事件番号令和4(わ)69
事件名電子計算機使用詐欺被告事件
裁判所山口地方裁判所 第3部
裁判年月日令和5年2月28日
事案の概要第1 被告人は、株式会社A銀行(以下、単に「A銀行」という。)B支店に開設された自己名義の普通預金口座(以下、「被告人口座」という。)に、山口県C町(以下、「C町」という。)が住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金として4630万円を誤って振込入金したこと(以下、振り込まれた4630万円のことを「本件誤振込金」という。)を利用して、電子計算機を使用し、被告人口座を決済口座とするA銀行発行の被告人名義のA-Dデビットカード情報(以下、「デビットカード情報」という。)を利用して、オンラインカジノサービスの決済代行業者で、A-Dデビットカードの加盟店であるEにオンラインカジノサービスの利用料金の支払いをすることによりこれを利用し得る地位を得ようと考えて、以下の行為をした。
被告人は、別表1の「操作日時(令和4年・頃)」欄記載の日時に、別表1の「操作場所」欄記載の場所において、インターネットに接続した携帯電話機を操作して、オンラインカジノサイトにアクセスした上、同サイトの決済システムを利用し、東京都多摩市内に設置されたA銀行のデビット取引に係る決済代金の支払等の事務処理に使用される電子計算機に対し、被告人口座に振り込まれた本件誤振込金につき、誤って振り込まれた被告人に無関係なものであることを認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金についてデビットカード情報を利用して決済代金の支払委託等をすることが許されないにもかかわらず、デビットカード情報を利用し、別表1の「振込金額(円)」欄記載の金額の振込を依頼する旨の虚偽の情報を与え、別表1の「被害日時(令和4年・頃)」欄記載の日時に、オンラインシステムにより、前記電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録されたA銀行本店に開設されたDデビット資金精算口口座の預金残高を別表1の「振込金額(円)」欄記載の金額分増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作るなどし、よって、合計アメリカ合衆国2万4000ドル余り相当の前記オンラインカジノサービスを利用し得る地位を得て、もって財産上不法の利益を得た。
第2 被告人は、前記第1のとおり、C町がA銀行B支店に開設された被告人口座に本件誤振込金を振り込んだことを利用して、電子計算機を使用して被告人口座の預金からオンラインカジノサービスの決済代行業者にその利用料金の支払いをすることによりこれを利用し得る地位を得ようと考え、以下の行為をした。
1 被告人は、別表2の「操作日時(令和4年・頃)」欄記載の日時に、別表2の「操作場所」欄記載の場所において、インターネットに接続した携帯電話機を操作して、A銀行が提供するインターネットバンキングにアクセスし、東京都多摩市内に設置されたA銀行の預金残高管理、振替、振込等の事務処理に使用される電子計算機に対し、被告人口座に振り込まれた本件誤振込金につき、誤って振り込まれた被告人には無関係な振込金であることを認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金について振込依頼等をすることが許されないにもかかわらず、被告人口座からF銀行株式会社G支店に開設された株式会社H名義の普通預金口座に別表2の「振込金額(円)」欄記載の金額の振込を依頼する旨の虚偽の情報を与え、別表2の「被害日時(令和4年・頃)」欄記載の日時に、オンラインシステムにより、栃木県芳賀郡a町bc番d号にあるI信託銀行Jセンターに設置された電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録された株式会社H名義の普通預金口座の預金残高を別表2の「振込金額(円)」欄記載の金額分増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作るなどし、よって、前記オンラインカジノサービスを合計3592万4691円相当分利用し得る地位を得て、もって財産上不法の利益を得た。
2 被告人は、令和4年4月12日午前0時14分頃、山口県内、島根県内又はその周辺において、インターネットに接続した携帯電話機を操作して、A銀行が提供するインターネットバンキングにアクセスし、東京都多摩市内に設置された同銀行の預金残高管理、振替、振込等の事務処理に使用される電子計算機に対し、被告人口座に振り込まれた本件誤振込金につき、誤って振り込まれた被告人には無関係な振込金であると認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金について振込依頼等をすることが許されないにもかかわらず、被告人口座からF銀行株式会社G支店に開設されたK有限会社名義の普通預金口座に300万円の振込を依頼する旨の虚偽の情報を与え、同日午前0時18分頃、オンラインシステムにより、栃木県芳賀郡a町bc番d号にあるI信託銀行Jセンターに設置された電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録されたK有限会社の普通預金口座の預金残高を300万円増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作るなどし、よって、前記オンラインカジノサービスを300万円相当分利用し得る地位を得て、もって財産上不法の利益を得た。
3 被告人は、令和4年4月12日午後5時9分頃、山口県萩市大字ef番地gにある株式会社LM店において、インターネットに接続した携帯電話機を操作して、A銀行が提供するインターネットバンキングにアクセスし、東京都多摩市内に設置されたA銀行の預金残高管理、振替、振込等の事務処理に使用される電子計算機に対し、被告人口座に振り込まれた本件誤振込金につき、誤って振り込まれた被告人には無関係な振込金であると認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金について振込依頼等をすることが許されないにもかかわらず、被告人口座から株式会社N銀行O支店に開設された有限会社P名義の普通預金口座に400万円の振込を依頼する旨の虚偽の情報を与え、同日午後5時11分頃、オンラインシステムにより、神奈川県大和市内に設置された電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録された有限会社P名義の普通預金口座の預金残高を400万円増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作り、よって、前記オンラインカジノサービスを400万円相当分利用し得る地位を得て、もって財産上不法の利益を得た。
判示事項の要旨被告人が、町から自己名義の預金口座に臨時特別給付金を誤って振込入金されたことを利用して、正当な権限がないにもかかわらず、自己の電子計算機を使用し、銀行の電子計算機に対して、正当な権限があるような虚偽の情報を与え、オンラインカジノサービスの決済代行業者にオンラインカジノサービス利用料金の支払いをして、これを利用しうる地位を得た事案について、被告人に懲役3年、執行猶予5年間を言い渡した事例
事件番号令和4(わ)69
事件名電子計算機使用詐欺被告事件
裁判所山口地方裁判所 第3部
裁判年月日令和5年2月28日
事案の概要
第1 被告人は、株式会社A銀行(以下、単に「A銀行」という。)B支店に開設された自己名義の普通預金口座(以下、「被告人口座」という。)に、山口県C町(以下、「C町」という。)が住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金として4630万円を誤って振込入金したこと(以下、振り込まれた4630万円のことを「本件誤振込金」という。)を利用して、電子計算機を使用し、被告人口座を決済口座とするA銀行発行の被告人名義のA-Dデビットカード情報(以下、「デビットカード情報」という。)を利用して、オンラインカジノサービスの決済代行業者で、A-Dデビットカードの加盟店であるEにオンラインカジノサービスの利用料金の支払いをすることによりこれを利用し得る地位を得ようと考えて、以下の行為をした。
被告人は、別表1の「操作日時(令和4年・頃)」欄記載の日時に、別表1の「操作場所」欄記載の場所において、インターネットに接続した携帯電話機を操作して、オンラインカジノサイトにアクセスした上、同サイトの決済システムを利用し、東京都多摩市内に設置されたA銀行のデビット取引に係る決済代金の支払等の事務処理に使用される電子計算機に対し、被告人口座に振り込まれた本件誤振込金につき、誤って振り込まれた被告人に無関係なものであることを認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金についてデビットカード情報を利用して決済代金の支払委託等をすることが許されないにもかかわらず、デビットカード情報を利用し、別表1の「振込金額(円)」欄記載の金額の振込を依頼する旨の虚偽の情報を与え、別表1の「被害日時(令和4年・頃)」欄記載の日時に、オンラインシステムにより、前記電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録されたA銀行本店に開設されたDデビット資金精算口口座の預金残高を別表1の「振込金額(円)」欄記載の金額分増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作るなどし、よって、合計アメリカ合衆国2万4000ドル余り相当の前記オンラインカジノサービスを利用し得る地位を得て、もって財産上不法の利益を得た。
第2 被告人は、前記第1のとおり、C町がA銀行B支店に開設された被告人口座に本件誤振込金を振り込んだことを利用して、電子計算機を使用して被告人口座の預金からオンラインカジノサービスの決済代行業者にその利用料金の支払いをすることによりこれを利用し得る地位を得ようと考え、以下の行為をした。
1 被告人は、別表2の「操作日時(令和4年・頃)」欄記載の日時に、別表2の「操作場所」欄記載の場所において、インターネットに接続した携帯電話機を操作して、A銀行が提供するインターネットバンキングにアクセスし、東京都多摩市内に設置されたA銀行の預金残高管理、振替、振込等の事務処理に使用される電子計算機に対し、被告人口座に振り込まれた本件誤振込金につき、誤って振り込まれた被告人には無関係な振込金であることを認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金について振込依頼等をすることが許されないにもかかわらず、被告人口座からF銀行株式会社G支店に開設された株式会社H名義の普通預金口座に別表2の「振込金額(円)」欄記載の金額の振込を依頼する旨の虚偽の情報を与え、別表2の「被害日時(令和4年・頃)」欄記載の日時に、オンラインシステムにより、栃木県芳賀郡a町bc番d号にあるI信託銀行Jセンターに設置された電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録された株式会社H名義の普通預金口座の預金残高を別表2の「振込金額(円)」欄記載の金額分増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作るなどし、よって、前記オンラインカジノサービスを合計3592万4691円相当分利用し得る地位を得て、もって財産上不法の利益を得た。
2 被告人は、令和4年4月12日午前0時14分頃、山口県内、島根県内又はその周辺において、インターネットに接続した携帯電話機を操作して、A銀行が提供するインターネットバンキングにアクセスし、東京都多摩市内に設置された同銀行の預金残高管理、振替、振込等の事務処理に使用される電子計算機に対し、被告人口座に振り込まれた本件誤振込金につき、誤って振り込まれた被告人には無関係な振込金であると認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金について振込依頼等をすることが許されないにもかかわらず、被告人口座からF銀行株式会社G支店に開設されたK有限会社名義の普通預金口座に300万円の振込を依頼する旨の虚偽の情報を与え、同日午前0時18分頃、オンラインシステムにより、栃木県芳賀郡a町bc番d号にあるI信託銀行Jセンターに設置された電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録されたK有限会社の普通預金口座の預金残高を300万円増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作るなどし、よって、前記オンラインカジノサービスを300万円相当分利用し得る地位を得て、もって財産上不法の利益を得た。
3 被告人は、令和4年4月12日午後5時9分頃、山口県萩市大字ef番地gにある株式会社LM店において、インターネットに接続した携帯電話機を操作して、A銀行が提供するインターネットバンキングにアクセスし、東京都多摩市内に設置されたA銀行の預金残高管理、振替、振込等の事務処理に使用される電子計算機に対し、被告人口座に振り込まれた本件誤振込金につき、誤って振り込まれた被告人には無関係な振込金であると認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金について振込依頼等をすることが許されないにもかかわらず、被告人口座から株式会社N銀行O支店に開設された有限会社P名義の普通預金口座に400万円の振込を依頼する旨の虚偽の情報を与え、同日午後5時11分頃、オンラインシステムにより、神奈川県大和市内に設置された電子計算機に接続されている磁気ディスクに記録された有限会社P名義の普通預金口座の預金残高を400万円増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作り、よって、前記オンラインカジノサービスを400万円相当分利用し得る地位を得て、もって財産上不法の利益を得た。
判示事項の要旨
被告人が、町から自己名義の預金口座に臨時特別給付金を誤って振込入金されたことを利用して、正当な権限がないにもかかわらず、自己の電子計算機を使用し、銀行の電子計算機に対して、正当な権限があるような虚偽の情報を与え、オンラインカジノサービスの決済代行業者にオンラインカジノサービス利用料金の支払いをして、これを利用しうる地位を得た事案について、被告人に懲役3年、執行猶予5年間を言い渡した事例
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