事件番号平成24(行ウ)877
事件名不許可処分取消請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成26年2月19日
事案の概要本件は,原告が,その所有する農地である別紙1物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を参加人に対して賃貸(以下,これに係る契約を「本件賃貸借契約」という。)をしているところ,①参加人が,本件土地のごく一部を家庭菜園として利用するのみで,その大部分につき耕作を行うことなく放置し荒れるに任せるなどしていた,②本件土地は市街化区域内にあり,平成4年以降,固定資産税につきいわゆる宅地並み課税がされ,その税額が借賃の額を大きく上回るいわゆる逆ざや状態となっていて,原告の持ち出しが続いていたなどの事情があり,農地法(以下「法」という。)18条2項1号又は5号所定の農地の賃貸借の解約の申入れをすることを許可すべき事由があるにもかかわらず,東京都知事が原告の同条1項に基づく本件賃貸借契約の解約の申入れをすることについての許可の申請に対してこれを許可しないとの処分(以下「本件処分」という。)をしたとして,同処分の取消しを求めた事案である。
判示事項1 農地法18条2項1号の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないと判断された事例
2 農地法18条2項5号の「その他正当の事由がある場合」に当たるとはいえないと判断された事例
裁判要旨1 農地法18条2項1号の「信義に反した行為」とは,賃貸人と賃借人との間の契約関係を継続することが客観的にみて不可能とされるような背信的な行為をいうものと解されるとした上,賃借人が30年以上にわたって耕作を継続していたことからすると,賃借地内に十分な手入れが施されていない部分が存し,かつ,高性能の機械営農は不可能な状態にあるとの事情が存するとしても,賃借人が不耕作の状況にあったとはいえず,また,同地に対して課される固定資産税の額が,いわゆる宅地並み課税により同地の借賃の額を上回っていたことの一事をもって,直ちに,賃借人が「信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないことも明らかであるなどとして,当該事案が,「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないと判断した事例
2 農地法18条2項5号の「その他正当の事由がある場合」に該当する事情があるといえるか否かについては,当該事案における諸般の事情を総合的に考慮した上で,農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることを認めることが当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用につながるといえるか否かによって判断すべきものとした上,①賃借人の耕作の範囲は当該農地の2割強程度にすぎないものの,賃借人は30年以上にわたって耕作を継続し,今後も耕作を継続する意向を示していること,②賃貸人において,当該農地につき農業上の適正かつ効率的な利用又は農地以外のものとすることを相当とするような利用をする確定した見込みがあるとはうかがわれなかったこと,③賃貸人は,当該農地に対して課される固定資産税の額が借賃の額を上回る状態を解消したいとの意向を有していたが,その解消のための対応はとっていなかったこと,④上記の状態が生じて以降,賃貸人と賃借人との間で交渉が持たれたが,賃借人が当該農地での耕作を希望していたため交渉は進展しなかったことなどの事実を総合的に考慮すると,賃借人が当該農地の賃貸借契約の解約の申入れをすることを認めることが,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用につながるとはいい難く,当該農地を農地以外のものにすることを相当とするような特段の事情があったともいい難いとして,「その他正当の事由がある場合」に当たるとはいえないと判断した事例
事件番号平成24(行ウ)877
事件名不許可処分取消請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成26年2月19日
事案の概要
本件は,原告が,その所有する農地である別紙1物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を参加人に対して賃貸(以下,これに係る契約を「本件賃貸借契約」という。)をしているところ,①参加人が,本件土地のごく一部を家庭菜園として利用するのみで,その大部分につき耕作を行うことなく放置し荒れるに任せるなどしていた,②本件土地は市街化区域内にあり,平成4年以降,固定資産税につきいわゆる宅地並み課税がされ,その税額が借賃の額を大きく上回るいわゆる逆ざや状態となっていて,原告の持ち出しが続いていたなどの事情があり,農地法(以下「法」という。)18条2項1号又は5号所定の農地の賃貸借の解約の申入れをすることを許可すべき事由があるにもかかわらず,東京都知事が原告の同条1項に基づく本件賃貸借契約の解約の申入れをすることについての許可の申請に対してこれを許可しないとの処分(以下「本件処分」という。)をしたとして,同処分の取消しを求めた事案である。
判示事項
1 農地法18条2項1号の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないと判断された事例
2 農地法18条2項5号の「その他正当の事由がある場合」に当たるとはいえないと判断された事例
裁判要旨
1 農地法18条2項1号の「信義に反した行為」とは,賃貸人と賃借人との間の契約関係を継続することが客観的にみて不可能とされるような背信的な行為をいうものと解されるとした上,賃借人が30年以上にわたって耕作を継続していたことからすると,賃借地内に十分な手入れが施されていない部分が存し,かつ,高性能の機械営農は不可能な状態にあるとの事情が存するとしても,賃借人が不耕作の状況にあったとはいえず,また,同地に対して課される固定資産税の額が,いわゆる宅地並み課税により同地の借賃の額を上回っていたことの一事をもって,直ちに,賃借人が「信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないことも明らかであるなどとして,当該事案が,「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないと判断した事例
2 農地法18条2項5号の「その他正当の事由がある場合」に該当する事情があるといえるか否かについては,当該事案における諸般の事情を総合的に考慮した上で,農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることを認めることが当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用につながるといえるか否かによって判断すべきものとした上,①賃借人の耕作の範囲は当該農地の2割強程度にすぎないものの,賃借人は30年以上にわたって耕作を継続し,今後も耕作を継続する意向を示していること,②賃貸人において,当該農地につき農業上の適正かつ効率的な利用又は農地以外のものとすることを相当とするような利用をする確定した見込みがあるとはうかがわれなかったこと,③賃貸人は,当該農地に対して課される固定資産税の額が借賃の額を上回る状態を解消したいとの意向を有していたが,その解消のための対応はとっていなかったこと,④上記の状態が生じて以降,賃貸人と賃借人との間で交渉が持たれたが,賃借人が当該農地での耕作を希望していたため交渉は進展しなかったことなどの事実を総合的に考慮すると,賃借人が当該農地の賃貸借契約の解約の申入れをすることを認めることが,当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用につながるとはいい難く,当該農地を農地以外のものにすることを相当とするような特段の事情があったともいい難いとして,「その他正当の事由がある場合」に当たるとはいえないと判断した事例
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