事件番号令和4(あ)196
事件名死体遺棄被告事件
裁判所最高裁判所第二小法廷
裁判年月日令和5年3月24日
裁判種別判決
結果破棄自判
原審裁判所福岡高等裁判所
原審事件番号令和3(う)237
原審裁判年月日令和4年1月19日
事案の概要1 本件公訴事実の要旨は、「被告人は、令和2年11月15日頃、熊本県所在の当時の被告人方において、被告人が同日頃に出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室の棚上に放置し、もって死体を遺棄した」というものである。
2 第1審判決は、公訴事実記載の日時場所で、「被告人がその頃出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室に置き続けた」という犯罪事実を認定し、死体遺棄罪の成立を認め、被告人を懲役8月、3年間執行猶予に処した。
3 第1審判決に対し、被告人が控訴し、事実誤認、法令適用の誤り等を主張した。原判決は、被告人の行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たるか否かに関し、死体について一定のこん包行為をした場合、その行為が外観からは死体を隠すものに見え得るとしても、習俗上の葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものであれば、その行為は、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を害するものではなく、「遺棄」に当たらないとした上で、双子のえい児(以下「本件各えい児」という。)の死体を段ボール箱に入れて自室に置いた行為(以下「本件作為」という。)は、本件各えい児の死体を段ボール箱に二重に入れ、接着テープで封をするなどし、外観上、中に死体が入っていることが推測できない状態でこん包したもので、葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものではなく、本件各えい児の死体を隠匿する行為であって、他者がそれらの死体を発見することが困難な状況を作出したものといえるから、「遺棄」に当たる旨判示した(なお、原判決は、第1審判決が認定した被告人の行為のうち、段ボール箱に入った状態の本件各えい児の死体を自室に置き続けた行為は不作為による「遺棄」に当たらない旨判示した。)
判示事項1 刑法190条にいう「遺棄」の意義
2 死亡後間もないえい児の死体を隠匿した行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとされた事例
裁判要旨1 刑法190条にいう「遺棄」とは、習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体等を放棄し又は隠匿する行為をいう。
2 被告人の居室で、出産し、死亡後間もないえい児の死体をタオルに包んで段ボール箱に入れ、同段ボール箱を棚の上に置くなどして、他者が死体を発見することが困難な状況を作出したという被告人の隠匿行為は、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、刑法190条にいう「遺棄」に当たらない。
事件番号令和4(あ)196
事件名死体遺棄被告事件
裁判所最高裁判所第二小法廷
裁判年月日令和5年3月24日
裁判種別判決
結果破棄自判
原審裁判所福岡高等裁判所
原審事件番号令和3(う)237
原審裁判年月日令和4年1月19日
事案の概要
1 本件公訴事実の要旨は、「被告人は、令和2年11月15日頃、熊本県所在の当時の被告人方において、被告人が同日頃に出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室の棚上に放置し、もって死体を遺棄した」というものである。
2 第1審判決は、公訴事実記載の日時場所で、「被告人がその頃出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室に置き続けた」という犯罪事実を認定し、死体遺棄罪の成立を認め、被告人を懲役8月、3年間執行猶予に処した。
3 第1審判決に対し、被告人が控訴し、事実誤認、法令適用の誤り等を主張した。原判決は、被告人の行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たるか否かに関し、死体について一定のこん包行為をした場合、その行為が外観からは死体を隠すものに見え得るとしても、習俗上の葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものであれば、その行為は、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を害するものではなく、「遺棄」に当たらないとした上で、双子のえい児(以下「本件各えい児」という。)の死体を段ボール箱に入れて自室に置いた行為(以下「本件作為」という。)は、本件各えい児の死体を段ボール箱に二重に入れ、接着テープで封をするなどし、外観上、中に死体が入っていることが推測できない状態でこん包したもので、葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものではなく、本件各えい児の死体を隠匿する行為であって、他者がそれらの死体を発見することが困難な状況を作出したものといえるから、「遺棄」に当たる旨判示した(なお、原判決は、第1審判決が認定した被告人の行為のうち、段ボール箱に入った状態の本件各えい児の死体を自室に置き続けた行為は不作為による「遺棄」に当たらない旨判示した。)
判示事項
1 刑法190条にいう「遺棄」の意義
2 死亡後間もないえい児の死体を隠匿した行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとされた事例
裁判要旨
1 刑法190条にいう「遺棄」とは、習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体等を放棄し又は隠匿する行為をいう。
2 被告人の居室で、出産し、死亡後間もないえい児の死体をタオルに包んで段ボール箱に入れ、同段ボール箱を棚の上に置くなどして、他者が死体を発見することが困難な状況を作出したという被告人の隠匿行為は、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、刑法190条にいう「遺棄」に当たらない。
このエントリーをはてなブックマークに追加