事故が発生する相応の危険性があったことは明らかであるが,そこで川遊びをすれば相当高度の確率で溺水事故が発生する程の危険性があったとはいえないと思われる。もっとも,本件キャンプに参加したのは小学3年の児童が6名,4年が6名,5年が8名,6年が2名であり,スタッフにおいて児童の体力や水泳能力等の把握もできていなかったことなどを考慮すると,本件川遊びを実施するに際しては相応の溺水事故防止策を採っておく必要があったことは多言を要しない。そこで,どの程度の溺水事故防止策を採っておく必要があったかについて検討するに,参加児童が突然予想のつかない行動に出る蓋然性があったことなどを考慮しても,その年齢などに照らし,予定していた例年どおりの監視態勢が採られ,現場に居合わせた成人スタッフから監視・救助態勢が整う前に入水しないように注意されたり,入水しようとした際に制止されたりすれば,特段の事情がない限り,その注意や制止を振り切ってまで参加児童が入水するとは考え難い。このような事情に照らせば,被告人らが平成19年度及び同20年度と同様の監視・救助態勢を採る限り,被害児童が溺水するといった結果が生じる蓋然性は相当程度低くなっていたと考えられる。先に認定したとおり,本件においては,例年どおりの引率手順と監視・救助態勢を採ることが予定されていた上,本件協議会側においては溺水防止のために浮き輪を準備し,これを川遊びの際に使用するものとしていたのであり,これらの措置が滞りなくなされてさえいれば,本件の結果発生は十分防ぐことができたと考えられる。本件溺水事故が発生した原因は,平成19年度及び同20年度の川遊びの際に採られていた監視態勢すら採られず,成人スタッフが児童らを引率して集団行動すべきであるのにこれを分散させた結果,監視する成人スタッフが誰1人としていない状況下で児童らに川遊びをさせたことにほぼ尽きると考えるのが相当であり,ライフジャケットの準備・着用,川遊びの場所の限定,周到な実施計画の策定・周知がなされなかったことがそもそもの原因であったとは認め難く,このような高度な結果回避義務を被告人両名に負担させることは相当とはいえない。上記⑶に係る点について更に,検察官は,被告人らについて,上記のような周到な実施計画の策定・周知をしないのであれば,本件川遊びのプログラムの開始前に川遊び自体を中止することを協議すべきであったとも主張する。しかしながら,上記のとおり,被告人らには上記実施計画の策定・周知義務があったとはいえないから,本件川遊びを中止すべき義務があったとはいえず,これを前提とする協議すべき義務が存しないのは当然である。また,本件キャンプの開始後,本件川遊びのプログラム開始までの間に,被告人両名が,周到な実施計画が策定・周知されていないことが大きな問題であることに気付き,本件川遊びプログラムを中止しなければならないと判断する契機となるような事情の発生・変更も認められない。検察官の主張は採用することができない。5 予備的訴因について本件の予備的訴因は,要旨,被告人らには本件キャンプ当日,成人スタッフらと共に児童らに付き添って川遊び予定場所に入水するなどして川遊び中の児童が溺水しないように監視し,児童が溺水した場合には直ちに救助出来る態勢を採った上で川遊びをさせるプログラムを開始すべき注意義務があったにもかかわらず,その態勢を採らないまま本件川遊びをさせるプログラムを開始した過失があったとするものと解される。主位的訴因を検討した際に言及したとおり,本件川遊び場所の危険性の程度,参加した児童の年齢や行動傾向,平成19年度及び同20年度の監視・救助態勢の実情等に照らし,上記予備的訴因の掲げる注意義務の内容は基本的に妥当なものとして是認することができる。ところで,被告人らやC,D及びEは,平成19年度及び同20年度の川遊びにも参加したか,今回が初めての参加であるかという本件川遊び場所に関する経験値,これに伴う本件川遊びの危険性に対する認識の程度などが異なっている上,本件川遊びの企画・立案への関与にも濃淡があることに徴すると,上記内容の注意義務が被告人らやC,D及びE全員に均等に課せられるかについては,なお慎重に検討する必要があると思われる。そこで,この過失を誰が課せられるかを検討する前提として,被告人両名,C,D及びEが本件川遊びにおける成人スタッフとして果たすことが期待されていた役割について検討する。ア 検察官は,本件キャンプは本件協議会と本件倶楽部の「共催」によるものであり,被告人Aは本件倶楽部の代表者,被告人Bは実質的に代表を補佐する立場にあった旨主張し,弁護人らは,本件キャンプは本件協議会の主催によるものであって,本件倶楽部との共催ではなく,本件倶楽部は本件協議会の主導の下で行動すべき立場にあった旨主張している。ところで,予備的訴因は,上記のとおり,本件キャンプ当日において参加児童の監視・救助態勢を採らないまま本件川遊びのプログラムを開始するという過失行為に係る注意義務が問題であるところ,本件川遊びの際の監視・救助態勢の大枠は事前に定められていたものの,成人スタッフ各人が本件川遊びの当日,現地においてどのような役割を分担して果たすべきかなどの細目的事項については定められていなかったことに徴すると,現場においてこれを適宜決定して指示・指導する者がいることが必須であり,その者の指示・指導の下で状況に即した具体的な監視・救助態勢が整えられることが予定されていたというべきである。従って,ここで問題となるのは,実質的にみて本件キャンプないし本件川遊びの当日の進行を誰が責任を持って指示・主導していくべき役割を担っていたのかということであり,これは,本件協議会と本件倶楽部との形式的な関係や,各成人スタッフの各組織における役職等の地位から離れて,実質的に定められなければならない問題である。このような視点に立って前記認定の事実経過を検討すると,本件キャンプに関する両組織の関係について以下の事実が重要であると考えられる。すなわち,①本件倶楽部は,設立当初は独自のイベントの企画運営を行っていたところ,平成12年頃,z市役所からの打診を受け,一緒にイベントを行うようになったこと,②平成16年頃から始まったイベント「H2」については,z市と各地区の受入れ団体とが連携する形で行われ,市の担当者と受入れ団体との間で協議をしながらイベント内容の企画立案を行う一方,参加者の募集や申込みの受付などの事務作業についてはz市又は本件協議会の事務局が行っていたこと,③そのイベントの一つである「H1キャンプ」についても,同様に,z市側又は本件協議会側の担当者であるEと,本件倶楽部の実質的な副代表である被告人Bとの間で打合せを重ねながら企画立案をしてきたこと,④平成22年度の本件キャンプの企画立案についても,本件倶楽部側は被告人Bが担当し,本件協議会側はEが行ってきたが,プログラムの内容は従前からのプログラムを基礎に被告人Bの提案に従って決まっていったこと,⑤平成19年度及び同20年度のH1キャンプは,本件倶楽部の成人スタッフが中心となって進められ,川遊びについても,本件倶楽部のPが中心となって準備運動などを行い,z市側から参加した成人スタッフは基本的にその指示に従って監視を行うなど,本件倶楽部が主体となって行っていたこと, 本件キャンプの2日前には,上記のような経緯を前提に,Eから被告人Bに対して「地元主導でお願いします」などと伝達がされ,本件キャンプに関しても,本件倶楽部が中心となって行っていくことが確認されたことが認められる。以上によれば,本件キャンプの企画内容は,基本的には現地の状況をよく知る本件倶楽部側の担当者である被告人Bが提案したものを本件協議会側担当者のEが受け入れて作成されたものであり,また,本件キャンプ当日の進行についても,本件倶楽部の成人スタッフが中心となって進めていくことが予定されていたものであるから,本件キャンプの実施については,基本的には被告人Bを中心とした本件倶楽部側の成人スタッフが主導して行うべき立場にあったものと考えられる。もっとも,本件協議会側(本件協議会設立前はz市側)においても,本件以前からH1キャンプの参加募集や申込み等の事務を担当し,その担当者であったEにおいて,被告人Bと協議をして本件キャンプを含むキャンプの企画立案を行った上,これに2度参加して川遊びも行っていたのであるから,本件協議会が単なる参加者の募集,申込みの受付等の事務作業だけを行う立場にあったとは解されず,本件川遊びの危険性を含む本件キャンプの全体像を把握し,その企画内容や実施状況に問題があれば,その変更を促すべき立場にあったと考えるのが相当である。イ そして,各組織内における各成人スタッフの地位についてみると,まず,本件倶楽部内においては,その形式的な代表者は被告人Aであったものの,本件キャンプの企画立案は被告人Bが中心となって行っていたものであり,当日の進行も,基本的には被告人Bが中心となって行われ,被告人Aの指示で進行していた様子は窺われない。殊に本件川遊びの開始については,被告人Bが被告人Aに一切相談することがなかったばかりか,「J」の事務室で居眠りをしていた被告人Aの所在を探そうともしておらず,被告人B1人の判断で男子児童らのみをまず本件川遊び場所に連れていくことを決定し,他の成人スタッフにその旨の指示を出し,男子児童らの移動が始まったのであるから,被告人Bが主導的な立場にあり,被告人Aは被告人Bと並んで本件キャンプを主導すべき立場にあったとまではいえず,被告人Bを補佐する立場にとどまっていたと考えるのが相当である。ウ これに対し,z市役所内における各成人スタッフの関係についてみると,まず,Eについては,本件キャンプの企画立案に携わっただけでなく,これまでの参加経験から本件川遊びの危険性をも知っていたのであるから,本件川遊びを含む本件キャンプの全体像を把握し,その実施状況などに問題が生じた場合には,これに対処すべき本件協議会側の担当者であったと考えるのが相当である。実際にもEは,男子児童らのみを川に連れていくことになった際,確認及び指示を求めたD及びUに対し,男子児童らを先に連れていくよう指示し,Cに対しても本件川遊び場所への移動を指示しているのであるから,Eは,被告人Bに次いで本件キャンプを主導すべき立場にあったと認めるのが相当である。また,E以外の成人スタッフについてみると,いずれもH1キャンプには初参加であり,参加するに至った経緯も,Eからの手伝いの要請を受けたり,Cの提案で参加することになったにすぎない。また,本件キャンプ前日の打合せにおいて,Eから,本件協議会側からの参加スタッフの本件キャンプへの係り方について,本件倶楽部が主体となるのでその成人スタッフの指示に従うように説明を受け,本件キャンプ当日も,Eからの説明どおり,本件倶楽部側の成人スタッフの指示に従って行動した上,本件川遊びプログラムの開始に当たっても,被告人BとEの指示を受けて移動を始めたものである。このような事情に鑑みれば,E以外の本件協議会側の参加スタッフは本件キャンプを主導すべき立場にあったとはいえない。6 被告人Bについて⑴ 以上を前提として,まず,被告人Bの責任について検討する。前記認定のとおり,本件キャンプの計画においては,本件川遊びを行うに当たり,成人スタッフ全員と参加児童ら全員が一緒に本件川遊び場所まで移動し,準備運動をして,成人スタッフによる監視態勢を整えた上で,児童らを入水させる予定となっていた(もっとも,Eは別の用件に従事するため,本件川遊びには移動開始当初からではなく途中から参加する予定であった。)ところ,本件川遊びプログラム開始の前に,アイスクリームを食べ終わった男子児童らが川遊びに気が向き,水着に着替えたり,走り回って騒いだりし始めたことなどから,被告人BがPやD,T及びUに対し,男子児童らを先に連れていくように指示をしたが,その際,女子児童らを迎えに戻るDとその先導を依頼したP以外の現場に残る成人スタッフに対し,自分や他の成人スタッフが揃うまで,本件川遊び場所で男子児童らを待機させておくように指示することなく,男子児童らを本件川遊び場所へ連れていくように指示した上,自らは川遊び場所へ向かわずに自宅に川遊び場所の範囲を限定・明示するために使うロープを取りに帰っている。その結果,Dは,Eからも承諾を得た上で,Tと共に男子児童らを2台のワゴン車に乗せ,児童らを本件川遊び場所に連れて行き,到着して男子児童らを車から降ろした後は,Pと共にそれぞれ車に乗ってその場を離れることになり,その場に残ったTと続いて到着したC及びUは,本件川遊び場所に移動するように指示されただけで,本件倶楽部のスタッフらが既に本件川遊び場所にいるものと思い込み,その三者で浮き輪を膨らませ始めるなどし,これらの結果,被害児童は成人スタッフが誰も見ていない状況下で川に入水し,被害児童が溺水するに至ったものである。以上のような事実経過からすれば,被害児童が溺水するに至った主要な要因は,被告人Bが全員で移動するという当初の予定を変更して男子児童らのみを本件川遊び場所に連れていくこととし,成人スタッフが全員揃わない状況でDやTのみに指示して男子児童らを本件川遊び場所へ連れて行かせたことにあると認められる。そして,本件予備的訴因の掲記する被告人Bの業務上の注意義務の内容は「成人スタッフらと共に児童らに付き添って川遊び予定場所に入水するなどして川遊び中の児童らが溺水しないように監視し,児童らが溺水するなどした場合には直ちに救助できる態勢を採り,児童らの溺水を防止すべき」ものとされているところ,被告人Bは,先に説示したとおり本件キャンプ全体やそのプログラムの1つである本件川遊びを主導すべき立場,すなわち,自らが川遊びをする児童が溺水しないように監視し,溺水した場合には救助に当たるだけではなく,児童らの溺水を防止するための監視・救助態勢を採るように他の成人スタッフに指示すべき立場にあったものである。それにもかかわらず,被告人Bは,男子児童らを本件川遊び場所に出発させた時点において,自分は本件川遊び場所へ直ちには行かなかったばかりか,Dは「J」に戻るため,Pはその迂回路の道案内のため,いずれも男子児童らを本件川遊び場所に連れて行った後,そこを一度離れることになる指示を行い,本件倶楽部の他の成人スタッフであるV,W及びXに関しては,その行動を把握していなかったものである。被告人Bにおいて,男子児童らを先に本件川遊び場所へ出発させるに当たっては,男子児童らと共に現地に向かう成人スタッフに成人スタッフが揃うまで男子児童らが川に入水しないように監視しておく旨指示をしなければ,あるいは,本件倶楽部の他の成人スタッフを男子児童らと一緒に現地に向かわせ,男子児童らが入水しないように監視しておくよう指示をしなければ,本件川遊び場所において成人スタッフの監視がない状態が生じ,男子児童らが監視,救助態勢のない状態で川に入水する可能性があることは十分に予見し得たと考えられる。従って,被告人Bが上記指示をして本件川遊びプログラムを開始するに当たっては,監視・救助態勢を採って児童の溺水を防止すべき注意義務の一環として,本件川遊び場所に残る成人スタッフに対して男子児童らが入水しないように監視しておくよう指示すべき注意義務,あるいは,本件倶楽部の成人スタッフに対し,男子児童らと共に川遊び場所に移動し,その場で男子児童らが入水しないように監視しておくように指示すべき注意義務があったというべきである。被告人Bは上記注意義務に反して監視・救助態勢を採らないまま本件川遊びプログラムを開始したものであり,その結果,被害児童が溺水したのであるから,被告人Bが本件の責任を負うことは明らかである。これに対し,被告人Bの弁護人らは,被害児童の溺水は,本件川遊び場所においてC,T及びUが児童らから目を離したなどの異常な行為によって発生したものであるから,被告人Bの上記行為の危険性が現実化したものとはいえず,因果関係が認められないなどと主張する。しかしながら, 前記認定のとおり,被告人Bは,男子児童らを先に連れていくように指示したものの,Cに対しては,何らその計画の変更について伝えていない。そのため,Cは,「J」から本件川遊び場所に移動するに当たり,計画が変更されて男子児童らだけを先に移動させるということは知らず,男子児童らだけでなく女子児童らを含めた児童全員が移動したものと考えており,また,「J」ではEとUを除き,他の成人スタッフを見ておらず,既に本件倶楽部の成人スタッフも一緒に移動したものと考えていたのであり,本件の証拠上も,本件川遊び場所のスロープ付近において一緒に浮き輪を膨らませていたTやUから,男子児童らだけが移動したという話や,成人スタッフが現地に着いていないという話を聞いていたというような事情も窺われない。また,Cは,浮き輪を膨らませている途中,児童らが気になり,本件川遊び場所を確認するために一度下流の方に状況を見に行っており,その際,児童らの状況をきちんと把握せず,元の場所に戻って再び浮き輪を膨らませる作業に入っているが,上記のとおり,Cは,本件キャンプ当日は,本件倶楽部の成人スタッフの指示を受けるべき立場にあり,その成人スタッフからの指示は一切なく,むしろ,救助用に用意した浮き輪を早く膨らませないといけないと考え,それを行っていたのである。同様に本件倶楽部の成人スタッフの指示を受ける立場にあったT及びUについても,スタッフからの指示は一切なく,むしろ,本件キャンプ実施において主導的立場にある被告人Bの指示に従って本件川遊び場所に移動し,他に本件倶楽部の成人スタッフからの指示を一切受けないまま,Cと共に救助用に用意した浮き輪を膨らませることに没頭していたものである。結局,C,T及びUの行動は,被告人Bの指示,すなわち,成人スタッフ及び児童らに分散行動をさせ,監視・救助態勢を採らないまま本件川遊びプログラムを開始するという指示によって誘発されたものであり,本件の被害児童の溺水,死亡という結果は被告人Bの上記行為の危険性が現実化したものと認められるから,上記行為と結果との間に因果関係があることは明らかである。本件川遊びは成人スタッフと参加児童が全員で移動し,被告人Bの指示・指導の下,成人スタッフ全員で監視・救助態勢を採ることが予定されていたものであり,その前提を覆して本件川遊びプログラムを開始した被告人BがCら3名のみで児童の監視態勢を採ることを期待し,被害児童が溺水する事故が発生したのはCら3名が児童を放置して監視していなかったからであるなどと言い募るのは責任転嫁を図るものと言わざるを得ない。7 被告人Aについて次に,被告人Aについて検討する。先に検討したとおり,被告人Aは,形式的には本件倶楽部の代表者の地位にあったものの,本件キャンプや本件川遊びの指示・指導の面に関しては被告人Bを補佐する立場にあったにとどまっており,現に本件キャンプ当日,被告人B及びEが男子児童らのみを川遊び場所に向けて「J」から出発させることを決めるまでの時点において,被告人Bから何ら相談を受けていない。被告人Aは,監視・救助態勢が整わないまま本件川遊びプログラムを開始することに何ら関与しておらず,「J」の事務室で転寝をしていた被告人Aが目を覚ました時点においては,既に男子児童らは「J」から本件川遊び場所に移動していたものである。このような事実経過に鑑みれば,被告人Aが予備的訴因に掲げられたように,「本件川遊びプログラムを開始した」ものとみることは困難であり,被告人Aの過失責任を問うことはできない。(法令の適用)罰 条 平成25年法律第86号附則14条により同法による改正前の刑法211条1項前段刑種の選択 罰金刑を選択宣告刑の決定 罰金70万円労役場留置 刑法18条訴訟費用の負担 刑事訴訟法181条1項本文(量刑の理由)本件は,8歳の児童が自然の川の深みで溺れ,その生命を失うに至ったという事案である。
事案の概要
平成29年5月29日
佐賀地方裁判所 刑事部
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[下級] [行政] 平成17(行ウ)7  1971ViewsMoreinfo
損害賠償請求(差戻)事件
平成17(行ウ)7
佐賀県において、当該年度に余った予算を使い切ったかのように装うために、複写機リース会社に対し、複写機使用料を水増しして、公金を支出し、「預け金」としてプールしていたことに関し、住民である原告らが県に代位して、当時の知事に対し、平成5年度から平成9年度の上記支出金額の損害賠償を求めるとともに、現知事に対し、当時の知事等に対する上記の損害賠償請求権等の行使を怠る事実の違法確認を求めた住民訴訟の事案において、上記公金支出は、水増し支出の時点で違法であり、当時の知事には、遅くとも平成8年度中の違法な公金支出を阻止すべき指揮監督上の義務違反があったとして、原告らの請求の一部を認容した。
判示事項の要旨
平成21年1月30日
佐賀地方裁判所
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[下級] [行政] 平成20(行ク)3  1995ViewsMoreinfo
執行停止申立事件(本案・当庁平成20年(行ウ)第9号処分差止請求事件)
平成20(行ク)3
介護サービス事業者に対する、介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者、指定介護予防サービス事業者及び指定居宅介護事業者の各指定を取り消す処分につき、事業全体が破綻し、事業の継続という独立した利益が失われることになるから、「重大な損害を避けるため緊急の必要」があるなどとして、本案に関する第1審判決の言渡しがあるまで、処分の効力の停止が認められた事例
判示事項の要旨
平成21年1月19日
佐賀地方裁判所
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[下級] [労働] 平成19(行ウ)5  2514ViewsMoreinfo
懲戒処分取消請求事件(通称 佐賀県立高等学校教諭懲戒免職)
平成19(行ウ)5
飲酒運転等を理由とする地方公務員法29条1項1号及び3号に基づく懲戒免職処分は、飲酒の上での運転であるとはいえ、「酒気帯び運転」以上のアルコール分(呼気1リットル中、0.15?以上)を身体に保有した状態の運転であると認めるに足りる的確な証拠のない本件においては、あまりに過酷であり、重きに失し、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱・濫用した違法なものであるとして、処分を取り消した事例
判示事項の要旨
平成20年12月12日
佐賀地方裁判所
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[下級] [刑事] 平成15(わ)77  1882Views
虚偽有印公文書作成・同行使・詐欺,有印公文書偽造・同行使・詐欺
平成20年1月10日
佐賀地方裁判所 刑事部
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[下級] 平成18(行ウ)6  1782ViewsMoreinfo
処分取消請求事件
平成18(行ウ)6
株式会社が,営業目的でした佐賀市情報公開条例に基づく建築物に関する公文書の公開請求に対する,佐賀市長の部分公開決定について,建物の住居表示並びに建物の位置及び配置に関する情報は,「法令等の規定により,何人も閲覧できるとされている情報」ないしこれに準じた情報に当たるとして,同情報が記載された文書を非公開とした部分が取り消された事例
判示事項の要旨
平成19年10月5日
佐賀地方裁判所 民事部
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[下級] [労働] 平成17(行ウ)5  1610ViewsMoreinfo
懲戒処分取消し請求事件(通称 町立小学校教諭停職)
平成17(行ウ)5
他の職員に対する職務命令の発出の妨害したことや職員会議に欠席したこと等を理由とする町立小学校教諭2名に対する県教育委員会による懲戒処分が,各行為はいずれも適法な県教育委員会による学校訪問に反対する目的の下に行われたものであって,各行為の態様等からして,いずれも社会通念上著しく妥当を欠くものではなく,懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえず,適法であるとされた事例
判示事項の要旨
平成19年9月14日
佐賀地方裁判所
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[下級] 平成18(行ウ)4  2531ViewsMoreinfo
審査決定取消請求事件
平成18(行ウ)4
宅地所有者が宅地に多量のアスベストスラッジ(アスベストとコンクリートの混合した残渣である汚泥)が埋設され,その処分に多額の費用を要するにもかかわらず,固定資産課税台帳に登録された当該宅地の価格は,その点が考慮されていないなどと主張して,固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をした事案について,上記事情は,地方税法349条2項1号・3項ただし書きの第3年度における例外事由としての「特別の事情」や固定資産評価基準第1章第3節二(一)4が規定する「所要の補正」をすべき場合等に該当しないと判断して,上記審査申出を棄却した同委員会の決定が適法とされた事例
判示事項の要旨
平成19年7月27日
佐賀地方裁判所 民事部
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[下級] [民事] 平成16(ワ)353  1601Views
損害賠償請求事件
平成19年6月22日
佐賀地方裁判所 民事部
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[下級] [刑事] 平成18(わ)114  1959ViewsMoreinfo
殺人未遂
平成18(わ)114
被告人の運転する普通貨物自動車と被害者の乗った自転車が接触する交通事故発生後,被告人が被害者を自車に乗せて事故現場から運搬する途中,被害者を救護する意思を放棄し,未必の殺意をもって被害者を山中に遺棄したが,被害者が発見・救出され一命を取り留めた事案である。
判示事項の要旨
平成19年2月28日
佐賀地方裁判所 刑事部
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[下級] [民事] 平成16(ワ)342  2269ViewsMoreinfo
損害賠償請求事件
平成16(ワ)342
被告病院における左大腿部骨接合プレート抜釘術の際に,ガーゼ1枚が左大腿部内に残置され,同残置によりガーゼオーマ(異物肉芽腫)後遺障害が残存したなどとする原告の被告に対する不法行為に基づく請求について,その一部を認容した事例
判示事項の要旨
平成19年1月12日
佐賀地方裁判所 民事部
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