事件番号令和3(わ)554
事件名業務上過失致死
裁判所名古屋地方裁判所 刑事第3部
裁判年月日令和4年11月29日
事案の概要被告人は、港湾運送事業等を営むA株式会社の従業員であり、名古屋市c区de丁目f番所在のB岸壁に接岸中の貨物船Cの甲板上において、船内荷役作業主任者として、前記C設置のクレーンを使用し、同船左舷側に停泊中の汽船D船倉に積載されたスチールコイルを、前記Cの船倉に移し入れる荷揚げ作業の指揮監督業務に従事していたものであるが、令和2年6月25日午前11時17分頃、前記クレーンを使用して、前記荷揚げ作業を行うに当たり、前記D船倉に積載されたスチールコイル2個(合計約15.585トン、以下「本件コイル」という。)をワイヤーロープでつり上げ、同船船倉内の床面上に仮置きする際、同仮置きの作業は、つり上げ時の荷重の影響や海面の影響により生じる床面の傾斜等により、本件コイルが予想外の動きをするおそれがあるのはもとより、本件コイルを床面上に固定するためには、同船船倉内にいた作業員らにおいて、本件コイルが床面に接地する前までに、可能な限り固定する場所に近付いて「矢」と呼ばれる敷板を床面と本件コイルの間の適切な位置に投げ入れるなどの作業をする必要があり、直前に本件コイルを仮置きしようとした際には、前記敷板の位置が適切でなかったことなどにより、本件コイルが転がって本件コイルの間に隙間が生じるなどして2回にわたって仮置きに失敗していたため、同作業員らが、前記敷板の位置を調整して確実に本件コイルを固定させようとするなどして不用意に本件コイルに近付いてこれに圧迫されたり挟まれたりするなどの事故が発生するおそれが高まっていたのであるから、改めて仮置きをやり直すに当たっては、同作業員らの立ち位置を確実に確認し、同人らに対し、本件コイルから退避してこれに近付かないように指示し、同人らがかかる指示に従って退避したことを確認した上で、前記クレーンの運転士に前記クレーンを使用して本件コイルをつり上げさせる注意義務があったのに、これを怠り、同作業員らの立ち位置を確認せず、同人らに対し、本件コイルから退避して本件コイルに近付かないように指示せず、同人らがかかる指示に従って退避したことも確認しないまま前記クレーンの運転士に前記クレーンを使用して本件コイル2個をつり上げさせた過失により、本件コイル付近で荷役作業をしていたE(当時21歳)が本件コイル付近に近付き、同人を本件コイル間に挟圧させ、よって、同人に頭蓋骨骨折等の傷害を負わせ、同年9月8日午後3時13分頃、同市g区hi丁目j番地所在のF病院において、同人を前記傷害に基づく重症頭部外傷により死亡させたものである。
事件番号令和3(わ)554
事件名業務上過失致死
裁判所名古屋地方裁判所 刑事第3部
裁判年月日令和4年11月29日
事案の概要
被告人は、港湾運送事業等を営むA株式会社の従業員であり、名古屋市c区de丁目f番所在のB岸壁に接岸中の貨物船Cの甲板上において、船内荷役作業主任者として、前記C設置のクレーンを使用し、同船左舷側に停泊中の汽船D船倉に積載されたスチールコイルを、前記Cの船倉に移し入れる荷揚げ作業の指揮監督業務に従事していたものであるが、令和2年6月25日午前11時17分頃、前記クレーンを使用して、前記荷揚げ作業を行うに当たり、前記D船倉に積載されたスチールコイル2個(合計約15.585トン、以下「本件コイル」という。)をワイヤーロープでつり上げ、同船船倉内の床面上に仮置きする際、同仮置きの作業は、つり上げ時の荷重の影響や海面の影響により生じる床面の傾斜等により、本件コイルが予想外の動きをするおそれがあるのはもとより、本件コイルを床面上に固定するためには、同船船倉内にいた作業員らにおいて、本件コイルが床面に接地する前までに、可能な限り固定する場所に近付いて「矢」と呼ばれる敷板を床面と本件コイルの間の適切な位置に投げ入れるなどの作業をする必要があり、直前に本件コイルを仮置きしようとした際には、前記敷板の位置が適切でなかったことなどにより、本件コイルが転がって本件コイルの間に隙間が生じるなどして2回にわたって仮置きに失敗していたため、同作業員らが、前記敷板の位置を調整して確実に本件コイルを固定させようとするなどして不用意に本件コイルに近付いてこれに圧迫されたり挟まれたりするなどの事故が発生するおそれが高まっていたのであるから、改めて仮置きをやり直すに当たっては、同作業員らの立ち位置を確実に確認し、同人らに対し、本件コイルから退避してこれに近付かないように指示し、同人らがかかる指示に従って退避したことを確認した上で、前記クレーンの運転士に前記クレーンを使用して本件コイルをつり上げさせる注意義務があったのに、これを怠り、同作業員らの立ち位置を確認せず、同人らに対し、本件コイルから退避して本件コイルに近付かないように指示せず、同人らがかかる指示に従って退避したことも確認しないまま前記クレーンの運転士に前記クレーンを使用して本件コイル2個をつり上げさせた過失により、本件コイル付近で荷役作業をしていたE(当時21歳)が本件コイル付近に近付き、同人を本件コイル間に挟圧させ、よって、同人に頭蓋骨骨折等の傷害を負わせ、同年9月8日午後3時13分頃、同市g区hi丁目j番地所在のF病院において、同人を前記傷害に基づく重症頭部外傷により死亡させたものである。
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