事件番号令和1(受)794
事件名地位確認等請求事件
裁判所最高裁判所第一小法廷
裁判年月日令和2年10月15日
裁判種別判決
結果その他
原審裁判所大阪高等裁判所
原審事件番号平成30(ネ)729
原審裁判年月日平成31年1月24日
事案の概要本件は,第1審被告と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して勤務し,又は勤務していた時給制契約社員又は月給制契約社員である第1審原告らが,期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している労働者(以下「正社員」という。)と第1審原告らとの間で,年末年始勤務手当,祝日給,扶養手当,夏期休暇及び冬期休暇(以下「夏期冬期休暇」という。)等に相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反するものであったと主張して,第1審被告に対し,不法行為に基づき,上記相違に係る損害賠償を求めるなどの請求をする事案である。
判示事項1 無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
2 無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
3 無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
裁判要旨1 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。
  (1) 上記年末年始勤務手当は,郵便の業務についての最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている12月29日から翌年1月3日までの期間において,同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものである。
  (2) 上記年末年始勤務手当は,上記無期契約労働者が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。
2 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。
  (1) 上記期間については,上記無期契約労働者に対して特別休暇が与えられており,これは,多くの労働者にとって当該期間が休日とされているという慣行に沿った休暇を設けるという目的によるものであるところ,上記祝日給は,特別休暇が与えられることとされているにもかかわらず最繁忙期であるために当該期間に勤務したことについて,その代償として,通常の勤務に対する賃金に所定の割増しをしたものを支給することとされたものである。
  (2) 上記有期契約労働者は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされるなど,繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれている。
3 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。
  (1) 上記無期契約労働者に対して扶養手当が支給されているのは,当該無期契約労働者の生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものである。
  (2) 上記有期契約労働者は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされており,有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど,相応に継続的な勤務が見込まれている。
事件番号令和1(受)794
事件名地位確認等請求事件
裁判所最高裁判所第一小法廷
裁判年月日令和2年10月15日
裁判種別判決
結果その他
原審裁判所大阪高等裁判所
原審事件番号平成30(ネ)729
原審裁判年月日平成31年1月24日
事案の概要
本件は,第1審被告と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して勤務し,又は勤務していた時給制契約社員又は月給制契約社員である第1審原告らが,期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している労働者(以下「正社員」という。)と第1審原告らとの間で,年末年始勤務手当,祝日給,扶養手当,夏期休暇及び冬期休暇(以下「夏期冬期休暇」という。)等に相違があったことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反するものであったと主張して,第1審被告に対し,不法行為に基づき,上記相違に係る損害賠償を求めるなどの請求をする事案である。
判示事項
1 無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
2 無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
3 無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
裁判要旨
1 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。
  (1) 上記年末年始勤務手当は,郵便の業務についての最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている12月29日から翌年1月3日までの期間において,同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものである。
  (2) 上記年末年始勤務手当は,上記無期契約労働者が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。
2 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。
  (1) 上記期間については,上記無期契約労働者に対して特別休暇が与えられており,これは,多くの労働者にとって当該期間が休日とされているという慣行に沿った休暇を設けるという目的によるものであるところ,上記祝日給は,特別休暇が与えられることとされているにもかかわらず最繁忙期であるために当該期間に勤務したことについて,その代償として,通常の勤務に対する賃金に所定の割増しをしたものを支給することとされたものである。
  (2) 上記有期契約労働者は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされるなど,繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれている。
3 郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で,郵便の業務を担当する月給制契約社員又は時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。
  (1) 上記無期契約労働者に対して扶養手当が支給されているのは,当該無期契約労働者の生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものである。
  (2) 上記有期契約労働者は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされており,有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど,相応に継続的な勤務が見込まれている。
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