事件番号平成31(わ)418
事件名業務上過失傷害
裁判所京都地方裁判所 第1刑事部
裁判年月日令和3年3月8日
事案の概要⑴ 被告人は,京都市a区b町に本社を置き,軌道事業等を業とするA社の鉄道部運輸課長及び運転管理者として,同市a区c町所在の同社d事務所に勤務し,同事務所において,同社の運輸営業等に関する事項を統括し,電車の運行等を管理する業務に従事していた。
⑵ A社は,平成30年3月12日,d事務所に電子連動装置(同事務所内から同社e線f駅等の出発信号機並びに同駅直近の同e線f1号踏切〔以下「本件踏切」ともいう。〕の警報機,遮断機〔以下,両機を併せて「警報機等」ともいう。〕及び同遮断機による遮断中に点灯する同踏切の踏切動作反応灯〔以下「本件踏切動作反応灯」ともいい,これと警報機等とを併せて「本件踏切動作反応灯等」ともいう。〕を人の操作によって遠隔操作することを可能にする装置。以下「本件電子連動装置」ともいう。)を設置した。これに伴い,同装置による人の操作によりf駅の出発信号機及び本件踏切動作反応灯等を支障なく作動させることができるか否かを試すため,同年7月17日,同市g区h町所在の同駅及び同区h町所在の本件踏切において「駅扱い訓練」(同駅の出発信号機及び本件踏切動作反応灯等を通常時の自動列車運行制御装置による制御からd事務所設置の本件電子連動装置を介した人の操作による制御に変更して営業中の電車を運行する訓練。以下,同日の同駅及び同踏切における駅扱い訓練を「本件訓練」ともいう。)を実施した。被告人は,運転指令者として,本件訓練の手順及び参加者の役割等の計画立案並びに本件訓練参加者に対する同計画実施のための指令をするなどして本件訓練を統括して実施する業務に従事していた。
⑶ 被告人は,同日午後1時11分頃,本件訓練を行うに当たり,d事務所内からは本件踏切動作反応灯等が作動しているか否かを視認することができないため,もしこれらが作動しない場合には,本件電子連動装置を操作する運転整理担当者がこれに気付かず,f駅からの電車の発進を中止させる措置も,本件踏切に向かって進行している電車を停止させる措置もとることのないまま,電車を無遮断状態の同踏切に進入させる事態があり得ることが予測できた。そうであるから,本件踏切動作反応灯等の作動状況を確認させるための従業員を同踏切付近に配置し,あるいは,同駅駅長らに対し,これらの作動状況を確認するよう指示し,これらが作動していることを確認できた場合に限り,同駅長において,同駅から発進するワンマンカー電車の運転士に対し出発指示合図を行うようにさせるなどし,無遮断状態の同踏切に電車が進入することを防止する措置を講じた上で本件訓練を実施すべき業務上の注意義務があった。しかるに,この注意義務を怠り,本件訓練以前に実施された同種訓練では踏切動作反応灯等が作動しなかったことがなかったため,本件訓練においても本件踏切動作反応灯等が作動するものと軽信し,前記のような無遮断状態の本件踏切に電車が進入することを防止する措置を講じないまま漫然と本件訓練を実施した過失がある。
⑷ 被告人は,この過失により,運転整理担当者Bをして本件電子連動装置を操作させた結果,同装置の本件踏切動作反応灯等の作動を停止させるシステムを実行させ,これが原因で本件踏切動作反応灯等が作動していないのに,電車運転士Cにおいて,ワンマンカー電車(以下「本件電車」ともいう。)を運転し,f駅を発進して本件踏切に向け進行するに当たり,本件踏切動作反応灯等の作動状況を確認し,同踏切の安全を確認しながら,同駅を発進して適宜速度を調節しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,本件踏切動作反応灯等の作動状況を確認せず,同踏切の安全確認不十分のまま,漫然と同駅を発進して適宜速度を調節することなく時速約25キロメートルで進行した過失との競合により,折から,Cにおいて,本件踏切動作反応灯等が作動していないため無遮断状態の同踏切に進入してきたD(当時73歳)運転の普通乗用自動車を前方約24.1メートルの地点に認め,非常制動措置を講じたが間に合わず,同車右側部に本件電車右前部を衝突させるなどし,よって,同人に加療約半年間を要する第3腰椎圧迫骨折等の傷害を負わせた(以下,この事故を「本件事故」ともいう。)
事件番号平成31(わ)418
事件名業務上過失傷害
裁判所京都地方裁判所 第1刑事部
裁判年月日令和3年3月8日
事案の概要
⑴ 被告人は,京都市a区b町に本社を置き,軌道事業等を業とするA社の鉄道部運輸課長及び運転管理者として,同市a区c町所在の同社d事務所に勤務し,同事務所において,同社の運輸営業等に関する事項を統括し,電車の運行等を管理する業務に従事していた。
⑵ A社は,平成30年3月12日,d事務所に電子連動装置(同事務所内から同社e線f駅等の出発信号機並びに同駅直近の同e線f1号踏切〔以下「本件踏切」ともいう。〕の警報機,遮断機〔以下,両機を併せて「警報機等」ともいう。〕及び同遮断機による遮断中に点灯する同踏切の踏切動作反応灯〔以下「本件踏切動作反応灯」ともいい,これと警報機等とを併せて「本件踏切動作反応灯等」ともいう。〕を人の操作によって遠隔操作することを可能にする装置。以下「本件電子連動装置」ともいう。)を設置した。これに伴い,同装置による人の操作によりf駅の出発信号機及び本件踏切動作反応灯等を支障なく作動させることができるか否かを試すため,同年7月17日,同市g区h町所在の同駅及び同区h町所在の本件踏切において「駅扱い訓練」(同駅の出発信号機及び本件踏切動作反応灯等を通常時の自動列車運行制御装置による制御からd事務所設置の本件電子連動装置を介した人の操作による制御に変更して営業中の電車を運行する訓練。以下,同日の同駅及び同踏切における駅扱い訓練を「本件訓練」ともいう。)を実施した。被告人は,運転指令者として,本件訓練の手順及び参加者の役割等の計画立案並びに本件訓練参加者に対する同計画実施のための指令をするなどして本件訓練を統括して実施する業務に従事していた。
⑶ 被告人は,同日午後1時11分頃,本件訓練を行うに当たり,d事務所内からは本件踏切動作反応灯等が作動しているか否かを視認することができないため,もしこれらが作動しない場合には,本件電子連動装置を操作する運転整理担当者がこれに気付かず,f駅からの電車の発進を中止させる措置も,本件踏切に向かって進行している電車を停止させる措置もとることのないまま,電車を無遮断状態の同踏切に進入させる事態があり得ることが予測できた。そうであるから,本件踏切動作反応灯等の作動状況を確認させるための従業員を同踏切付近に配置し,あるいは,同駅駅長らに対し,これらの作動状況を確認するよう指示し,これらが作動していることを確認できた場合に限り,同駅長において,同駅から発進するワンマンカー電車の運転士に対し出発指示合図を行うようにさせるなどし,無遮断状態の同踏切に電車が進入することを防止する措置を講じた上で本件訓練を実施すべき業務上の注意義務があった。しかるに,この注意義務を怠り,本件訓練以前に実施された同種訓練では踏切動作反応灯等が作動しなかったことがなかったため,本件訓練においても本件踏切動作反応灯等が作動するものと軽信し,前記のような無遮断状態の本件踏切に電車が進入することを防止する措置を講じないまま漫然と本件訓練を実施した過失がある。
⑷ 被告人は,この過失により,運転整理担当者Bをして本件電子連動装置を操作させた結果,同装置の本件踏切動作反応灯等の作動を停止させるシステムを実行させ,これが原因で本件踏切動作反応灯等が作動していないのに,電車運転士Cにおいて,ワンマンカー電車(以下「本件電車」ともいう。)を運転し,f駅を発進して本件踏切に向け進行するに当たり,本件踏切動作反応灯等の作動状況を確認し,同踏切の安全を確認しながら,同駅を発進して適宜速度を調節しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,本件踏切動作反応灯等の作動状況を確認せず,同踏切の安全確認不十分のまま,漫然と同駅を発進して適宜速度を調節することなく時速約25キロメートルで進行した過失との競合により,折から,Cにおいて,本件踏切動作反応灯等が作動していないため無遮断状態の同踏切に進入してきたD(当時73歳)運転の普通乗用自動車を前方約24.1メートルの地点に認め,非常制動措置を講じたが間に合わず,同車右側部に本件電車右前部を衝突させるなどし,よって,同人に加療約半年間を要する第3腰椎圧迫骨折等の傷害を負わせた(以下,この事故を「本件事故」ともいう。)
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