事件番号令和2(受)205
事件名報酬等請求本訴,不当利得返還請求反訴,民訴法260条2項の申立て事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日令和3年6月29日
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成31(ネ)52
原審裁判年月日令和元年9月26日
事案の概要1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
被上告人は,平成28年10月頃,Aと共に,不動産取引に係る事業を行う旨の計画を立てた。
上記計画においては,被上告人は,自らを専任の宅地建物取引士とする会社での勤務を続けつつ,その人脈等を活用して,新たに設立する会社において不動産取引を継続的に行うことが予定されていた。
その後,宅地建物取引士の資格を有するyが上記計画に加わり,同人を新たに設立する会社の専任の宅地建物取引士とすることになった。
yは,平成29年1月,上記計画に従って上告人を設立してその代表取締役に就任し,上告人は,同年2月,yを専任の宅地建物取引士として宅地建物取引業の免許を受けた。
被上告人は,平成29年2月頃までに,不動産仲介業者である株式会社Bから,C株式会社の所有する土地建物(以下「本件不動産」という。)の紹介を受けた。被上告人は,上記計画に基づく事業の一環として本件不動産に係る取引を行うことにしたが,yに対する不信感から,本件不動産に係る取引に限って上告人の名義を使用し,その後は上告人及びyを上記事業に関与させないことにしようと考え,Aを通じてyと協議した。その結果,同年3月7日,被上告人と上告人との間で,要旨次のとおりの合意(以下「本件合意」という。)が成立した。
ア 本件不動産の購入及び売却については上告人の名義を用いるが,被上告人が売却先を選定した上で売買に必要な一切の事務を行い,本件不動産の売却に伴って生ずる責任も被上告人が負う。
イ 本件不動産の売却代金は被上告人が取得し,その中から,本件不動産の購入代金及び費用等を賄い,上告人に対して名義貸し料として300万円を分配する。
上告人は,本件不動産の売却先から売却代金の送金を受け,同売却代金から上記購入代金,費用等及び名義貸し料を控除した残額を被上告人に対して支払う。
ウ 本件不動産に係る取引の終了後,被上告人と上告人は共同して不動産取引を行わない。
本件不動産については,平成29年3月,Cを売主,上告人を買主とし,代金を1億3000万円とする売買契約が締結され,同年4月,上告人を売主,Dを買主とし,代金を1億6200万円とする売買契約が締結された。これらの売買契約については,被上告人が売却先の選定,Bとのやり取り,契約書案及び重要事項説明書案の作成等を行った。
被上告人は,平成29年4月26日,上告人に対し,本件不動産の売却代金からその購入代金,費用等及び名義貸し料を控除した残額が2319万円余りとなるとして,同売却代金の送金を受け次第,本件合意に基づき同額を支払うよう求めた。
上告人は,平成29年4月27日,上記売却代金の送金を受けたが,自らの取り分が300万円とされたことなどに納得していないとして上記の求めに応じず,上記計画に基づく事業への関与の継続を希望するなどしたものの,同年5月,被上告人に対し,本件合意に基づく支払の一部として1000万円を支払った。
2 本件本訴は,被上告人が,上告人に対し,本件合意に基づいて被上告人に支払われるべき金員の残額として1319万円余りの支払を求めるなどするものであり,本件反訴は,上告人が,被上告人に対する1000万円の支払は法律上の原因のないものであったと主張して,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求めるものである。
3 原審は,前記事実関係等の下において,本件合意の効力を否定すべき事情はなく,本件合意の効力が認められると判断して,被上告人の本訴請求を認容し,上告人の反訴請求を棄却すべきものとした。
判示事項宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意の効力
裁判要旨宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効である。
事件番号令和2(受)205
事件名報酬等請求本訴,不当利得返還請求反訴,民訴法260条2項の申立て事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日令和3年6月29日
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号平成31(ネ)52
原審裁判年月日令和元年9月26日
事案の概要
1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
被上告人は,平成28年10月頃,Aと共に,不動産取引に係る事業を行う旨の計画を立てた。
上記計画においては,被上告人は,自らを専任の宅地建物取引士とする会社での勤務を続けつつ,その人脈等を活用して,新たに設立する会社において不動産取引を継続的に行うことが予定されていた。
その後,宅地建物取引士の資格を有するyが上記計画に加わり,同人を新たに設立する会社の専任の宅地建物取引士とすることになった。
yは,平成29年1月,上記計画に従って上告人を設立してその代表取締役に就任し,上告人は,同年2月,yを専任の宅地建物取引士として宅地建物取引業の免許を受けた。
被上告人は,平成29年2月頃までに,不動産仲介業者である株式会社Bから,C株式会社の所有する土地建物(以下「本件不動産」という。)の紹介を受けた。被上告人は,上記計画に基づく事業の一環として本件不動産に係る取引を行うことにしたが,yに対する不信感から,本件不動産に係る取引に限って上告人の名義を使用し,その後は上告人及びyを上記事業に関与させないことにしようと考え,Aを通じてyと協議した。その結果,同年3月7日,被上告人と上告人との間で,要旨次のとおりの合意(以下「本件合意」という。)が成立した。
ア 本件不動産の購入及び売却については上告人の名義を用いるが,被上告人が売却先を選定した上で売買に必要な一切の事務を行い,本件不動産の売却に伴って生ずる責任も被上告人が負う。
イ 本件不動産の売却代金は被上告人が取得し,その中から,本件不動産の購入代金及び費用等を賄い,上告人に対して名義貸し料として300万円を分配する。
上告人は,本件不動産の売却先から売却代金の送金を受け,同売却代金から上記購入代金,費用等及び名義貸し料を控除した残額を被上告人に対して支払う。
ウ 本件不動産に係る取引の終了後,被上告人と上告人は共同して不動産取引を行わない。
本件不動産については,平成29年3月,Cを売主,上告人を買主とし,代金を1億3000万円とする売買契約が締結され,同年4月,上告人を売主,Dを買主とし,代金を1億6200万円とする売買契約が締結された。これらの売買契約については,被上告人が売却先の選定,Bとのやり取り,契約書案及び重要事項説明書案の作成等を行った。
被上告人は,平成29年4月26日,上告人に対し,本件不動産の売却代金からその購入代金,費用等及び名義貸し料を控除した残額が2319万円余りとなるとして,同売却代金の送金を受け次第,本件合意に基づき同額を支払うよう求めた。
上告人は,平成29年4月27日,上記売却代金の送金を受けたが,自らの取り分が300万円とされたことなどに納得していないとして上記の求めに応じず,上記計画に基づく事業への関与の継続を希望するなどしたものの,同年5月,被上告人に対し,本件合意に基づく支払の一部として1000万円を支払った。
2 本件本訴は,被上告人が,上告人に対し,本件合意に基づいて被上告人に支払われるべき金員の残額として1319万円余りの支払を求めるなどするものであり,本件反訴は,上告人が,被上告人に対する1000万円の支払は法律上の原因のないものであったと主張して,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求めるものである。
3 原審は,前記事実関係等の下において,本件合意の効力を否定すべき事情はなく,本件合意の効力が認められると判断して,被上告人の本訴請求を認容し,上告人の反訴請求を棄却すべきものとした。
判示事項
宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意の効力
裁判要旨
宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効である。
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