事件番号令和2(受)763
事件名不当利得返還請求事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日令和3年3月2日
裁判種別判決
結果破棄自判
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成31(ネ)1777
原審裁判年月日令和元年12月5日
事案の概要本件交付決定には,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「法」という。)7条3項により,交付事業者である被上告人は,「間接交付事業者に対し事業により取得し,又は効用の増加した財産の処分についての承認をしようとするときは,あらかじめ関東農政局長の承認を受けなければならない」との条件(以下「本件交付決定条件」という。)が附されていた。同日までに,栃木県知事(以下「県知事」という。)は間接交付事業者である市に対して平成17年度バイオマスの環づくり事業費補助金として,市長は間接交付事業者であるエコシティに対して宇都宮市バイオマス利活用補助金として,それぞれ本件交付決定と同額の交付決定をした。被上告人は上告人から本件交付決定による補助金が交付された都度,市に対して補助金を交付し,市はその都度,エコシティに対して補助金を交付した。(3) エコシティは,上記の補助金を主要な財源として堆肥化施設を整備し,設置した(以下,この堆肥化施設を「本件施設」という。)。平成18年6月8日,関東農政局長は被上告人に対し,県知事は市に対し,市長はエコシティに対し,それぞれ申請を受けて本件施設を担保に供することを承認した。エコシティは,同年8月10日,本件施設に根抵当権を設定した。(4) エコシティは,平成20年10月,本件施設における操業を停止した。本件施設について,平成21年12月25日,担保不動産競売の申立てがされ,同22年1月20日,同開始決定がされた。本件施設について,平成23年5月13日までに,エコシティは市長に対し,市は県知事に対し,被上告人は関東農政局長に対し,それぞれ財産処分に係る承認の申請をした。同日にされた被上告人による申請(以下「本件申請」という。)に係る申請書には,冒頭に本件申請が法22条に基づくものである旨の記載があり,本件施設の処分区分として「目的外使用(補助事業を中止する場合)」との記載がある。関東農政局長は,同月17日,本件施設の処分価格に係る国庫補助金相当額の納付を条件として,本件申請を承認した(以下,この承認を「本件承認」といい,これに附された上記条件を「本件附款」という。)。県知事は,同月18日,上記の市による申請を承認し,市長は,上記のエコシティによる申請を承認した。本件施設は,同年9月29日,担保不動産競売手続により売却された。(5) 被上告人は,平成24年1月27日付けで,関東農政局長から上記の国庫補助金相当額として1億9659万0956円を納付するよう求められ,同年2月15日,上告人に対し,同金額の納付(以下「本件返納」という。)をした。2 本件は,被上告人が,本件承認は法令上の根拠を欠き,本件附款も法的効力が認められないから,上告人は本件返納により法律上の原因なく1億9659万0956円を利得したとして,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,同額の支払を求める事案である。
判示事項補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとしてされた財産の処分の承認が同法7条3項による条件に基づいてされたものとして適法であるとされた事例
裁判要旨補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとして各省各庁の長から権限の委任を受けた機関により補助事業者等に対してされた補助金相当額の納付を条件とする間接補助事業等により取得された財産の処分の承認は,次の⑴~⑶など判示の事情の下では,補助事業者等は間接補助事業者等に対し事業により取得した財産の処分についての承認をしようとするときはあらかじめ上記機関の承認を受けなければならない旨の同法7条3項による条件に基づいてされたものとして適法である。
⑴ 同法22条に基づく承認は,これを得ることなく補助事業等により取得された財産が処分され,補助事業者等により補助金等の交付の目的に沿って使用されなくなる事態に至ることを防止することを目的とするところ,同法7条3項による上記条件に基づく承認も,これを得ることなく補助金の交付の目的が達成し得なくなる事態に至ることを防止することを目的とする。
⑵ 同法22条に基づく承認を得た上での財産の処分であれば,同法17条1項により補助金等の交付の決定が取り消されることはないのと同様に,同法7条3項による上記条件に基づく承認を得た上での財産の処分も,これにより補助金の交付の決定が取り消されることはない上,同法22条に基づく承認に際しては,補助事業者等において補助金等の全部又は一部に相当する金額を納付する旨の条件を附すことができるのと同様に,同法7条3項による上記条件に基づく承認に際しても,補助事業者等において交付された補助金の範囲内の金額を納付する旨の条件を附すことができる。
⑶ 同法22条に基づくものとして上記の財産の処分の承認をした機関において,仮に同条に基づき当該承認をすることができないという認識であった場合に,同法7条3項による上記条件に基づき承認をしなかったであろうことをうかがわせる事情は見当たらない。
(補足意見がある。)
事件番号令和2(受)763
事件名不当利得返還請求事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日令和3年3月2日
裁判種別判決
結果破棄自判
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成31(ネ)1777
原審裁判年月日令和元年12月5日
事案の概要
本件交付決定には,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「法」という。)7条3項により,交付事業者である被上告人は,「間接交付事業者に対し事業により取得し,又は効用の増加した財産の処分についての承認をしようとするときは,あらかじめ関東農政局長の承認を受けなければならない」との条件(以下「本件交付決定条件」という。)が附されていた。同日までに,栃木県知事(以下「県知事」という。)は間接交付事業者である市に対して平成17年度バイオマスの環づくり事業費補助金として,市長は間接交付事業者であるエコシティに対して宇都宮市バイオマス利活用補助金として,それぞれ本件交付決定と同額の交付決定をした。被上告人は上告人から本件交付決定による補助金が交付された都度,市に対して補助金を交付し,市はその都度,エコシティに対して補助金を交付した。(3) エコシティは,上記の補助金を主要な財源として堆肥化施設を整備し,設置した(以下,この堆肥化施設を「本件施設」という。)。平成18年6月8日,関東農政局長は被上告人に対し,県知事は市に対し,市長はエコシティに対し,それぞれ申請を受けて本件施設を担保に供することを承認した。エコシティは,同年8月10日,本件施設に根抵当権を設定した。(4) エコシティは,平成20年10月,本件施設における操業を停止した。本件施設について,平成21年12月25日,担保不動産競売の申立てがされ,同22年1月20日,同開始決定がされた。本件施設について,平成23年5月13日までに,エコシティは市長に対し,市は県知事に対し,被上告人は関東農政局長に対し,それぞれ財産処分に係る承認の申請をした。同日にされた被上告人による申請(以下「本件申請」という。)に係る申請書には,冒頭に本件申請が法22条に基づくものである旨の記載があり,本件施設の処分区分として「目的外使用(補助事業を中止する場合)」との記載がある。関東農政局長は,同月17日,本件施設の処分価格に係る国庫補助金相当額の納付を条件として,本件申請を承認した(以下,この承認を「本件承認」といい,これに附された上記条件を「本件附款」という。)。県知事は,同月18日,上記の市による申請を承認し,市長は,上記のエコシティによる申請を承認した。本件施設は,同年9月29日,担保不動産競売手続により売却された。(5) 被上告人は,平成24年1月27日付けで,関東農政局長から上記の国庫補助金相当額として1億9659万0956円を納付するよう求められ,同年2月15日,上告人に対し,同金額の納付(以下「本件返納」という。)をした。2 本件は,被上告人が,本件承認は法令上の根拠を欠き,本件附款も法的効力が認められないから,上告人は本件返納により法律上の原因なく1億9659万0956円を利得したとして,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,同額の支払を求める事案である。
判示事項
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとしてされた財産の処分の承認が同法7条3項による条件に基づいてされたものとして適法であるとされた事例
裁判要旨
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとして各省各庁の長から権限の委任を受けた機関により補助事業者等に対してされた補助金相当額の納付を条件とする間接補助事業等により取得された財産の処分の承認は,次の⑴~⑶など判示の事情の下では,補助事業者等は間接補助事業者等に対し事業により取得した財産の処分についての承認をしようとするときはあらかじめ上記機関の承認を受けなければならない旨の同法7条3項による条件に基づいてされたものとして適法である。
⑴ 同法22条に基づく承認は,これを得ることなく補助事業等により取得された財産が処分され,補助事業者等により補助金等の交付の目的に沿って使用されなくなる事態に至ることを防止することを目的とするところ,同法7条3項による上記条件に基づく承認も,これを得ることなく補助金の交付の目的が達成し得なくなる事態に至ることを防止することを目的とする。
⑵ 同法22条に基づく承認を得た上での財産の処分であれば,同法17条1項により補助金等の交付の決定が取り消されることはないのと同様に,同法7条3項による上記条件に基づく承認を得た上での財産の処分も,これにより補助金の交付の決定が取り消されることはない上,同法22条に基づく承認に際しては,補助事業者等において補助金等の全部又は一部に相当する金額を納付する旨の条件を附すことができるのと同様に,同法7条3項による上記条件に基づく承認に際しても,補助事業者等において交付された補助金の範囲内の金額を納付する旨の条件を附すことができる。
⑶ 同法22条に基づくものとして上記の財産の処分の承認をした機関において,仮に同条に基づき当該承認をすることができないという認識であった場合に,同法7条3項による上記条件に基づき承認をしなかったであろうことをうかがわせる事情は見当たらない。
(補足意見がある。)
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