事件番号令和1(受)1190
事件名損害賠償等請求事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日令和2年10月13日
裁判種別判決
結果その他
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成29(ネ)1842
原審裁判年月日平成31年2月20日
事案の概要本件は,第1審被告と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」という。)の駅構内の売店における販売業務に従事していた第1審原告らが,第1審被告と期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している労働者のうち上記業務に従事している者と第1審原告らとの間で,退職金等に相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反するものであったなどと主張して,第1審被告に対し,不法行為等に基づき,上記相違に係る退職金に相当する額等の損害賠償等を求める事案である。
判示事項無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
裁判要旨地下鉄の駅構内の売店における販売業務に従事する無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で,同業務に従事する有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,上記有期契約労働者が必ずしも短期雇用を前提としていたものとはいえないこと等をしんしゃくしても,次の(1)~(5)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらない。
(1) 上記売店を経営する会社は,退職する無期契約労働者に対し,一時金として退職金を支給する制度を設けており,退職金規程により,その支給対象者の範囲や支給基準,方法等を定めていたところ,上記退職金は,無期契約労働者の職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有し,無期契約労働者としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から,様々な部署等で継続的に就労することが期待される無期契約労働者に対し支給することとされたものである。
(2) 上記販売業務に従事する無期契約労働者と有期契約労働者の業務の内容はおおむね共通するものの,無期契約労働者は,休暇や欠勤で不在の販売員に代わって早番や遅番の業務を行う代務業務を担当していたほか,複数の売店を統括し,上記販売業務のトラブル処理等を行うエリアマネージャー業務に従事することがあったのに対し,有期契約労働者は,上記販売業務に専従していたものであり,両者の職務の内容に一定の相違があった。
(3) 上記販売業務に従事する無期契約労働者は配置転換等を命ぜられる現実の可能性があったのに対し,同業務に従事する有期契約労働者は配置転換等を命ぜられることはなく,両者の職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違があった。
(4) 上記会社においては,全ての無期契約労働者が同一の雇用管理の区分に属するものとして同じ就業規則等により同一の労働条件の適用を受けていたが,上記販売業務に従事する無期契約労働者は,本社の各部署や事業所等に配置され配置転換等を命ぜられることがあった他の多数の無期契約労働者とは職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲を異にしていたところ,関連会社等の再編成の経緯やその職務経験等に照らし,賃金水準を変更したり,他の部署に配置転換等をしたりすることが困難な事情があったことがうかがわれる。
(5) 上記会社は,無期契約労働者へ段階的に職種を変更するための開かれた試験による登用制度を設け,相当数の有期契約労働者を無期契約労働者に登用していた。
(補足意見及び反対意見がある。)
事件番号令和1(受)1190
事件名損害賠償等請求事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日令和2年10月13日
裁判種別判決
結果その他
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成29(ネ)1842
原審裁判年月日平成31年2月20日
事案の概要
本件は,第1審被告と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」という。)の駅構内の売店における販売業務に従事していた第1審原告らが,第1審被告と期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している労働者のうち上記業務に従事している者と第1審原告らとの間で,退職金等に相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反するものであったなどと主張して,第1審被告に対し,不法行為等に基づき,上記相違に係る退職金に相当する額等の損害賠償等を求める事案である。
判示事項
無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
裁判要旨
地下鉄の駅構内の売店における販売業務に従事する無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で,同業務に従事する有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,上記有期契約労働者が必ずしも短期雇用を前提としていたものとはいえないこと等をしんしゃくしても,次の(1)~(5)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらない。
(1) 上記売店を経営する会社は,退職する無期契約労働者に対し,一時金として退職金を支給する制度を設けており,退職金規程により,その支給対象者の範囲や支給基準,方法等を定めていたところ,上記退職金は,無期契約労働者の職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有し,無期契約労働者としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から,様々な部署等で継続的に就労することが期待される無期契約労働者に対し支給することとされたものである。
(2) 上記販売業務に従事する無期契約労働者と有期契約労働者の業務の内容はおおむね共通するものの,無期契約労働者は,休暇や欠勤で不在の販売員に代わって早番や遅番の業務を行う代務業務を担当していたほか,複数の売店を統括し,上記販売業務のトラブル処理等を行うエリアマネージャー業務に従事することがあったのに対し,有期契約労働者は,上記販売業務に専従していたものであり,両者の職務の内容に一定の相違があった。
(3) 上記販売業務に従事する無期契約労働者は配置転換等を命ぜられる現実の可能性があったのに対し,同業務に従事する有期契約労働者は配置転換等を命ぜられることはなく,両者の職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違があった。
(4) 上記会社においては,全ての無期契約労働者が同一の雇用管理の区分に属するものとして同じ就業規則等により同一の労働条件の適用を受けていたが,上記販売業務に従事する無期契約労働者は,本社の各部署や事業所等に配置され配置転換等を命ぜられることがあった他の多数の無期契約労働者とは職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲を異にしていたところ,関連会社等の再編成の経緯やその職務経験等に照らし,賃金水準を変更したり,他の部署に配置転換等をしたりすることが困難な事情があったことがうかがわれる。
(5) 上記会社は,無期契約労働者へ段階的に職種を変更するための開かれた試験による登用制度を設け,相当数の有期契約労働者を無期契約労働者に登用していた。
(補足意見及び反対意見がある。)
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