事件番号平成17(受)541
事件名損害賠償請求事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日平成18年1月24日
裁判種別判決
結果破棄差戻し
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成15(ネ)3895
原審裁判年月日平成16年12月8日
判示事項1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことによる損害の額
2 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことを理由とする国家賠償請求事件において損害の発生を認めるべきであって損害額の立証が困難であったとしても民訴法248条により相当な損害額が認定されなければならないとされた事例
裁判要旨1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかった場合,これによる損害の額は,特段の事情のない限り,その被担保債権が履行遅滞に陥ったころ,当該質権を実行することによって回収することができたはずの債権額である。
2 特許権者戊に対して融資をしたXが,戊から特許権を目的とする質権の設定を受け,特許庁長官にその設定登録を申請し,これが受け付けられたにもかかわらず,この受付に後れて申請及び受付がされた己に対する特許権移転登録が先にされたため,上記質権を取得することができなかった場合において,上記特許権が最終的にはその事業化に成功せず消滅するに至ったとしても,(1)戊が,特許出願中の上記特許権を構成する技術の一部を用いた工法を発表したところ,多数の新聞に取り上げられ,多数の企業等から同工法についての照会や資料請求があったこと,(2)戊から上記特許権の譲渡を受けた己が,庚に対し,上記特許権等を代金4億円で譲渡したこと,(3)庚は,戊らと共に上記特許権の事業化に取り組み,その商品の販売営業に努力したこと,(4)戊は,銀行取引停止処分を受け,上記質権の被担保債務についての期限の利益を喪失したが,それは上記販売営業中のことであったこと,(5)庚は,最終的に,上記特許権の事業化は採算が合わないものと判断してこれを断念し,上記特許権の第5年分の特許料の支払をしなかったため,上記特許権が消滅したが,それは戊が銀行取引停止処分を受けてから約2年半後のことであったことなど判示の事実関係の下では,Xには上記質権を取得することができなかったことにより損害が発生したというべきであり,これを理由とする国家賠償請求事件につき,損害額の立証が極めて困難であったとしても,民訴法248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて,相当な損害額が認定されなければならない。
事件番号平成17(受)541
事件名損害賠償請求事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日平成18年1月24日
裁判種別判決
結果破棄差戻し
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成15(ネ)3895
原審裁判年月日平成16年12月8日
判示事項
1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことによる損害の額
2 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかったことを理由とする国家賠償請求事件において損害の発生を認めるべきであって損害額の立証が困難であったとしても民訴法248条により相当な損害額が認定されなければならないとされた事例
裁判要旨
1 特許庁の担当職員の過失により特許権を目的とする質権を取得することができなかった場合,これによる損害の額は,特段の事情のない限り,その被担保債権が履行遅滞に陥ったころ,当該質権を実行することによって回収することができたはずの債権額である。
2 特許権者戊に対して融資をしたXが,戊から特許権を目的とする質権の設定を受け,特許庁長官にその設定登録を申請し,これが受け付けられたにもかかわらず,この受付に後れて申請及び受付がされた己に対する特許権移転登録が先にされたため,上記質権を取得することができなかった場合において,上記特許権が最終的にはその事業化に成功せず消滅するに至ったとしても,(1)戊が,特許出願中の上記特許権を構成する技術の一部を用いた工法を発表したところ,多数の新聞に取り上げられ,多数の企業等から同工法についての照会や資料請求があったこと,(2)戊から上記特許権の譲渡を受けた己が,庚に対し,上記特許権等を代金4億円で譲渡したこと,(3)庚は,戊らと共に上記特許権の事業化に取り組み,その商品の販売営業に努力したこと,(4)戊は,銀行取引停止処分を受け,上記質権の被担保債務についての期限の利益を喪失したが,それは上記販売営業中のことであったこと,(5)庚は,最終的に,上記特許権の事業化は採算が合わないものと判断してこれを断念し,上記特許権の第5年分の特許料の支払をしなかったため,上記特許権が消滅したが,それは戊が銀行取引停止処分を受けてから約2年半後のことであったことなど判示の事実関係の下では,Xには上記質権を取得することができなかったことにより損害が発生したというべきであり,これを理由とする国家賠償請求事件につき,損害額の立証が極めて困難であったとしても,民訴法248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて,相当な損害額が認定されなければならない。
このエントリーをはてなブックマークに追加