事件番号 | 平成17(行ケ)118 |
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事件名 | 審決取消請求事件 |
裁判所 | 東京高等裁判所 |
裁判年月日 | 平成18年2月24日 |
判示事項 | 1 防衛庁が指名競争入札の方法により発注した航空タービン燃料等に係る入札談合において,他社が製造した航空タービン燃料を購入して防衛庁に販売していた石油会社の事業が,製造業に当たり,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項にいう卸売業又は小売業に当たらないとして売上額の6パーセントに相当する課徴金の納付を命じた審決が,適法とされた事例 2 防衛庁が指名競争入札の方法により発注した航空タービン燃料等に係る入札談合に関与した石油会社に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(平成17年政令第318号による改正前)6条が規定する,いわゆる契約基準に基づいて算出した売上額を基礎に算定した額の課徴金の納付を命じた審決が,適法とされた事例 3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項所定の「売上額」に消費税相当額が含まれるか |
裁判要旨 | 1 防衛庁が指名競争入札の方法により発注した航空タービン燃料等に係る入札談合において,他社が製造した航空タービン燃料を購入して防衛庁に販売していた石油会社の事業が,製造業に当たり,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項にいう卸売業又は小売業に当たらないとして売上額の6パーセントに相当する課徴金の納付を命じた審決につき,同項が,課徴金算定率について,6パーセントを原則としつつ,卸売業,小売業については例外的に軽減した算定率を設定した趣旨は,卸売業や小売業の取引は商品を右から左に流通させることによりマージンを受けるという側面が強く,事業活動の性質上,売上高営業利益率も小さくなっている実態を考慮したためであるから,一般的には事業活動の内容が商品を第三者から購入して販売するものであっても,実質的にみて卸売業又は小売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情があるときには,当該他業種と同視できる事業を行っているものとして業種の認定を行うことが相当であるとした上,前記他社における前記航空タービン燃料を含む石油製品の製造は,前記石油会社による原油の供給及び製品の引取りと一体の過程として予定され,他社が製造して前記石油会社に供給する前記航空タービン燃料について,製品の数量,仕様等の製造事業の主要な意思決定に前記石油会社が主導的立場で関与し,前記石油会社が前記他社の支配的な株主として同他社に生じた利益が実質的に帰属する地位にあったことに照らせば,前記他社は前記石油会社の一部門であって,前記石油会社が自らの一部門において航空タービン燃料に係る製造事業を行っていたものということができるから,前記特段の事情が存在するとして,前記審決を適法とした事例 2 防衛庁が指名競争入札の方法により発注した航空タービン燃料等に係る入札談合に関与した石油会社に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(平成17年政令第318号による改正前)6条が規定する,いわゆる契約基準に基づいて算出した売上額を基礎に算定した額の課徴金の納付を命じた審決につき,同条にいう「著しい差異が生ずる事情がある」かどうかの判断は,前記施行令5条が定める,いわゆる引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の額の合計額との間に著しい差異が生ずる蓋然性が類型的又は定性的に認められるかどうかを判断して決すれば足り,その判断が裁量権の範囲を超え又は濫用にわたる場合には違法となると解した上,前記航空タービン燃料等については,契約から引渡しまで相当期間を要するため,前記施行令5条の引渡基準を用いるか6条の契約基準を用いるかにより売上額に不一致が生じ得ることなどからすると,著しい差異を生ずる蓋然性が類型的又は定性的に存在するとの判断には相応の合理性があり,契約基準により売上額を算定したことが裁量の範囲を超え又は裁量権を濫用したとはいえないとして,前記審決を適法とした事例 3 一般に「対価」とは商品の販売価格を指すものということができるところ,消費税法が商品の販売等の資産の譲渡につき,当該商品を販売する事業者等の資産の譲渡を行った事業者を消費税の納税義務者とし,商品購入者等の資産の譲受人は消費税相当額を添加され負担するにとどまり法律上の納税者ではないこと,消費税相当額は,商品本体等の代金額の金員と同一の法的性質を有する金員として一体的に事業者に支払われ,事業者が消費者から受領した金員の中から消費税を納付する義務を負うことが予定されていることからすれば,消費税相当額は,法的性質上,商品の販売価格の一部であり,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令6条にいう「商品の対価」に含まれ,したがって,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項所定の「売上額」には消費税相当額が含まれると解すべきである。 |
事件番号 | 平成17(行ケ)118 |
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事件名 | 審決取消請求事件 |
裁判所 | 東京高等裁判所 |
裁判年月日 | 平成18年2月24日 |
判示事項 |
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1 防衛庁が指名競争入札の方法により発注した航空タービン燃料等に係る入札談合において,他社が製造した航空タービン燃料を購入して防衛庁に販売していた石油会社の事業が,製造業に当たり,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項にいう卸売業又は小売業に当たらないとして売上額の6パーセントに相当する課徴金の納付を命じた審決が,適法とされた事例 2 防衛庁が指名競争入札の方法により発注した航空タービン燃料等に係る入札談合に関与した石油会社に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(平成17年政令第318号による改正前)6条が規定する,いわゆる契約基準に基づいて算出した売上額を基礎に算定した額の課徴金の納付を命じた審決が,適法とされた事例 3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項所定の「売上額」に消費税相当額が含まれるか |
裁判要旨 |
1 防衛庁が指名競争入札の方法により発注した航空タービン燃料等に係る入札談合において,他社が製造した航空タービン燃料を購入して防衛庁に販売していた石油会社の事業が,製造業に当たり,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項にいう卸売業又は小売業に当たらないとして売上額の6パーセントに相当する課徴金の納付を命じた審決につき,同項が,課徴金算定率について,6パーセントを原則としつつ,卸売業,小売業については例外的に軽減した算定率を設定した趣旨は,卸売業や小売業の取引は商品を右から左に流通させることによりマージンを受けるという側面が強く,事業活動の性質上,売上高営業利益率も小さくなっている実態を考慮したためであるから,一般的には事業活動の内容が商品を第三者から購入して販売するものであっても,実質的にみて卸売業又は小売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情があるときには,当該他業種と同視できる事業を行っているものとして業種の認定を行うことが相当であるとした上,前記他社における前記航空タービン燃料を含む石油製品の製造は,前記石油会社による原油の供給及び製品の引取りと一体の過程として予定され,他社が製造して前記石油会社に供給する前記航空タービン燃料について,製品の数量,仕様等の製造事業の主要な意思決定に前記石油会社が主導的立場で関与し,前記石油会社が前記他社の支配的な株主として同他社に生じた利益が実質的に帰属する地位にあったことに照らせば,前記他社は前記石油会社の一部門であって,前記石油会社が自らの一部門において航空タービン燃料に係る製造事業を行っていたものということができるから,前記特段の事情が存在するとして,前記審決を適法とした事例 2 防衛庁が指名競争入札の方法により発注した航空タービン燃料等に係る入札談合に関与した石油会社に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令(平成17年政令第318号による改正前)6条が規定する,いわゆる契約基準に基づいて算出した売上額を基礎に算定した額の課徴金の納付を命じた審決につき,同条にいう「著しい差異が生ずる事情がある」かどうかの判断は,前記施行令5条が定める,いわゆる引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の額の合計額との間に著しい差異が生ずる蓋然性が類型的又は定性的に認められるかどうかを判断して決すれば足り,その判断が裁量権の範囲を超え又は濫用にわたる場合には違法となると解した上,前記航空タービン燃料等については,契約から引渡しまで相当期間を要するため,前記施行令5条の引渡基準を用いるか6条の契約基準を用いるかにより売上額に不一致が生じ得ることなどからすると,著しい差異を生ずる蓋然性が類型的又は定性的に存在するとの判断には相応の合理性があり,契約基準により売上額を算定したことが裁量の範囲を超え又は裁量権を濫用したとはいえないとして,前記審決を適法とした事例 3 一般に「対価」とは商品の販売価格を指すものということができるところ,消費税法が商品の販売等の資産の譲渡につき,当該商品を販売する事業者等の資産の譲渡を行った事業者を消費税の納税義務者とし,商品購入者等の資産の譲受人は消費税相当額を添加され負担するにとどまり法律上の納税者ではないこと,消費税相当額は,商品本体等の代金額の金員と同一の法的性質を有する金員として一体的に事業者に支払われ,事業者が消費者から受領した金員の中から消費税を納付する義務を負うことが予定されていることからすれば,消費税相当額は,法的性質上,商品の販売価格の一部であり,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令6条にいう「商品の対価」に含まれ,したがって,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第35号による改正前)7条の2第1項所定の「売上額」には消費税相当額が含まれると解すべきである。 |