事件番号 | 令和4(ワ)1462 |
---|---|
事件名 | 損害賠償請求事件 |
裁判所 | 札幌地方裁判所 |
裁判年月日 | 令和6年5月24日 |
事案の概要 | 本件は、先天性の聴覚障害があり、地方公共団体である被告が設置する特別支援学校である北海道札幌聾学校(以下「札幌聾学校」という。)小学部に在籍し又は在籍していた原告らが、被告の公務員が、日本手話を十分に使用することのできない教員を担任として配置し、その後も適切な対応をしなかったことは違法であり、これにより原告らが精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、それぞれ、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金550万円及びこれに対する令和5年3月31日(不法行為の終了の日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 |
判示事項の要旨 | 【事案の概要】 先天性の聴覚障害があり、被告が設置する札幌聾学校小学部に現在在籍し又は過去在籍していた原告らが、その第一言語である日本手話により授業を受けられなかったこと等は違法であり、これにより精神的苦痛を被ったと主張して、国家賠償法に基づき、それぞれ550万円の損害賠償を請求した事案である。 【主要な争点】 1 原告らがその第一言語である日本手話により教育を受ける権利は、憲法26条1項(学習権)、14条(平等権)、13条(人格権)により保障されるか。 2 札幌聾学校や北海道教育委員会は、原告らの札幌聾学校小学部入学前に、日本手話を基盤とするクラスの説明をして、原告らの保護者にその選択をさせたことにより、日本手話による授業を提供する義務を負うか。 【裁判所の判断】 1-1 憲法26条1項が保障する学習権の内容は、立法によりはじめて具体化され、具体的権利として保障されるところ、日本手話により教育を受ける権利を具体化する立法措置はされていないから、憲法上の具体的権利とはなっていない。 1-2 憲法26条1項は、「その能力に応じて、ひとしく」教育を受ける権利を保障し、憲法14条1項は法の下の平等を保障しているが、日本手話でひととおりの授業を提供するのではなく、その他のコミュニケーション手段も用いて授業を提供することは、その目的等に照らせば、不合理な差別的取扱いには当たらないから、上記憲法の各条項に反しない。 1-3 公権力に対し特定の言語での授業を求めることまでが、個人の人格の重要な要素であるとはいえないから、日本手話で授業を受ける権利は、憲法13条により保障される人格権の一内容とはいえない。 2 北海道教育委員会や札幌聾学校が、日本手話を基盤とするクラスの説明をした事実は認められない。 3 結論 原告らの請求はいずれも理由がないから棄却する。 |
事件番号 | 令和4(ワ)1462 |
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事件名 | 損害賠償請求事件 |
裁判所 | 札幌地方裁判所 |
裁判年月日 | 令和6年5月24日 |
事案の概要 |
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本件は、先天性の聴覚障害があり、地方公共団体である被告が設置する特別支援学校である北海道札幌聾学校(以下「札幌聾学校」という。)小学部に在籍し又は在籍していた原告らが、被告の公務員が、日本手話を十分に使用することのできない教員を担任として配置し、その後も適切な対応をしなかったことは違法であり、これにより原告らが精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、それぞれ、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金550万円及びこれに対する令和5年3月31日(不法行為の終了の日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 |
判示事項の要旨 |
【事案の概要】 先天性の聴覚障害があり、被告が設置する札幌聾学校小学部に現在在籍し又は過去在籍していた原告らが、その第一言語である日本手話により授業を受けられなかったこと等は違法であり、これにより精神的苦痛を被ったと主張して、国家賠償法に基づき、それぞれ550万円の損害賠償を請求した事案である。 【主要な争点】 1 原告らがその第一言語である日本手話により教育を受ける権利は、憲法26条1項(学習権)、14条(平等権)、13条(人格権)により保障されるか。 2 札幌聾学校や北海道教育委員会は、原告らの札幌聾学校小学部入学前に、日本手話を基盤とするクラスの説明をして、原告らの保護者にその選択をさせたことにより、日本手話による授業を提供する義務を負うか。 【裁判所の判断】 1-1 憲法26条1項が保障する学習権の内容は、立法によりはじめて具体化され、具体的権利として保障されるところ、日本手話により教育を受ける権利を具体化する立法措置はされていないから、憲法上の具体的権利とはなっていない。 1-2 憲法26条1項は、「その能力に応じて、ひとしく」教育を受ける権利を保障し、憲法14条1項は法の下の平等を保障しているが、日本手話でひととおりの授業を提供するのではなく、その他のコミュニケーション手段も用いて授業を提供することは、その目的等に照らせば、不合理な差別的取扱いには当たらないから、上記憲法の各条項に反しない。 1-3 公権力に対し特定の言語での授業を求めることまでが、個人の人格の重要な要素であるとはいえないから、日本手話で授業を受ける権利は、憲法13条により保障される人格権の一内容とはいえない。 2 北海道教育委員会や札幌聾学校が、日本手話を基盤とするクラスの説明をした事実は認められない。 3 結論 原告らの請求はいずれも理由がないから棄却する。 |