事件番号平成25(行ウ)808
事件名法人税更正処分取消等請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成28年7月19日
事案の概要本件は,液晶ディスプレイ用ガラス基板の製造及び販売を業とする会社である原告が,その製造に用いるプラチナ(減価償却資産以外の固定資産に該当するもの)を調達するため,P1 Inc.(以下「P1社」という。)及び P2PLC(以下「P2社」という。)との間で,平成17年6月から平成18年9月にかけて,各基本契約に基づいてその調達に関する各個別契約を締結してその引渡しを受け,平成19年5月ないし8月に上記各基本契約に基づく買取選択権(後記2(3)ア(ウ)②,イ(ク)①)を行使した時にP1社及びP2社に合計121億0832万0554円を支払い,平成19年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の確定申告において,上記支払額から上記各個別契約開始時の時価及び両時点間の為替差益等を控除した金額19億8005万5928円を特別損失として計上し(以下,この計上額を「本件特別損失計上額」という。),これを損金の額に算入して申告をしたところ,処分行政庁から,本件特別損失計上額は上記プラチナの取得価額の一部であり損金の額に算入されないとして,法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件各処分」という。)を受けたため,本件各処分の取消しを求める事案である。
判示事項1 法人税法及び同法施行令における法人による固定資産の取得の意義及び時期
2 法人が減価償却資産以外の固定資産であるプラチナの調達に関する基本契約に基づいてその調達に関する個別契約を締結してその引渡しを受け,同基本契約に基づく買取選択権を行使した時に同個別契約の相手方に金員を支払った場合において,法人税法及び同法施行令上,同法人は上記買取選択権の行使時に同個別契約に基づきプラチナを取得したものであり,上記金員から当該プラチナの時価及び為替差益等を控除した金員は当該プラチナの取得価額に当たるとされた事例
裁判要旨1 法人税法及び同法施行令における法人による固定資産の取得は,当該固定資産の所有権移転の原因となる私法上の法律行為がこれに当たり,上記の取得の時期は,その原因行為による所有権移転の時期がこれに当たる。
2 法人が減価償却資産以外の固定資産であるプラチナの調達に関する基本契約に基づいてその調達に関する個別契約を締結してその引渡しを受け,同基本契約に基づく買取選択権を行使した時に同個別契約の相手方に金員を支払った場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,同法人は,法人税法及び同法施行令上,上記買取選択権の行使時に同個別契約に基づきプラチナを取得したものであり,上記金員から当該プラチナの時価及び為替差益等を控除した金員は,当該プラチナの取得価額に当たる。
 (1)ア 上記基本契約において,上記法人は,同契約に基づく個別契約であるプラチナのリース契約の終了時又は解約時に買取選択権を行使するまでの間は,リース資産であるプラチナについて,契約の相手方である貸主に対しリース料を支払い,第三者に対し担保権等の設定や転貸をすることができず,製造過程用の合金化以外は重要な加工・改良を行うこともできず,財産持分を有しないなど,使用収益の方法を大きく制限されて処分を禁止されている。
  イ 上記基本契約において,上記法人は,リース資産であるプラチナについて,貸主からの要求書の送付時又はリース契約の終了時に,同法人が行った合金化について直ちに同法人の負担により非合金化して引渡し時の状態以上の品質及び純度で貸主に返還しなければならず,同法人の帳簿上も常に貸主の資産として認識されるべきものとされ,同法人の債務不履行に基づくリース契約の解除による終了の場合に,貸主の通知により貸主に返還する必要があるとされるなど,リース契約の終了等の場合にプラチナそのものを貸主に返還することも予定されている。
 (2) 上記法人は,会計帳簿において,上記個別契約に基づき取得したプラチナに係る上記買取選択権の行使時に契約の相手方に支払った金額を当該プラチナの所得価額として同法人の資産に計上している。
事件番号平成25(行ウ)808
事件名法人税更正処分取消等請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日平成28年7月19日
事案の概要
本件は,液晶ディスプレイ用ガラス基板の製造及び販売を業とする会社である原告が,その製造に用いるプラチナ(減価償却資産以外の固定資産に該当するもの)を調達するため,P1 Inc.(以下「P1社」という。)及び P2PLC(以下「P2社」という。)との間で,平成17年6月から平成18年9月にかけて,各基本契約に基づいてその調達に関する各個別契約を締結してその引渡しを受け,平成19年5月ないし8月に上記各基本契約に基づく買取選択権(後記2(3)ア(ウ)②,イ(ク)①)を行使した時にP1社及びP2社に合計121億0832万0554円を支払い,平成19年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の確定申告において,上記支払額から上記各個別契約開始時の時価及び両時点間の為替差益等を控除した金額19億8005万5928円を特別損失として計上し(以下,この計上額を「本件特別損失計上額」という。),これを損金の額に算入して申告をしたところ,処分行政庁から,本件特別損失計上額は上記プラチナの取得価額の一部であり損金の額に算入されないとして,法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件各処分」という。)を受けたため,本件各処分の取消しを求める事案である。
判示事項
1 法人税法及び同法施行令における法人による固定資産の取得の意義及び時期
2 法人が減価償却資産以外の固定資産であるプラチナの調達に関する基本契約に基づいてその調達に関する個別契約を締結してその引渡しを受け,同基本契約に基づく買取選択権を行使した時に同個別契約の相手方に金員を支払った場合において,法人税法及び同法施行令上,同法人は上記買取選択権の行使時に同個別契約に基づきプラチナを取得したものであり,上記金員から当該プラチナの時価及び為替差益等を控除した金員は当該プラチナの取得価額に当たるとされた事例
裁判要旨
1 法人税法及び同法施行令における法人による固定資産の取得は,当該固定資産の所有権移転の原因となる私法上の法律行為がこれに当たり,上記の取得の時期は,その原因行為による所有権移転の時期がこれに当たる。
2 法人が減価償却資産以外の固定資産であるプラチナの調達に関する基本契約に基づいてその調達に関する個別契約を締結してその引渡しを受け,同基本契約に基づく買取選択権を行使した時に同個別契約の相手方に金員を支払った場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,同法人は,法人税法及び同法施行令上,上記買取選択権の行使時に同個別契約に基づきプラチナを取得したものであり,上記金員から当該プラチナの時価及び為替差益等を控除した金員は,当該プラチナの取得価額に当たる。
 (1)ア 上記基本契約において,上記法人は,同契約に基づく個別契約であるプラチナのリース契約の終了時又は解約時に買取選択権を行使するまでの間は,リース資産であるプラチナについて,契約の相手方である貸主に対しリース料を支払い,第三者に対し担保権等の設定や転貸をすることができず,製造過程用の合金化以外は重要な加工・改良を行うこともできず,財産持分を有しないなど,使用収益の方法を大きく制限されて処分を禁止されている。
  イ 上記基本契約において,上記法人は,リース資産であるプラチナについて,貸主からの要求書の送付時又はリース契約の終了時に,同法人が行った合金化について直ちに同法人の負担により非合金化して引渡し時の状態以上の品質及び純度で貸主に返還しなければならず,同法人の帳簿上も常に貸主の資産として認識されるべきものとされ,同法人の債務不履行に基づくリース契約の解除による終了の場合に,貸主の通知により貸主に返還する必要があるとされるなど,リース契約の終了等の場合にプラチナそのものを貸主に返還することも予定されている。
 (2) 上記法人は,会計帳簿において,上記個別契約に基づき取得したプラチナに係る上記買取選択権の行使時に契約の相手方に支払った金額を当該プラチナの所得価額として同法人の資産に計上している。
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