事件番号平成18(ネ)547
事件名産業廃棄物最終処分場使用差止請求控訴事件
裁判所福岡高等裁判所 第3民事部
裁判年月日平成19年3月22日
結果破棄自判
原審裁判所福岡地方裁判所
原審事件番号平成16(ワ)568
原審結果その他
判示事項の要旨1 産業廃棄物処理業者であるYは,昭和63年末ころ以降,F県Z町内に産業廃棄物最終処分場(本件処分場)を設置してこれを使用していた。Yは,本件処分場を拡張する計画を持っていたが,平成2年にF県が「産業廃棄物処理施設の設置に係る紛争の予防及び調整に関する条例」(産廃条例)を制定し,これに沿った行政指導を始めたことから,Yは,上記拡張計画に沿ってF県知事から「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)上の産業廃棄物処理施設変更許可を得るためには,事実上,産廃条例に定められた各種手続を経なければならなくなり,その一環として,Z町との間で公害防止協定を締結することを求められた。そこで,Yは,平成7年7月にZ町との間で公害防止協定(旧協定)を締結したが,その中には,本件処分場の使用期限を平成15年12月31日までとし,同期限後はYは本件処分場から撤退する旨の条項(施設使用期限条項)が含まれていた。旧協定は平成10年9月に改定され,本件協定が成立したが,施設使用期限条項は本件協定にもそのまま引き継がれた。
  ところが,Yが上記使用期限経過後も本件処分場の使用を継続したため,Z町(市町村合併後はX市が訴訟を承継した。)において,本件協定(施設使用期限条項)に基づき,Yに対し,本件処分場の使用の差止めを求めたのが本件である。
  本件の中心的な争点は,施設使用期限条項に法的拘束力が認められるか否かである。一審判決はこれを肯定して,Xの請求を認容した。
2 これに対し,本判決は,廃棄物処理法上,産業廃棄物処理施設の設置・変更をめぐる許可やこれを取り消す権限が挙げて都道府県知事に委ねられているのに,施設使用期限条項に法的拘束力が認められるということになると,それは,市町村と業者との契約に過ぎない公害防止協定によって,当該許可に有効期限が設定されるとか,上記使用期限の到来によって当該許可が取り消されることが予定されているに等しい結果となる旨を指摘した。その上で,このような,当該許可そのものの運命を左右しかねないような本質的な部分に関わる条項が協定に盛り込まれ,そのことによって当該許可を根本的に変容させるというようなことは,産廃条例を踏まえて締結された協定の基本的な性格や目的(生活環境の保全)から逸脱するものであるとして,その法的拘束力を否定し,Xの請求を棄却した。
  なお,本判決は,産業廃棄物処理施設の存在によって周辺住民が環境悪化や健康被害に対する不安を有するであろうことにも理解を示したが,周辺住民としては,あくまで,県知事に対して廃棄物処理法所定の許可取消事由を主張して当該処理施設をめぐる許可の取消しを求めるべきであり,その結果,当該許可の取消処分がなされた場合に,それに承伏できない業者が行政訴訟を提起し,その中で裁判所の判断が示されることとなるとの考え方を示唆した。
事件番号平成18(ネ)547
事件名産業廃棄物最終処分場使用差止請求控訴事件
裁判所福岡高等裁判所 第3民事部
裁判年月日平成19年3月22日
結果破棄自判
原審裁判所福岡地方裁判所
原審事件番号平成16(ワ)568
原審結果その他
判示事項の要旨
1 産業廃棄物処理業者であるYは,昭和63年末ころ以降,F県Z町内に産業廃棄物最終処分場(本件処分場)を設置してこれを使用していた。Yは,本件処分場を拡張する計画を持っていたが,平成2年にF県が「産業廃棄物処理施設の設置に係る紛争の予防及び調整に関する条例」(産廃条例)を制定し,これに沿った行政指導を始めたことから,Yは,上記拡張計画に沿ってF県知事から「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)上の産業廃棄物処理施設変更許可を得るためには,事実上,産廃条例に定められた各種手続を経なければならなくなり,その一環として,Z町との間で公害防止協定を締結することを求められた。そこで,Yは,平成7年7月にZ町との間で公害防止協定(旧協定)を締結したが,その中には,本件処分場の使用期限を平成15年12月31日までとし,同期限後はYは本件処分場から撤退する旨の条項(施設使用期限条項)が含まれていた。旧協定は平成10年9月に改定され,本件協定が成立したが,施設使用期限条項は本件協定にもそのまま引き継がれた。
  ところが,Yが上記使用期限経過後も本件処分場の使用を継続したため,Z町(市町村合併後はX市が訴訟を承継した。)において,本件協定(施設使用期限条項)に基づき,Yに対し,本件処分場の使用の差止めを求めたのが本件である。
  本件の中心的な争点は,施設使用期限条項に法的拘束力が認められるか否かである。一審判決はこれを肯定して,Xの請求を認容した。
2 これに対し,本判決は,廃棄物処理法上,産業廃棄物処理施設の設置・変更をめぐる許可やこれを取り消す権限が挙げて都道府県知事に委ねられているのに,施設使用期限条項に法的拘束力が認められるということになると,それは,市町村と業者との契約に過ぎない公害防止協定によって,当該許可に有効期限が設定されるとか,上記使用期限の到来によって当該許可が取り消されることが予定されているに等しい結果となる旨を指摘した。その上で,このような,当該許可そのものの運命を左右しかねないような本質的な部分に関わる条項が協定に盛り込まれ,そのことによって当該許可を根本的に変容させるというようなことは,産廃条例を踏まえて締結された協定の基本的な性格や目的(生活環境の保全)から逸脱するものであるとして,その法的拘束力を否定し,Xの請求を棄却した。
  なお,本判決は,産業廃棄物処理施設の存在によって周辺住民が環境悪化や健康被害に対する不安を有するであろうことにも理解を示したが,周辺住民としては,あくまで,県知事に対して廃棄物処理法所定の許可取消事由を主張して当該処理施設をめぐる許可の取消しを求めるべきであり,その結果,当該許可の取消処分がなされた場合に,それに承伏できない業者が行政訴訟を提起し,その中で裁判所の判断が示されることとなるとの考え方を示唆した。
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