事件番号平成30(行ウ)392
事件名憲法53条違憲国家賠償等請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日令和3年3月24日
事案の概要本件は,本件召集要求をした参議院議員の1人である原告が,安倍内閣がした上記の臨時会の召集の決定又は安倍内閣が少なくとも92日間にわたって本件召集要求に対応する臨時会の召集を決定しなかったこと(以下,「本件不作為」といい,上記の臨時会の召集の決定と総称して「本件不作為等」という。)が憲法53条後段に違反するものであるとして,原告が,次に,参議院の総議員の4分の1以上の1人として,連名で,議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に,主位的には,内閣が,20日以内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義務を負うことの,予備的には,原告が,20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの各確認を求める(以下,本件訴えのうち上記の各確認を求める部分を「本件確認訴訟部分」という。)とともに,本件不作為等により,臨時会の召集の決定を要求する権能だけではなく参議院議員として有する諸権能も長期間にわたり行使することができなかったという損害を受け,それを償うに足りる金額は100万円を下らないとして,国家賠償法1条1項に基づき,上記の100万円の一部である1万円及びこれに対する安倍内閣が本件各要求書を受理した日(平成29年6月22日)から20日を経過した後の日である同年7月13日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下,本件訴えのうち国家賠償法に基づく損害賠償を求める部分を「本件国賠請求部分」という。)事案である。
判示事項1 国会議員である原告が提起した内閣の義務又は原告が有する公法上の地位の確認を求める旨の訴えが,法律上の争訟には該当しないものとして,不適法とされた事例
2 国会議員である原告が内閣によって侵害されたと主張した権限が,国家賠償法1条1項の適用上保護される権利又は利益には該当しないとされた事例
裁判要旨1 原告は,内閣という国の機関を主体とする作為又は不作為により,原告が参議院議員という国の機関としての地位に基づいて有する臨時会の召集の決定を要求する権限を侵害されたとして,その保護救済を求める趣旨で,内閣が当該権限に基づく行為に対応して一定の期間内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義務を負うこと又は原告が当該権限に基づいて内閣が上記の決定をすることを享受することができる地位にあることの確認を求める趣旨の訴えを提起したものと解するのが相当であるから,当該訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には該当せず,行政事件訴訟法6条が規定する機関訴訟に該当する。
2 原告が参議院議員として有する権限は,いずれも,国会議員という国の機関が,憲法,国会法並びに衆議院規則及び参議院規則の規定に基づき,国会議員としての職務の遂行に当たって行使し得るものとして付与されたものであり,国会議員が,多様な国民の意向又は意見をくみ,これを立法過程に反映させることを通じて統一的な国家意思を形成することに向けた職務上の権限(立法行為に係る権限)を有する立場にあることに照らすと,当該権限自体は,直接的には,公益を図ることを目的とするものであり,国家賠償法1条1項の規定に基づく損害賠償請求権の存在を基礎付けるに足りる法律上保護された利益とは認められない。
事件番号平成30(行ウ)392
事件名憲法53条違憲国家賠償等請求事件
裁判所東京地方裁判所
裁判年月日令和3年3月24日
事案の概要
本件は,本件召集要求をした参議院議員の1人である原告が,安倍内閣がした上記の臨時会の召集の決定又は安倍内閣が少なくとも92日間にわたって本件召集要求に対応する臨時会の召集を決定しなかったこと(以下,「本件不作為」といい,上記の臨時会の召集の決定と総称して「本件不作為等」という。)が憲法53条後段に違反するものであるとして,原告が,次に,参議院の総議員の4分の1以上の1人として,連名で,議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に,主位的には,内閣が,20日以内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義務を負うことの,予備的には,原告が,20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの各確認を求める(以下,本件訴えのうち上記の各確認を求める部分を「本件確認訴訟部分」という。)とともに,本件不作為等により,臨時会の召集の決定を要求する権能だけではなく参議院議員として有する諸権能も長期間にわたり行使することができなかったという損害を受け,それを償うに足りる金額は100万円を下らないとして,国家賠償法1条1項に基づき,上記の100万円の一部である1万円及びこれに対する安倍内閣が本件各要求書を受理した日(平成29年6月22日)から20日を経過した後の日である同年7月13日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下,本件訴えのうち国家賠償法に基づく損害賠償を求める部分を「本件国賠請求部分」という。)事案である。
判示事項
1 国会議員である原告が提起した内閣の義務又は原告が有する公法上の地位の確認を求める旨の訴えが,法律上の争訟には該当しないものとして,不適法とされた事例
2 国会議員である原告が内閣によって侵害されたと主張した権限が,国家賠償法1条1項の適用上保護される権利又は利益には該当しないとされた事例
裁判要旨
1 原告は,内閣という国の機関を主体とする作為又は不作為により,原告が参議院議員という国の機関としての地位に基づいて有する臨時会の召集の決定を要求する権限を侵害されたとして,その保護救済を求める趣旨で,内閣が当該権限に基づく行為に対応して一定の期間内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義務を負うこと又は原告が当該権限に基づいて内閣が上記の決定をすることを享受することができる地位にあることの確認を求める趣旨の訴えを提起したものと解するのが相当であるから,当該訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には該当せず,行政事件訴訟法6条が規定する機関訴訟に該当する。
2 原告が参議院議員として有する権限は,いずれも,国会議員という国の機関が,憲法,国会法並びに衆議院規則及び参議院規則の規定に基づき,国会議員としての職務の遂行に当たって行使し得るものとして付与されたものであり,国会議員が,多様な国民の意向又は意見をくみ,これを立法過程に反映させることを通じて統一的な国家意思を形成することに向けた職務上の権限(立法行為に係る権限)を有する立場にあることに照らすと,当該権限自体は,直接的には,公益を図ることを目的とするものであり,国家賠償法1条1項の規定に基づく損害賠償請求権の存在を基礎付けるに足りる法律上保護された利益とは認められない。
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