事件番号令和1(行ウ)187
事件名処分取消請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日令和3年10月28日
事案の概要本件賃貸借契約の解除又は解約申入れを許可する処分(以下「本件処分」といい,本件処分に付された上記条件を「本件条件」という。)を受けた。本件は,原告が,本件賃貸借契約の賃借人が「信義に反した行為」をしており,農地法18条2項1号に該当する事由があるにもかかわらず,同号に該当する事由がないとされた上で,同項6号に該当するとして許可がされ,その際に本件条件が付されたことが,大阪府知事の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるものであるなどと主張して,被告を相手に,①主位的請求として,本件処分の取消し及び本件申請に対する許可処分の義務付け,又は,本件処分のうち本件条件の取消しを求め,②予備的請求として,本件処分の取消し及び本件農地⑴につき340万円,本件農地⑵につき180万円の離作料をそれぞれ支払うことを条件とする許可処分の義務付け,又は,本件処分のうち本件条件の取消し及び本件農地⑴につき340万円,本件農地⑵につき180万円の離作料をそれぞれ支払うことを条件とする許可処分の義務付けを求める事案である。
判示事項1 農地の賃借人の行為が,農地法18条2項1号所定の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないとされた事例
2 大阪府知事が,農地の賃貸借について,具体的な離作料の金額を明示することなく,適正な離作料の支払を条件とすることで農地法18条2項6号所定の「その他正当の事由がある場合」に当たるとして同条1項の許可をしたことが,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできないとされた事例
裁判要旨1 農地の賃借人が,賃貸人の事前の許可を得ることなく,当該農地を工事用道路として第三者に使用させ,また,当該農地に小石の混じった土を入れるなどの行為をしたことは,次の⑴~⑷など判示の事情の下においては,農地法18条2項1号所定の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえない。
 ⑴ 上記賃貸人は,上記第三者が当該農地を使用していることを知った後に,当該第三者と協議した上で,使用料として100万円を受領して上記の使用を追認しており,また,上記賃借人が当該第三者に工事用道路として使用させたのは,当該農地の一部にとどまるものであり,当該第三者に工事用道路として使用させたことにより,その後の当該農地の耕作が困難になったということもなかった。
 ⑵ 上記賃借人が当該農地に小石の混じった土を入れたのは,当該農地を田として使用するためであり,小石の混じった土を入れた行為は,水田整備の一般的知見とも整合するものであり,また,上記賃貸人は,当該農地に土を入れることの適否を判断するに際して,当該農地の農地としての利用とは直接関係しない事情を重視していた。
 ⑶ 上記賃借人は,当該農地において営んでいた農業において生計を立てていたものではなかった。
⑷ 上記賃貸人は,当該農地の返還を受けた場合に当該農地を引き続き農地として利用する意思を有していなかった。
2 大阪府知事が,農地の賃貸借について,具体的な離作料の金額を明示することなく,適正な離作料の支払を条件とすることで農地法18条2項6号所定の「その他正当の事由がある場合」に当たるとして同条1項の許可をしたことは,次の⑴~⑷など判示の事情の下においては,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。
 ⑴ 上記賃貸借の賃借人は,賃貸人から一定の金額を支払う旨の申出とともに当該農地の賃貸借契約の解除を求められた場合にはこれを拒否するものではない旨の意向を示していた。
 ⑵ 当該農地について,固定資産税等の額が賃料の額を上回るという逆ざや現象が長年にわたって生じていた。
 ⑶ 上記賃借人は,少なくとも20年以上にわたって当該農地の耕作を続けていた。
 ⑷ 上記賃貸人と上記賃借人との間には,当該農地の明渡しに際して授受すべき離作料の金額に関する考え方に大きな隔たりがあり,その原因として当該農地や地域の慣行等の個別的な特殊性や,これを背景とする上記賃貸人・上記賃借人間の長年にわたる深刻な対立がうかがわれた。
事件番号令和1(行ウ)187
事件名処分取消請求事件
裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日令和3年10月28日
事案の概要
本件賃貸借契約の解除又は解約申入れを許可する処分(以下「本件処分」といい,本件処分に付された上記条件を「本件条件」という。)を受けた。本件は,原告が,本件賃貸借契約の賃借人が「信義に反した行為」をしており,農地法18条2項1号に該当する事由があるにもかかわらず,同号に該当する事由がないとされた上で,同項6号に該当するとして許可がされ,その際に本件条件が付されたことが,大阪府知事の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるものであるなどと主張して,被告を相手に,①主位的請求として,本件処分の取消し及び本件申請に対する許可処分の義務付け,又は,本件処分のうち本件条件の取消しを求め,②予備的請求として,本件処分の取消し及び本件農地⑴につき340万円,本件農地⑵につき180万円の離作料をそれぞれ支払うことを条件とする許可処分の義務付け,又は,本件処分のうち本件条件の取消し及び本件農地⑴につき340万円,本件農地⑵につき180万円の離作料をそれぞれ支払うことを条件とする許可処分の義務付けを求める事案である。
判示事項
1 農地の賃借人の行為が,農地法18条2項1号所定の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないとされた事例
2 大阪府知事が,農地の賃貸借について,具体的な離作料の金額を明示することなく,適正な離作料の支払を条件とすることで農地法18条2項6号所定の「その他正当の事由がある場合」に当たるとして同条1項の許可をしたことが,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできないとされた事例
裁判要旨
1 農地の賃借人が,賃貸人の事前の許可を得ることなく,当該農地を工事用道路として第三者に使用させ,また,当該農地に小石の混じった土を入れるなどの行為をしたことは,次の⑴~⑷など判示の事情の下においては,農地法18条2項1号所定の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえない。
 ⑴ 上記賃貸人は,上記第三者が当該農地を使用していることを知った後に,当該第三者と協議した上で,使用料として100万円を受領して上記の使用を追認しており,また,上記賃借人が当該第三者に工事用道路として使用させたのは,当該農地の一部にとどまるものであり,当該第三者に工事用道路として使用させたことにより,その後の当該農地の耕作が困難になったということもなかった。
 ⑵ 上記賃借人が当該農地に小石の混じった土を入れたのは,当該農地を田として使用するためであり,小石の混じった土を入れた行為は,水田整備の一般的知見とも整合するものであり,また,上記賃貸人は,当該農地に土を入れることの適否を判断するに際して,当該農地の農地としての利用とは直接関係しない事情を重視していた。
 ⑶ 上記賃借人は,当該農地において営んでいた農業において生計を立てていたものではなかった。
⑷ 上記賃貸人は,当該農地の返還を受けた場合に当該農地を引き続き農地として利用する意思を有していなかった。
2 大阪府知事が,農地の賃貸借について,具体的な離作料の金額を明示することなく,適正な離作料の支払を条件とすることで農地法18条2項6号所定の「その他正当の事由がある場合」に当たるとして同条1項の許可をしたことは,次の⑴~⑷など判示の事情の下においては,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。
 ⑴ 上記賃貸借の賃借人は,賃貸人から一定の金額を支払う旨の申出とともに当該農地の賃貸借契約の解除を求められた場合にはこれを拒否するものではない旨の意向を示していた。
 ⑵ 当該農地について,固定資産税等の額が賃料の額を上回るという逆ざや現象が長年にわたって生じていた。
 ⑶ 上記賃借人は,少なくとも20年以上にわたって当該農地の耕作を続けていた。
 ⑷ 上記賃貸人と上記賃借人との間には,当該農地の明渡しに際して授受すべき離作料の金額に関する考え方に大きな隔たりがあり,その原因として当該農地や地域の慣行等の個別的な特殊性や,これを背景とする上記賃貸人・上記賃借人間の長年にわたる深刻な対立がうかがわれた。
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