事件番号平成30(行ウ)182
事件名怠る事実の違法確認等請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日令和3年1月20日
事案の概要(1) 株式会社アルト建築設計事務所(以下「アルト社」という。)及び補助参加人らは,平成19年,平成22年,平成25年及び平成28年の各年度に,それぞれ,高槻市との業務委託契約に基づき,高槻市立の小中学校等の施設の点検業務をし,業務委託料の支払を受けた。
平成30年6月18日に発生した大阪府北部を震源とする地震(以下「本件地震」という。)により,高槻市立寿栄小学校(以下「本件小学校」という。)のブロック塀(以下「本件ブロック塀」という。)が倒壊し,道路上を歩行していた小学4年生の児童(以下「本件児童」という。)が下敷きとなって死亡する事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
高槻市は,本件事故に関して本件児童の遺族と和解契約を締結し,解決金1億0029万8614円(以下「本件解決金」という。)を支払った。
(2) 先行事件は,高槻市の住民である原告が,①点検業務を受託した補助参加人らについて,本件ブロック塀の点検を怠った債務不履行責任を負う,②高槻市の職員であるA及びB(以下,併せて「本件各検査職員」という。)について,上記点検業務の完了検査(地方自治法234条の2第1項)をする際に,重大な過失により点検項目の漏れを確認しなかったという違法があり,平成29年法律第54号による改正前の地方自治法243条の2第1項(以下「改正前地方自治法243条の2第1項」という。)所定の損害賠償責任を負う,③高槻市教育委員会教育長であったCについて,上記違法な検査を防止するための体制を構築する義務を怠った不法行為責任を負うと主張して,高槻市の執行機関である被告が,上記①ないし③の各責任を負う者に対し業務委託料相当額の損害賠償及びこれに対する先行事件の訴状送達の日の翌日である平成30年12月22日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求を怠ることが違法であることの確認を求める事案である。
後行事件は,高槻市の住民である原告が,①点検業務を受託した補助参加人ら及びアルト社について,本件ブロック塀の点検を怠った債務不履行又は不法行為責任を負う,②本件各検査職員について,上記点検業務の完了検査をする際に,重大な過失により点検項目の漏れを確認しなかったという違法があり,改正前地方自治法243条の2第1項所定の損害賠償責任を負う,③Cについて,上記違法な検査を防止するための体制を構築する義務を怠った不法行為責任を負う,④高槻市教育委員会事務局教育管理部学務課(以下「学務課」という。)の職員であるD及びE(以下,併せて「本件職員ら」という。)について,本件ブロック塀の点検をした際に注意義務を怠った不法行為責任があり,本件解決金相当額につき国家賠償法(以下「国賠法」という。)2条2項に基づき求償される責任を負うと主張して,高槻市の執行機関である被告が,上記①ないし④の各責任を負う者に対し本件解決金相当額の損害賠償及びこれに対する後行事件の訴状送達の日の翌日である平成31年4月27日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求を怠ることが違法であることの確認を求める事案である。
判示事項内部構造の不良が主たる原因で地震により倒壊した市立小学校のブロック塀(高さ約1.9メートルの擁壁の上にブロック8段積み(高さ約1.6メートル)で設置されたもの)について,従前に建築基準法所定の定期の点検を受託していた業者及び校長の依頼により当該ブロック塀の点検をした職員に対し,市長が損害賠償請求を怠ることが違法であることの確認を求める住民訴訟において,上記業者及び職員が,当該ブロック塀の耐震対策状況の点検をすべき義務を負っていたとはいえないとされた事例
裁判要旨定期点検の受託業者の業務内容及び職員が校長から依頼された点検内容が,損傷,腐食その他の劣化の状況を目視観察や打診等の方法により点検することであったこと,当該ブロック塀の構造が建築基準法令に適合しないことが一義的に明らかであったといえるものではないことといった判示の事情の下においては,上記業者及び職員が,当該ブロック塀につき建築基準法令に適合しているか否かなどの耐震対策状況の点検をすべき義務を負っていたとはいえない。
事件番号平成30(行ウ)182
事件名怠る事実の違法確認等請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日令和3年1月20日
事案の概要
(1) 株式会社アルト建築設計事務所(以下「アルト社」という。)及び補助参加人らは,平成19年,平成22年,平成25年及び平成28年の各年度に,それぞれ,高槻市との業務委託契約に基づき,高槻市立の小中学校等の施設の点検業務をし,業務委託料の支払を受けた。
平成30年6月18日に発生した大阪府北部を震源とする地震(以下「本件地震」という。)により,高槻市立寿栄小学校(以下「本件小学校」という。)のブロック塀(以下「本件ブロック塀」という。)が倒壊し,道路上を歩行していた小学4年生の児童(以下「本件児童」という。)が下敷きとなって死亡する事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
高槻市は,本件事故に関して本件児童の遺族と和解契約を締結し,解決金1億0029万8614円(以下「本件解決金」という。)を支払った。
(2) 先行事件は,高槻市の住民である原告が,①点検業務を受託した補助参加人らについて,本件ブロック塀の点検を怠った債務不履行責任を負う,②高槻市の職員であるA及びB(以下,併せて「本件各検査職員」という。)について,上記点検業務の完了検査(地方自治法234条の2第1項)をする際に,重大な過失により点検項目の漏れを確認しなかったという違法があり,平成29年法律第54号による改正前の地方自治法243条の2第1項(以下「改正前地方自治法243条の2第1項」という。)所定の損害賠償責任を負う,③高槻市教育委員会教育長であったCについて,上記違法な検査を防止するための体制を構築する義務を怠った不法行為責任を負うと主張して,高槻市の執行機関である被告が,上記①ないし③の各責任を負う者に対し業務委託料相当額の損害賠償及びこれに対する先行事件の訴状送達の日の翌日である平成30年12月22日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求を怠ることが違法であることの確認を求める事案である。
後行事件は,高槻市の住民である原告が,①点検業務を受託した補助参加人ら及びアルト社について,本件ブロック塀の点検を怠った債務不履行又は不法行為責任を負う,②本件各検査職員について,上記点検業務の完了検査をする際に,重大な過失により点検項目の漏れを確認しなかったという違法があり,改正前地方自治法243条の2第1項所定の損害賠償責任を負う,③Cについて,上記違法な検査を防止するための体制を構築する義務を怠った不法行為責任を負う,④高槻市教育委員会事務局教育管理部学務課(以下「学務課」という。)の職員であるD及びE(以下,併せて「本件職員ら」という。)について,本件ブロック塀の点検をした際に注意義務を怠った不法行為責任があり,本件解決金相当額につき国家賠償法(以下「国賠法」という。)2条2項に基づき求償される責任を負うと主張して,高槻市の執行機関である被告が,上記①ないし④の各責任を負う者に対し本件解決金相当額の損害賠償及びこれに対する後行事件の訴状送達の日の翌日である平成31年4月27日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求を怠ることが違法であることの確認を求める事案である。
判示事項
内部構造の不良が主たる原因で地震により倒壊した市立小学校のブロック塀(高さ約1.9メートルの擁壁の上にブロック8段積み(高さ約1.6メートル)で設置されたもの)について,従前に建築基準法所定の定期の点検を受託していた業者及び校長の依頼により当該ブロック塀の点検をした職員に対し,市長が損害賠償請求を怠ることが違法であることの確認を求める住民訴訟において,上記業者及び職員が,当該ブロック塀の耐震対策状況の点検をすべき義務を負っていたとはいえないとされた事例
裁判要旨
定期点検の受託業者の業務内容及び職員が校長から依頼された点検内容が,損傷,腐食その他の劣化の状況を目視観察や打診等の方法により点検することであったこと,当該ブロック塀の構造が建築基準法令に適合しないことが一義的に明らかであったといえるものではないことといった判示の事情の下においては,上記業者及び職員が,当該ブロック塀につき建築基準法令に適合しているか否かなどの耐震対策状況の点検をすべき義務を負っていたとはいえない。
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