事件番号令和3(う)65
事件名死体遺棄,恐喝未遂被告事件
裁判所福岡高等裁判所 第1刑事部
裁判年月日令和3年6月25日
結果棄却
原審裁判所福岡地方裁判所
原審事件番号令和1(わ)1343
事案の概要1 公訴事実
本件死体遺棄の公訴事実(令和元年11月19日付け起訴状記載のもの)は,被告人が「A及びBらと共謀の上,令和元年10月20日午前5時19分頃から同日午前6時14分頃までの間,Cの死体を自動車の後部座席に積載した状態で福岡市博多区千代二丁目付近路上から福岡県太宰府市高雄一丁目(略)のインターネットカフェ(略)駐車場に至るまで同車を走行させて同死体を運搬し,もって死体を遺棄した」というものである。
2 原判決の概要
原判決は,B,A及びDが,前記公訴事実記載の時間帯にCの死体を自動車の後部座席に積載した状態で同車に同乗し,同公訴事実記載の地点間を同車で走行し同死体を運搬した事実(以下「本件行為」という。)を認定した上,Cは,本件当日,本件車両内で死亡したものであり,B及びAらは,消防隊員の指示を受けて車外に出すまでは,Cの死体を同車両内で動かしておらず,物を被せるなどして,Cの死体を外部から見えないようにしたこともないなど,Cの死体の場所的移動は行っているものの,そのほかに従前の判例や裁判例で指摘されているような死体を隠匿するための積極的な作為は何も行っていないこと,B及びAらが本件行為に及んだのは,Cの死体に関する事件性が発覚する前に関係者間で警察への説明方法等につき口裏を合わせるための時間稼ぎが目的であったといえるが,被告人,B及びAらによって,Cの死体につき実際に何らかの処置を行うための準備行為等が行われた形跡は全くないことなどを指摘して,本件行為が死体隠匿には当たらないとした上,本件行為が宗教風俗上,道義上首肯し得ないような方法による死体の処置であるともいえないと判示して,本件行為は死体遺棄罪(刑法190条)の遺棄に該当しないと判断した。
判示事項1 自動車内で死亡した人の死体を同車両で運搬する行為について隠匿による死体遺棄罪が成立する場合
2 自動車内で死亡した人の死体を積載したまま自動車を走行させて運搬した行為が死体遺棄罪に該当しないとされた事例
裁判要旨1 自動車内で死亡した人の死体を同車両で運搬する行為について隠匿による死体遺棄罪が成立するには,当該行為により,それ以前の状態に比較して単に死体発見が容易でなくなったというだけでは足りず,死体発見の困難さが,その程度においても,時間的にも,死者を悼み適時適切に埋葬することを妨げるに足りるものであることが必要である。
2 A及びBが,従前からCに対し継続的に暴行を加えていたところ,Aが自動車を運転し,Bを迎えに行く最中に,同乗していたCが後部座席に座った状態で死亡した後,A及びBは,Cの死体を自動車に積載したまま,被告人と死体の処理について電話で相談しながら,約1時間後に119番通報をするまで運搬したという事案において,A及びBが,Cの死亡の経緯について口裏合わせをする時間稼ぎをするとともに,その間,Cの死体発見を免れることも含めて,Cの死亡に係る事件性が発覚しないようにする意思であったが,死亡後短時間のうちに死亡の事実を公にしており,この間,死体の状況を変容させるような作為はなされず,本件行為による場所の移動及び時間の経過により,身元が不明になったり,死体が腐敗変質するなど宗教風俗上許されない事態も発生していないなどの判示の状況の下においては,A及びBがCの死体を運搬した行為は,死体遺棄罪にいう遺棄に当たらない。
事件番号令和3(う)65
事件名死体遺棄,恐喝未遂被告事件
裁判所福岡高等裁判所 第1刑事部
裁判年月日令和3年6月25日
結果棄却
原審裁判所福岡地方裁判所
原審事件番号令和1(わ)1343
事案の概要
1 公訴事実
本件死体遺棄の公訴事実(令和元年11月19日付け起訴状記載のもの)は,被告人が「A及びBらと共謀の上,令和元年10月20日午前5時19分頃から同日午前6時14分頃までの間,Cの死体を自動車の後部座席に積載した状態で福岡市博多区千代二丁目付近路上から福岡県太宰府市高雄一丁目(略)のインターネットカフェ(略)駐車場に至るまで同車を走行させて同死体を運搬し,もって死体を遺棄した」というものである。
2 原判決の概要
原判決は,B,A及びDが,前記公訴事実記載の時間帯にCの死体を自動車の後部座席に積載した状態で同車に同乗し,同公訴事実記載の地点間を同車で走行し同死体を運搬した事実(以下「本件行為」という。)を認定した上,Cは,本件当日,本件車両内で死亡したものであり,B及びAらは,消防隊員の指示を受けて車外に出すまでは,Cの死体を同車両内で動かしておらず,物を被せるなどして,Cの死体を外部から見えないようにしたこともないなど,Cの死体の場所的移動は行っているものの,そのほかに従前の判例や裁判例で指摘されているような死体を隠匿するための積極的な作為は何も行っていないこと,B及びAらが本件行為に及んだのは,Cの死体に関する事件性が発覚する前に関係者間で警察への説明方法等につき口裏を合わせるための時間稼ぎが目的であったといえるが,被告人,B及びAらによって,Cの死体につき実際に何らかの処置を行うための準備行為等が行われた形跡は全くないことなどを指摘して,本件行為が死体隠匿には当たらないとした上,本件行為が宗教風俗上,道義上首肯し得ないような方法による死体の処置であるともいえないと判示して,本件行為は死体遺棄罪(刑法190条)の遺棄に該当しないと判断した。
判示事項
1 自動車内で死亡した人の死体を同車両で運搬する行為について隠匿による死体遺棄罪が成立する場合
2 自動車内で死亡した人の死体を積載したまま自動車を走行させて運搬した行為が死体遺棄罪に該当しないとされた事例
裁判要旨
1 自動車内で死亡した人の死体を同車両で運搬する行為について隠匿による死体遺棄罪が成立するには,当該行為により,それ以前の状態に比較して単に死体発見が容易でなくなったというだけでは足りず,死体発見の困難さが,その程度においても,時間的にも,死者を悼み適時適切に埋葬することを妨げるに足りるものであることが必要である。
2 A及びBが,従前からCに対し継続的に暴行を加えていたところ,Aが自動車を運転し,Bを迎えに行く最中に,同乗していたCが後部座席に座った状態で死亡した後,A及びBは,Cの死体を自動車に積載したまま,被告人と死体の処理について電話で相談しながら,約1時間後に119番通報をするまで運搬したという事案において,A及びBが,Cの死亡の経緯について口裏合わせをする時間稼ぎをするとともに,その間,Cの死体発見を免れることも含めて,Cの死亡に係る事件性が発覚しないようにする意思であったが,死亡後短時間のうちに死亡の事実を公にしており,この間,死体の状況を変容させるような作為はなされず,本件行為による場所の移動及び時間の経過により,身元が不明になったり,死体が腐敗変質するなど宗教風俗上許されない事態も発生していないなどの判示の状況の下においては,A及びBがCの死体を運搬した行為は,死体遺棄罪にいう遺棄に当たらない。
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