事件番号 | 平成29(ネ)2612 |
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事件名 | 損害賠償請求控訴事件 |
裁判所 | 大阪高等裁判所 第13民事部 |
裁判年月日 | 令和元年11月20日 |
原審裁判所 | 神戸地方裁判所 姫路支部 |
原審事件番号 | 平成27(ワ)424 |
事案の概要 | 本件は,控訴人が,被控訴人において管理をしていた控訴人の個人情報を含む顧客らの個人情報を,被控訴人から委託を受けて個人情報を分析するシステム(以下「本件システム」という。)の開発をしていた株式会社Aの委託先の従業員であるBが外部に漏えいさせたことから,精神的苦痛を被ったと主張して,被控訴人に対し,選択的に, 被控訴人には,控訴人の個人情報の管理に注意義務違反があったとして被控訴人の不法行為(民法709条)また,被控訴人には,株式会社A(株式会社Aには, 株式会社A自体に個人情報の管理に注意義務違反があった(民法709条),あるいは Bによる漏えい行為が株式会社Aの事業の執行につきなされたとしてその使用者責任があった(民法715条1項本文)。)の選任監督に係る注意義務違反があったとして株式会社A との共同不法行為(民法719条1項前段)に基づき, さらに,株式会社Aは被控訴人の被用者であり,株式会社Aの上記 の不法行為は被控訴人の事業の執行につきなされたとして,使用者責任に基づき(民法715条1項本文),慰謝料10万円及び不法行為後の日である平成26年11月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 |
判示事項の要旨 | 本件は,控訴人において,通信教育事業等を営む被控訴人株式会社ベネッセコーポレーション(以下「被控訴人」という。)から委託を受けて被控訴人の顧客の個人情報を分析するシステムの開発・運用等をしていた株式会社Aの業務委託先の従業員(以下「本件従業員」という。)が,控訴人の個人情報(以下「本件個人情報」という。)を外部に漏えいした(以下「本件漏えい」という。)ことにより精神的苦痛を被ったとして,被控訴人に対し不法行為(民法719条,715条)に基づき10万円の慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件従業員は,MTPに対応したスマートフォンを業務用パソコンのUSBポートにUSBケーブルを用いて接続してMTP通信でデータを転送する方法により,被控訴人の顧客の個人情報(控訴人の本件個人情報を含む。)を不正に取得し,名簿業者に売却した。 本判決は,本件従業員による本件漏えいによって,本件個人情報が漏えいしたことにより,控訴人のプライバシーとして法的保護の対象となる利益が違法に侵害されたものとして,次のとおり被控訴人の責任を認める旨の判断をして,これを認めなかった原判決を変更した。 (1)被控訴人及び株式会社Aの本件漏えいの予見可能性の有無の点について,被控訴人及び株式会社Aは,執務室内で個人情報にアクセスし得る業務に従事する従業員が,セキュリティソフトによって書出し制御の措置を採っていたMTP非対応スマートフォン(通信方式がMSCであるスマートフォン)ではなく,このような措置の採られていないMTP対応スマートフォンを執務室内に持ち込んで業務用PCのUSBポートに接続することにより個人情報を不正に取得される可能性があることを認識し得たもので,そのリスクの有無を日常的に調査確認することで,そのリスクのあること及びこれを防止する措置を講ずる必要性があることを認識できたものと認められる。 (2)そうである以上,株式会社Aは,MTP対応スマートフォンを上記の執務室内に持ち込んで,本件個人情報に接することのないようにするなど適切な措置を採るべき注意義務を負っていたというべきであり,これを怠ったことについて過失があるというべきである。 (3)また,被控訴人は,個人情報提供者から提供を受けた個人情報を適切に管理すべき立場にあるところ,株式会社Aと同様に本件漏えいのリスクを予見できたのに,被控訴人の管理する当該個人情報の利用を認めた株式会社Aに対する適切な監督義務に違反した結果,本件従業員による本件漏えいを生じさせたものと認められるから,控訴人に対し,これによって生じた損害について不法行為責任を負う。被控訴人と株式会社Aの不法行為(及び本件従業員の本件漏えいによる不法行為)は,被控訴人が保有し,その管理を株式会社Aに委託して管理させていた本件個人情報の漏えいに関するものであり,客観的に関連するものであるから,共同不法行為に当たる(民法719条1項前段)。 本件従業員は,故意に控訴人の承諾もないまま同人の個人情報を回収不能なほどに流出させたもので,これは一般人の感受性を基準にしてもその私生活上の平穏を害する態様の侵害行為であるといえ,本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると,これによる控訴人の精神的苦痛を慰謝するためには,1000円の慰謝料が相当である。 |
事件番号 | 平成29(ネ)2612 |
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事件名 | 損害賠償請求控訴事件 |
裁判所 | 大阪高等裁判所 第13民事部 |
裁判年月日 | 令和元年11月20日 |
原審裁判所 | 神戸地方裁判所 姫路支部 |
原審事件番号 | 平成27(ワ)424 |
事案の概要 |
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本件は,控訴人が,被控訴人において管理をしていた控訴人の個人情報を含む顧客らの個人情報を,被控訴人から委託を受けて個人情報を分析するシステム(以下「本件システム」という。)の開発をしていた株式会社Aの委託先の従業員であるBが外部に漏えいさせたことから,精神的苦痛を被ったと主張して,被控訴人に対し,選択的に, 被控訴人には,控訴人の個人情報の管理に注意義務違反があったとして被控訴人の不法行為(民法709条)また,被控訴人には,株式会社A(株式会社Aには, 株式会社A自体に個人情報の管理に注意義務違反があった(民法709条),あるいは Bによる漏えい行為が株式会社Aの事業の執行につきなされたとしてその使用者責任があった(民法715条1項本文)。)の選任監督に係る注意義務違反があったとして株式会社A との共同不法行為(民法719条1項前段)に基づき, さらに,株式会社Aは被控訴人の被用者であり,株式会社Aの上記 の不法行為は被控訴人の事業の執行につきなされたとして,使用者責任に基づき(民法715条1項本文),慰謝料10万円及び不法行為後の日である平成26年11月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 |
判示事項の要旨 |
本件は,控訴人において,通信教育事業等を営む被控訴人株式会社ベネッセコーポレーション(以下「被控訴人」という。)から委託を受けて被控訴人の顧客の個人情報を分析するシステムの開発・運用等をしていた株式会社Aの業務委託先の従業員(以下「本件従業員」という。)が,控訴人の個人情報(以下「本件個人情報」という。)を外部に漏えいした(以下「本件漏えい」という。)ことにより精神的苦痛を被ったとして,被控訴人に対し不法行為(民法719条,715条)に基づき10万円の慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件従業員は,MTPに対応したスマートフォンを業務用パソコンのUSBポートにUSBケーブルを用いて接続してMTP通信でデータを転送する方法により,被控訴人の顧客の個人情報(控訴人の本件個人情報を含む。)を不正に取得し,名簿業者に売却した。 本判決は,本件従業員による本件漏えいによって,本件個人情報が漏えいしたことにより,控訴人のプライバシーとして法的保護の対象となる利益が違法に侵害されたものとして,次のとおり被控訴人の責任を認める旨の判断をして,これを認めなかった原判決を変更した。 (1)被控訴人及び株式会社Aの本件漏えいの予見可能性の有無の点について,被控訴人及び株式会社Aは,執務室内で個人情報にアクセスし得る業務に従事する従業員が,セキュリティソフトによって書出し制御の措置を採っていたMTP非対応スマートフォン(通信方式がMSCであるスマートフォン)ではなく,このような措置の採られていないMTP対応スマートフォンを執務室内に持ち込んで業務用PCのUSBポートに接続することにより個人情報を不正に取得される可能性があることを認識し得たもので,そのリスクの有無を日常的に調査確認することで,そのリスクのあること及びこれを防止する措置を講ずる必要性があることを認識できたものと認められる。 (2)そうである以上,株式会社Aは,MTP対応スマートフォンを上記の執務室内に持ち込んで,本件個人情報に接することのないようにするなど適切な措置を採るべき注意義務を負っていたというべきであり,これを怠ったことについて過失があるというべきである。 (3)また,被控訴人は,個人情報提供者から提供を受けた個人情報を適切に管理すべき立場にあるところ,株式会社Aと同様に本件漏えいのリスクを予見できたのに,被控訴人の管理する当該個人情報の利用を認めた株式会社Aに対する適切な監督義務に違反した結果,本件従業員による本件漏えいを生じさせたものと認められるから,控訴人に対し,これによって生じた損害について不法行為責任を負う。被控訴人と株式会社Aの不法行為(及び本件従業員の本件漏えいによる不法行為)は,被控訴人が保有し,その管理を株式会社Aに委託して管理させていた本件個人情報の漏えいに関するものであり,客観的に関連するものであるから,共同不法行為に当たる(民法719条1項前段)。 本件従業員は,故意に控訴人の承諾もないまま同人の個人情報を回収不能なほどに流出させたもので,これは一般人の感受性を基準にしてもその私生活上の平穏を害する態様の侵害行為であるといえ,本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると,これによる控訴人の精神的苦痛を慰謝するためには,1000円の慰謝料が相当である。 |