事件番号令和2(あ)1763
事件名覚醒剤取締法違反,大麻取締法違反,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律違反被告事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日令和3年7月30日
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号令和2(う)835
原審裁判年月日令和2年11月12日
事案の概要平成30年3月30日午後4時41分頃,警察官は,職務質問を行うため,自動車(以下「本件車両」という。)を運転中の被告人に対して停止を求め,本件車両は道路左端(以下,同所及びその付近を「本件現場」という。)に停止した。警察官は,本件車両の運転席ドアを開け,被告人に対し,運転免許証の提示に応じるよう説得した。
警察官は,同日午後4時48分頃,本件車両の運転席ドアポケットに,中身の入っていないチャック付きビニール袋の束(以下「本件ビニール袋」という。)がある旨を被告人に告げた。
その後,運転免許証の提示に応じた被告人に覚醒剤取締法違反の犯罪歴が多数あることなどが判明し,被告人が任意の採尿や所持品検査に応じなかったことから,警察官は,同日午後5時8分頃,令状請求の準備に取り掛かることとした。
警察官は,同日午後7時頃,覚醒剤の所持及び自己使用の各被疑事実により,本件車両等に対する捜索差押許可状及び被告人の尿を採取するための捜索差押許可状(以下「強制採尿令状」という。)を請求した。その際の疎明資料には,本件車両の運転席ドアポケットに本件ビニール袋が入っていることを確認した旨記載された取扱状況報告書,同ドアポケットに本件ビニール袋がある状況を撮影した写真が添付された写真撮影報告書が含まれていた。警察官は,同日午後11時4分頃,上記各令状の発付を受け,本件現場に向かった。
一方,本件現場では,警察官が,本件車両を取り囲み,引き続き被告人に所持品検査等に応じるよう説得していた。被告人は,再三にわたり,警察官に対して帰りたい旨の意思やそのために本件車両のドアや窓を閉めさせてほしいことを伝え,その後,弁護士の助言を求めて電話をかけたり,帰りたい旨述べて本件現場を立ち去ろうとしたりしたが,警察官は,被告人を取り囲み,被告人の動きに応じてその身体に接触するなどして立ち去りを制止した。
警察官は,同日午後11時25分頃,本件車両等に対する捜索差押許可状に基づき捜索差押えに着手し,覚醒剤を発見して被告人を覚醒剤所持の現行犯人として逮捕し,逮捕に伴う捜索差押えも実施し,これらの手続により本件車両から発見した本件薬物を差し押さえた。
被告人は,警察署に引致され,同月31日午前4時42分頃まで断続的に取調べを受ける中で,警察官から,強制採尿令状が出ている旨を告げられて,同日午前4時48分頃,自ら採取した尿を任意提出した。
判示事項違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
裁判要旨警察官が,被告人の自動車内にチャック付きビニール袋を確認した旨の疎明資料を作成して同車に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求して上記各令状の発付を受け,同車内から覚醒剤等の薬物を差し押さえ,被告人から尿の任意提出を受けたなどの本件の事実経過(判文参照)の下では,同薬物並びに同薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書の証拠能力の判断に当たり,警察官が上記ビニール袋は同車内になかったのに上記疎明資料を作成して上記各令状を請求した事実の存否を確定せず,その存否を前提に上記各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断しないまま,証拠能力が否定されないとした原判決は,法令の解釈適用を誤った違法があり,刑訴法411条1号により破棄を免れない。
(補足意見がある。)
事件番号令和2(あ)1763
事件名覚醒剤取締法違反,大麻取締法違反,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律違反被告事件
裁判所最高裁判所第三小法廷
裁判年月日令和3年7月30日
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号令和2(う)835
原審裁判年月日令和2年11月12日
事案の概要
平成30年3月30日午後4時41分頃,警察官は,職務質問を行うため,自動車(以下「本件車両」という。)を運転中の被告人に対して停止を求め,本件車両は道路左端(以下,同所及びその付近を「本件現場」という。)に停止した。警察官は,本件車両の運転席ドアを開け,被告人に対し,運転免許証の提示に応じるよう説得した。
警察官は,同日午後4時48分頃,本件車両の運転席ドアポケットに,中身の入っていないチャック付きビニール袋の束(以下「本件ビニール袋」という。)がある旨を被告人に告げた。
その後,運転免許証の提示に応じた被告人に覚醒剤取締法違反の犯罪歴が多数あることなどが判明し,被告人が任意の採尿や所持品検査に応じなかったことから,警察官は,同日午後5時8分頃,令状請求の準備に取り掛かることとした。
警察官は,同日午後7時頃,覚醒剤の所持及び自己使用の各被疑事実により,本件車両等に対する捜索差押許可状及び被告人の尿を採取するための捜索差押許可状(以下「強制採尿令状」という。)を請求した。その際の疎明資料には,本件車両の運転席ドアポケットに本件ビニール袋が入っていることを確認した旨記載された取扱状況報告書,同ドアポケットに本件ビニール袋がある状況を撮影した写真が添付された写真撮影報告書が含まれていた。警察官は,同日午後11時4分頃,上記各令状の発付を受け,本件現場に向かった。
一方,本件現場では,警察官が,本件車両を取り囲み,引き続き被告人に所持品検査等に応じるよう説得していた。被告人は,再三にわたり,警察官に対して帰りたい旨の意思やそのために本件車両のドアや窓を閉めさせてほしいことを伝え,その後,弁護士の助言を求めて電話をかけたり,帰りたい旨述べて本件現場を立ち去ろうとしたりしたが,警察官は,被告人を取り囲み,被告人の動きに応じてその身体に接触するなどして立ち去りを制止した。
警察官は,同日午後11時25分頃,本件車両等に対する捜索差押許可状に基づき捜索差押えに着手し,覚醒剤を発見して被告人を覚醒剤所持の現行犯人として逮捕し,逮捕に伴う捜索差押えも実施し,これらの手続により本件車両から発見した本件薬物を差し押さえた。
被告人は,警察署に引致され,同月31日午前4時42分頃まで断続的に取調べを受ける中で,警察官から,強制採尿令状が出ている旨を告げられて,同日午前4時48分頃,自ら採取した尿を任意提出した。
判示事項
違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
裁判要旨
警察官が,被告人の自動車内にチャック付きビニール袋を確認した旨の疎明資料を作成して同車に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求して上記各令状の発付を受け,同車内から覚醒剤等の薬物を差し押さえ,被告人から尿の任意提出を受けたなどの本件の事実経過(判文参照)の下では,同薬物並びに同薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書の証拠能力の判断に当たり,警察官が上記ビニール袋は同車内になかったのに上記疎明資料を作成して上記各令状を請求した事実の存否を確定せず,その存否を前提に上記各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断しないまま,証拠能力が否定されないとした原判決は,法令の解釈適用を誤った違法があり,刑訴法411条1号により破棄を免れない。
(補足意見がある。)
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