事件番号令和3(受)968
事件名損害賠償請求事件
裁判所最高裁判所第二小法廷
裁判年月日令和5年1月27日
裁判種別判決
結果破棄自判
原審裁判所高松高等裁判所
原審事件番号令和1(ネ)109
原審裁判年月日令和3年3月12日
事案の概要本件は、統合失調症の治療のため、上告人の設置する香川県立丸亀病院(以下「本件病院」という。)に入院した患者(以下「本件患者」という。)が、入院中に無断離院をして自殺したことについて、本件患者の相続人である被上告人が、上告人には、診療契約に基づき、本件病院においては無断離院の防止策が十分に講じられていないことを本件患者に対して説明すべき義務があったにもかかわらず、これを怠った説明義務違反があるなどと主張して、上告人に対し、債務不履行に基づく損害賠償を請求する事案である。
判示事項統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院者として入院した患者が無断離院をして自殺した場合において、上記病院の設置者に無断離院の防止策についての説明義務違反があったとはいえないとされた事例
裁判要旨統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院者として入院した患者が、単独での院内外出(病棟から上記病院の敷地内への外出)を許可され、敷地外への単独での外出を許可されていなかったにもかかわらず、無断離院をして自殺した場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、上記病院の医師が、上記患者に対し、上記病院においては、平日の日中は敷地の出入口である門扉が開放され、通行者を監視する者がおらず、任意入院者に徘徊センサーを装着するなどの対策も講じていないため、単独での院内外出を許可されている任意入院者は無断離院をして自殺する危険性があることを説明しなかったことをもって、上記病院の設置者に説明義務違反があったということはできない。
⑴ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律37条1項の委任に基づき厚生労働大臣が精神科病院に入院中の者の処遇について定めた基準において、任意入院者は、原則として、開放的な環境での処遇(本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇)を受けるものとされており、当時の医療水準では無断離院の防止策として徘徊センサーの装着等の措置を講ずる必要があるとされていたわけでもなかった。
⑵ 上記病院においては、任意入院者につき、医師がその病状を把握した上で、単独での院内外出を許可するかどうかを判断していた。
⑶ 上記患者が、具体的にどのような無断離院の防止策が講じられているかによって入院する病院を選択する意向を有し、そのような意向を上記病院の医師に伝えていたといった事情はうかがわれない。
事件番号令和3(受)968
事件名損害賠償請求事件
裁判所最高裁判所第二小法廷
裁判年月日令和5年1月27日
裁判種別判決
結果破棄自判
原審裁判所高松高等裁判所
原審事件番号令和1(ネ)109
原審裁判年月日令和3年3月12日
事案の概要
本件は、統合失調症の治療のため、上告人の設置する香川県立丸亀病院(以下「本件病院」という。)に入院した患者(以下「本件患者」という。)が、入院中に無断離院をして自殺したことについて、本件患者の相続人である被上告人が、上告人には、診療契約に基づき、本件病院においては無断離院の防止策が十分に講じられていないことを本件患者に対して説明すべき義務があったにもかかわらず、これを怠った説明義務違反があるなどと主張して、上告人に対し、債務不履行に基づく損害賠償を請求する事案である。
判示事項
統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院者として入院した患者が無断離院をして自殺した場合において、上記病院の設置者に無断離院の防止策についての説明義務違反があったとはいえないとされた事例
裁判要旨
統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院者として入院した患者が、単独での院内外出(病棟から上記病院の敷地内への外出)を許可され、敷地外への単独での外出を許可されていなかったにもかかわらず、無断離院をして自殺した場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、上記病院の医師が、上記患者に対し、上記病院においては、平日の日中は敷地の出入口である門扉が開放され、通行者を監視する者がおらず、任意入院者に徘徊センサーを装着するなどの対策も講じていないため、単独での院内外出を許可されている任意入院者は無断離院をして自殺する危険性があることを説明しなかったことをもって、上記病院の設置者に説明義務違反があったということはできない。
⑴ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律37条1項の委任に基づき厚生労働大臣が精神科病院に入院中の者の処遇について定めた基準において、任意入院者は、原則として、開放的な環境での処遇(本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇)を受けるものとされており、当時の医療水準では無断離院の防止策として徘徊センサーの装着等の措置を講ずる必要があるとされていたわけでもなかった。
⑵ 上記病院においては、任意入院者につき、医師がその病状を把握した上で、単独での院内外出を許可するかどうかを判断していた。
⑶ 上記患者が、具体的にどのような無断離院の防止策が講じられているかによって入院する病院を選択する意向を有し、そのような意向を上記病院の医師に伝えていたといった事情はうかがわれない。
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