事件番号令和3(ネ)228
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第5民事部
裁判年月日令和4年2月22日
結果その他
原審裁判所大阪地方裁判所
原審事件番号平成30(ワ)8619
事案の概要本件は、優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの。以下「旧優生保護法」という。)に基づく不妊手術(人の生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術。以下「優生手術」という。)を受けたという本人又はその配偶者である控訴人らが、旧優生保護法が人の性と生殖に関する権利であるリプロダクティブ・ライツ、自己決定権、平等権等を侵害する違憲なものであるにもかかわらず、①国会議員が旧優生保護法を立法したこと、②国会議員が被害救済立法を行わなかったこと、③厚生労働大臣及び内閣総理大臣が被害救済措置を講じなかったことがいずれも違法であると主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、控訴人1について3300万円(慰謝料3000万円、弁護士費用相当額300万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年10月12日から、控訴人2及び控訴人3について一部請求としてそれぞれ1100万円(慰謝料1000万円、弁護士費用相当額100万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成31年2月6日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨1 旧優生保護法4条ないし13条は、子を産み育てるか否かについて意思決定をする自由及び意思に反して身体への侵襲を受けない自由を明らかに侵害するとともに、特定の障害等を有する者に対して合理的な根拠のない差別的取扱いをするもので、明らかに憲法13条、14条1項に反して違憲である。したがって、それら規定の立法行為は国家賠償法上違法である。
2(1)旧優生保護法の優生思想や優生手術に関する文言・規定は、平成8年6月に成立した改正法により廃止された。除斥期間の起算点である「不法行為の時」は、控訴人らのいずれについても、上記法律の施行日前日である同年9月25日といえる。
 (2)控訴人らによる本件訴訟の提起の時点では、上記起算点から20年が経過していたが、旧優生保護法の規定による人権侵害が強度である上、憲法の趣旨を踏まえた施策を推進していくべき地位にあった被控訴人が、旧優生保護法の立法及びこれに基づく施策によって障害者等に対する差別・偏見を正当化・固定化、更に助長してきたとみられ、これに起因して、控訴人らにおいて訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境にあったことに照らすと、控訴人らについて、除斥期間の適用をそのまま認めることは、著しく正義・公平の理念に反する。時効停止の規定の法意に照らし、訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境が解消されてから6か月を経過するまでの間、除斥期間の適用が制限されるものと解するのが相当である。
事件番号令和3(ネ)228
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判所大阪高等裁判所 第5民事部
裁判年月日令和4年2月22日
結果その他
原審裁判所大阪地方裁判所
原審事件番号平成30(ワ)8619
事案の概要
本件は、優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの。以下「旧優生保護法」という。)に基づく不妊手術(人の生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術。以下「優生手術」という。)を受けたという本人又はその配偶者である控訴人らが、旧優生保護法が人の性と生殖に関する権利であるリプロダクティブ・ライツ、自己決定権、平等権等を侵害する違憲なものであるにもかかわらず、①国会議員が旧優生保護法を立法したこと、②国会議員が被害救済立法を行わなかったこと、③厚生労働大臣及び内閣総理大臣が被害救済措置を講じなかったことがいずれも違法であると主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、控訴人1について3300万円(慰謝料3000万円、弁護士費用相当額300万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年10月12日から、控訴人2及び控訴人3について一部請求としてそれぞれ1100万円(慰謝料1000万円、弁護士費用相当額100万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成31年2月6日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
判示事項の要旨
1 旧優生保護法4条ないし13条は、子を産み育てるか否かについて意思決定をする自由及び意思に反して身体への侵襲を受けない自由を明らかに侵害するとともに、特定の障害等を有する者に対して合理的な根拠のない差別的取扱いをするもので、明らかに憲法13条、14条1項に反して違憲である。したがって、それら規定の立法行為は国家賠償法上違法である。
2(1)旧優生保護法の優生思想や優生手術に関する文言・規定は、平成8年6月に成立した改正法により廃止された。除斥期間の起算点である「不法行為の時」は、控訴人らのいずれについても、上記法律の施行日前日である同年9月25日といえる。
 (2)控訴人らによる本件訴訟の提起の時点では、上記起算点から20年が経過していたが、旧優生保護法の規定による人権侵害が強度である上、憲法の趣旨を踏まえた施策を推進していくべき地位にあった被控訴人が、旧優生保護法の立法及びこれに基づく施策によって障害者等に対する差別・偏見を正当化・固定化、更に助長してきたとみられ、これに起因して、控訴人らにおいて訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境にあったことに照らすと、控訴人らについて、除斥期間の適用をそのまま認めることは、著しく正義・公平の理念に反する。時効停止の規定の法意に照らし、訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境が解消されてから6か月を経過するまでの間、除斥期間の適用が制限されるものと解するのが相当である。
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