事件番号令和4(う)101
事件名保護責任者遺棄致死
裁判所福岡高等裁判所
裁判年月日令和4年7月27日
結果棄却
事案の概要原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、次のとおりである。
被告人及びその夫Aは、実子(三男)である被害者(平成29年7月▲日生)を監護養育していたものであるが、被害者は、平成30年10月下旬頃までに重度の低栄養状態に陥ったことにより、極度に痩せ細って衰弱するとともに免疫力が低下し、同年11月上旬頃以降、両手足の骨や肋骨の併せて23本の骨が合計31か所も骨折したことにより、左腕が腫れ上がったり、痛みで動くことや食事を取ることが難しくなったりし、また、Aが、同じ頃以降同月末頃までの間、多数回にわたり、被害者に、エアソフトガンで発射したBB弾を命中させる暴行を加え、被害者の全身(頭部、顔面、左右側胸部、右側腹部、左右上下肢、背部、腰部及び臀部)に表皮剥脱や皮下出血を伴う合計71か所もの小さな円形の傷を負わせ、同月下旬頃(ただし、同月28日頃まで)には、前記の傷が原因となって右腕及び左膝が蜂窩織炎を発症したことで広範囲に赤みを帯びて腫れ上がったり、これらによる強度のストレスにさらされるなどして胸腺が萎縮して更に免疫力が低下したりし、これらが相俟って、その頃までに重度の低栄養等に基づく肺感染症を発症するなどして、ますます衰弱するとともに通常の体温を維持することも呼吸することも困難になっていたところ、被告人及びAは、遅くとも同月下旬頃(ただし、同月28日頃まで)には、全身には多くの小さな円形の傷があり、右腕及び左膝は広範囲に赤く腫れ上がり、ぐったりとして動くことも、食事を取ることもできず衰弱している被害者の状態を認識していたのであるから、その生存に必要な保護として医師による診察・治療を被害者に受けさせるべき責任があったにもかかわらず、共謀の上、その頃から同月28日頃までの間、医師による診察・治療を被害者に受けさせるというその生存に必要な保護をせず、よって、同年12月1日、福岡県田川市内の被告人及びA方において、被害者を重度の低栄養等に基づく肺感染症による急性呼吸不全により死亡させた。
原審で取り調べられた証拠によれば、被告人及びAは、本件当時、自宅で、被害者のほか、長男(平成27年1月▲日生)及び長女(平成30年7月▲日生)と同居して子どもたちを監護養育しており、子どもたちの主たる監護者は被告人であったこと、被害者は、平成30年12月1日(以下、年の記載がないものは、いずれも平成30年の事象である。)午前4時頃、自宅で死亡したが、11月28日頃までであれば、医師による診察・治療により救命可能であったこと、被告人は、12月1日午前4時17分頃、119番通報をして、数分前に被害者が急に泣いて息が止まり、意識もないなどと告げたことなどが認められた。
原審では、被告人の故意、すなわち、被告人が被害者の要保護状態を認識していたかが争点となり、被告人は、原審公判廷で、「被害者は、死亡前日までいつもどおり食事を取ったり、動いたりしていた。入浴後、被害者の右肩付近に虫刺されのような傷が五、六個あるのに気付き、痛くないか確かめるために触ってみたが、笑っていた。翌日未明、被害者の泣き声で目覚め、被害者を見ると息をしていなかった。その時まで被害者の異常には全く気付かなかった」旨供述したが、原判決は、被告人には、上記認識があったと認めて被告人を有罪とした。
論旨は、要するに、被告人には被害者の要保護状態についての認識があり、故意があったと認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。
事件番号令和4(う)101
事件名保護責任者遺棄致死
裁判所福岡高等裁判所
裁判年月日令和4年7月27日
結果棄却
事案の概要
原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、次のとおりである。
被告人及びその夫Aは、実子(三男)である被害者(平成29年7月▲日生)を監護養育していたものであるが、被害者は、平成30年10月下旬頃までに重度の低栄養状態に陥ったことにより、極度に痩せ細って衰弱するとともに免疫力が低下し、同年11月上旬頃以降、両手足の骨や肋骨の併せて23本の骨が合計31か所も骨折したことにより、左腕が腫れ上がったり、痛みで動くことや食事を取ることが難しくなったりし、また、Aが、同じ頃以降同月末頃までの間、多数回にわたり、被害者に、エアソフトガンで発射したBB弾を命中させる暴行を加え、被害者の全身(頭部、顔面、左右側胸部、右側腹部、左右上下肢、背部、腰部及び臀部)に表皮剥脱や皮下出血を伴う合計71か所もの小さな円形の傷を負わせ、同月下旬頃(ただし、同月28日頃まで)には、前記の傷が原因となって右腕及び左膝が蜂窩織炎を発症したことで広範囲に赤みを帯びて腫れ上がったり、これらによる強度のストレスにさらされるなどして胸腺が萎縮して更に免疫力が低下したりし、これらが相俟って、その頃までに重度の低栄養等に基づく肺感染症を発症するなどして、ますます衰弱するとともに通常の体温を維持することも呼吸することも困難になっていたところ、被告人及びAは、遅くとも同月下旬頃(ただし、同月28日頃まで)には、全身には多くの小さな円形の傷があり、右腕及び左膝は広範囲に赤く腫れ上がり、ぐったりとして動くことも、食事を取ることもできず衰弱している被害者の状態を認識していたのであるから、その生存に必要な保護として医師による診察・治療を被害者に受けさせるべき責任があったにもかかわらず、共謀の上、その頃から同月28日頃までの間、医師による診察・治療を被害者に受けさせるというその生存に必要な保護をせず、よって、同年12月1日、福岡県田川市内の被告人及びA方において、被害者を重度の低栄養等に基づく肺感染症による急性呼吸不全により死亡させた。
原審で取り調べられた証拠によれば、被告人及びAは、本件当時、自宅で、被害者のほか、長男(平成27年1月▲日生)及び長女(平成30年7月▲日生)と同居して子どもたちを監護養育しており、子どもたちの主たる監護者は被告人であったこと、被害者は、平成30年12月1日(以下、年の記載がないものは、いずれも平成30年の事象である。)午前4時頃、自宅で死亡したが、11月28日頃までであれば、医師による診察・治療により救命可能であったこと、被告人は、12月1日午前4時17分頃、119番通報をして、数分前に被害者が急に泣いて息が止まり、意識もないなどと告げたことなどが認められた。
原審では、被告人の故意、すなわち、被告人が被害者の要保護状態を認識していたかが争点となり、被告人は、原審公判廷で、「被害者は、死亡前日までいつもどおり食事を取ったり、動いたりしていた。入浴後、被害者の右肩付近に虫刺されのような傷が五、六個あるのに気付き、痛くないか確かめるために触ってみたが、笑っていた。翌日未明、被害者の泣き声で目覚め、被害者を見ると息をしていなかった。その時まで被害者の異常には全く気付かなかった」旨供述したが、原判決は、被告人には、上記認識があったと認めて被告人を有罪とした。
論旨は、要するに、被告人には被害者の要保護状態についての認識があり、故意があったと認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。
このエントリーをはてなブックマークに追加