事件番号平成17(ネ)771
事件名戦死自殺の国家責任を問う賠償請求等控訴事件
裁判所福岡高等裁判所 第4民事部
裁判年月日平成20年8月25日
結果破棄自判
原審裁判所長崎地方裁判所 佐世保支部
原審事件番号平成13(ワ)140
原審結果棄却
判示事項の要旨本件は,海上自衛隊員(以下「隊員」という。)が,護衛艦乗艦中に自殺したことについて,その両親である控訴人らが,(ア)隊員の自殺は上官らのいじめが原因である,(イ)被控訴人(国)には隊員の自殺を防止すべき安全配慮義務違反があった,(ウ)海上自衛隊が作成した隊員の自殺原因についての調査結果は事実に反し,その公表は控訴人らの名誉権等を侵害すると主張し,被控訴人に対し,国家賠償法に基づき,損害賠償として各5000万円の支払,謝罪及び軍事オンブズパーソン制度の設置をそれぞれ求めた事案である。
原判決は,控訴人らの請求をいずれも棄却し,同人らはこれを不服として控訴し,損害賠償額を各1000万円に減縮した。
これに対し,控訴審は,
(1)隊員の直属の上司において,隊員を侮辱するような言動を自殺前約2か月の間に繰り返した事実が認められ,当該言動は,隊員を誹謗し,心理的負荷を過度に蓄積させるような内容のものであり,指導の域を超える国家賠償法上違法なものであったと認められる。しかし,他の上官からの違法な言動や自衛隊内に構造的ないじめ行為があったとまでは認められない,
(2)被控訴人(国)は,国家公務員に対し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負い,隊員の直属の上司は,被控訴人(国)に代わってその義務を果たすべきところ,逆に侮辱的な言動を繰り返したものであって,この義務に違反したということができる。しかし,他の上官らにこの安全配慮義務違反があったとまではいえない,
(3)隊員はうつ病にかかり,それが原因で自殺したと認められるところ,このうつ病の原因は,上司の侮辱的な言動によるストレスであったと認められ,結局,上司の行為と自殺との因果関係が認められる
として,被控訴人(国)の,隊員の両親に対する国家賠償法上の責任を認め,損害賠償請求を一部認容した。
  なお,マスコミ公表による名誉権侵害に基づく損害賠償,謝罪,軍事オンブズパーソン制度設置の各請求は棄却した。
事件番号平成17(ネ)771
事件名戦死自殺の国家責任を問う賠償請求等控訴事件
裁判所福岡高等裁判所 第4民事部
裁判年月日平成20年8月25日
結果破棄自判
原審裁判所長崎地方裁判所 佐世保支部
原審事件番号平成13(ワ)140
原審結果棄却
判示事項の要旨
本件は,海上自衛隊員(以下「隊員」という。)が,護衛艦乗艦中に自殺したことについて,その両親である控訴人らが,(ア)隊員の自殺は上官らのいじめが原因である,(イ)被控訴人(国)には隊員の自殺を防止すべき安全配慮義務違反があった,(ウ)海上自衛隊が作成した隊員の自殺原因についての調査結果は事実に反し,その公表は控訴人らの名誉権等を侵害すると主張し,被控訴人に対し,国家賠償法に基づき,損害賠償として各5000万円の支払,謝罪及び軍事オンブズパーソン制度の設置をそれぞれ求めた事案である。
原判決は,控訴人らの請求をいずれも棄却し,同人らはこれを不服として控訴し,損害賠償額を各1000万円に減縮した。
これに対し,控訴審は,
(1)隊員の直属の上司において,隊員を侮辱するような言動を自殺前約2か月の間に繰り返した事実が認められ,当該言動は,隊員を誹謗し,心理的負荷を過度に蓄積させるような内容のものであり,指導の域を超える国家賠償法上違法なものであったと認められる。しかし,他の上官からの違法な言動や自衛隊内に構造的ないじめ行為があったとまでは認められない,
(2)被控訴人(国)は,国家公務員に対し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負い,隊員の直属の上司は,被控訴人(国)に代わってその義務を果たすべきところ,逆に侮辱的な言動を繰り返したものであって,この義務に違反したということができる。しかし,他の上官らにこの安全配慮義務違反があったとまではいえない,
(3)隊員はうつ病にかかり,それが原因で自殺したと認められるところ,このうつ病の原因は,上司の侮辱的な言動によるストレスであったと認められ,結局,上司の行為と自殺との因果関係が認められる
として,被控訴人(国)の,隊員の両親に対する国家賠償法上の責任を認め,損害賠償請求を一部認容した。
  なお,マスコミ公表による名誉権侵害に基づく損害賠償,謝罪,軍事オンブズパーソン制度設置の各請求は棄却した。
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