事件番号令和2(ウ)4
事件名保全異議申立事件
裁判所広島高等裁判所 第4部
裁判年月日令和3年3月18日
結果その他
原審裁判所山口地方裁判所 岩国支部
原審事件番号平成29(ヨ)5
原審結果却下
事案の概要本件は,被申立人ら(債権者ら。以下「債権者ら」という。)が,申立人(債務者。以下「債務者」という。)の設置・運用する発電用原子炉施設である伊方発電所(以下「本件発電所」という。)3号機の原子炉(以下「本件原子炉」という。)及びその附属施設(本件原子炉と併せて,以下「本件原子炉施設」と総称する。)は,地震,火山の噴火等に対する安全性に欠けるところがあるため,その運転により重大な事故が発生し,これにより大量の放射性物質が放出されて,債権者らの生命,身体等の重大な法益に対する侵害が生ずる具体的危険があるとして,人格権に基づく妨害予防請求権を被保全権利として,本件原子炉の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案である。
判示事項の要旨発電用原子炉施設である伊方発電所(本件発電所)の周辺に住む債権者らが,人格権に基づいて本件発電所3号機の原子炉(本件原子炉)の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案において,次のとおり判断して,本件原子炉の運転の差止めを命じた抗告審決定を取り消し,債権者らの抗告を棄却した事例。
1 現在の科学的知見からして,本件原子炉の運転期間中にその安全性に影響を及ぼす大規模自然災害の発生する可能性が具体的に高く,これによって債権者らの生命,身体又は健康が侵害される具体的危険があると認められなければ,本件原子炉の運転差止めを命じることはできない。この疎明責任は債権者らが負うべきであり,福島事故による影響の甚大性等を考慮しても,独自の科学的知見を有しない裁判所において,本件原子炉の存在及び債権者らの居住状況から直ちに債権者らの生命等が侵害される具体的危険があると事実上推認するなどということは相当でない。
2 債務者が行った海上音波探査の結果,本件発電所敷地の2km以内に活断層はないとした債務者の評価に不合理な点があるとは認められない。また,債権者らが指摘するSPGAモデル及び「不均質モデル」を,将来発生する地震動の予測に用いることの当否は明らかでなく,債務者による基準地震動の算定が不合理であるとは認められない。
3 阿蘇が本件原子炉の運転期間中その安全性に影響を及ぼすような規模の噴火を引き起こす具体的危険の有無については,専門家の間でもそれぞれの分析結果等に基づいて意見が分かれている。このような現在の科学的知見からして,阿蘇が上記のような噴火を引き起こす可能性が具体的に高いと認めることはできない。
4 債権者らのその余の主張を検討しても,上記具体的危険が疎明されたとは認められない。
事件番号令和2(ウ)4
事件名保全異議申立事件
裁判所広島高等裁判所 第4部
裁判年月日令和3年3月18日
結果その他
原審裁判所山口地方裁判所 岩国支部
原審事件番号平成29(ヨ)5
原審結果却下
事案の概要
本件は,被申立人ら(債権者ら。以下「債権者ら」という。)が,申立人(債務者。以下「債務者」という。)の設置・運用する発電用原子炉施設である伊方発電所(以下「本件発電所」という。)3号機の原子炉(以下「本件原子炉」という。)及びその附属施設(本件原子炉と併せて,以下「本件原子炉施設」と総称する。)は,地震,火山の噴火等に対する安全性に欠けるところがあるため,その運転により重大な事故が発生し,これにより大量の放射性物質が放出されて,債権者らの生命,身体等の重大な法益に対する侵害が生ずる具体的危険があるとして,人格権に基づく妨害予防請求権を被保全権利として,本件原子炉の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案である。
判示事項の要旨
発電用原子炉施設である伊方発電所(本件発電所)の周辺に住む債権者らが,人格権に基づいて本件発電所3号機の原子炉(本件原子炉)の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案において,次のとおり判断して,本件原子炉の運転の差止めを命じた抗告審決定を取り消し,債権者らの抗告を棄却した事例。
1 現在の科学的知見からして,本件原子炉の運転期間中にその安全性に影響を及ぼす大規模自然災害の発生する可能性が具体的に高く,これによって債権者らの生命,身体又は健康が侵害される具体的危険があると認められなければ,本件原子炉の運転差止めを命じることはできない。この疎明責任は債権者らが負うべきであり,福島事故による影響の甚大性等を考慮しても,独自の科学的知見を有しない裁判所において,本件原子炉の存在及び債権者らの居住状況から直ちに債権者らの生命等が侵害される具体的危険があると事実上推認するなどということは相当でない。
2 債務者が行った海上音波探査の結果,本件発電所敷地の2km以内に活断層はないとした債務者の評価に不合理な点があるとは認められない。また,債権者らが指摘するSPGAモデル及び「不均質モデル」を,将来発生する地震動の予測に用いることの当否は明らかでなく,債務者による基準地震動の算定が不合理であるとは認められない。
3 阿蘇が本件原子炉の運転期間中その安全性に影響を及ぼすような規模の噴火を引き起こす具体的危険の有無については,専門家の間でもそれぞれの分析結果等に基づいて意見が分かれている。このような現在の科学的知見からして,阿蘇が上記のような噴火を引き起こす可能性が具体的に高いと認めることはできない。
4 債権者らのその余の主張を検討しても,上記具体的危険が疎明されたとは認められない。
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