事件番号 | 令和4(受)2281 |
---|---|
事件名 | 損害賠償請求事件 |
裁判所 | 最高裁判所第一小法廷 |
裁判年月日 | 令和6年7月11日 |
裁判種別 | 判決 |
結果 | 破棄差戻 |
原審裁判所 | 東京高等裁判所 |
原審事件番号 | 令和3(ネ)2792 |
原審裁判年月日 | 令和4年7月7日 |
事案の概要 | 本件は、宗教法人である被上告人世界平和統一家庭連合(以下「被上告人家庭連合」という。)の信者であった亡Aが被上告人家庭連合に献金をしたことについて、上告人(亡Aは原審係属中に死亡し、同人の長女である上告人が亡Aの訴訟上の地位を承継した。)が、被上告人らに対し、上記献金は被上告人Y1を含む被上告人家庭連合の信者らの違法な勧誘によりされたものであるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等を求める事案である。 |
判示事項 | 1 宗教法人とその信者との間において締結された不起訴の合意が公序良俗に反し無効であるとされた事例 2 宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例 |
裁判要旨 | 1 宗教法人Yとその信者Aとの間において締結された書面による不起訴の合意は、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、公序良俗に反し、無効である。 ⑴ Aは、上記の締結の当時、86歳という高齢の単身者であり、その約半年後にはアルツハイマー型認知症により成年後見相当と診断された。 ⑵ Aは、Yの教理を学び始めてから上記締結までの約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓してYの儀式に参加していた。 ⑶ Yの信者らは、上記書面の文案を作成し、公証人役場におけるその認証の手続にも同行し、その後、Aの意思を確認する様子をビデオ撮影した。 ⑷ 上記不起訴の合意の内容は、上記多額の献金について、何らの見返りもなく無条件に不法行為に基づく損害賠償請求等に係る訴えを一切提起しないというものであった。 2 宗教法人Yの信者らによる信者Aに対する献金の勧誘について、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、献金をする者が献金をするか否かについて適切な判断をすることに支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、献金により上記の者又はその配偶者等の生活の維持に支障が生ずるなどした事情の有無やその程度等を総合的に考慮し、上記勧誘が勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱するといえるかについて検討するという判断枠組みを採ることなく、上記信者らが上記勧誘において献金をしないことによる具体的な害悪を告知したとは認められない、Aがその資産や生活の状況に照らして過大な献金を行ったとは認められないなどとして上記勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断には、献金勧誘行為の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、上記の判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法がある。 ⑴ Aは、献金当時、80歳前後という高齢であり、種々の身内の不幸を抱えていた。 ⑵ Aは、Yに対し、1億円を超える多額の献金を行い、また、自己の所有する土地を売却してまで献金を行い、残りの売得金をYの信者らによって構成される組織に預け、同組織を通じてさらに献金を行うとともに、同組織から生活費の交付を受けていた。 ⑶ Aの献金をめぐる一連の行為は、いずれもYの信者らによる勧誘等を受けて行われたものであった。 |
事件番号 | 令和4(受)2281 |
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事件名 | 損害賠償請求事件 |
裁判所 | 最高裁判所第一小法廷 |
裁判年月日 | 令和6年7月11日 |
裁判種別 | 判決 |
結果 | 破棄差戻 |
原審裁判所 | 東京高等裁判所 |
原審事件番号 | 令和3(ネ)2792 |
原審裁判年月日 | 令和4年7月7日 |
事案の概要 |
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本件は、宗教法人である被上告人世界平和統一家庭連合(以下「被上告人家庭連合」という。)の信者であった亡Aが被上告人家庭連合に献金をしたことについて、上告人(亡Aは原審係属中に死亡し、同人の長女である上告人が亡Aの訴訟上の地位を承継した。)が、被上告人らに対し、上記献金は被上告人Y1を含む被上告人家庭連合の信者らの違法な勧誘によりされたものであるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等を求める事案である。 |
判示事項 |
1 宗教法人とその信者との間において締結された不起訴の合意が公序良俗に反し無効であるとされた事例 2 宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例 |
裁判要旨 |
1 宗教法人Yとその信者Aとの間において締結された書面による不起訴の合意は、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、公序良俗に反し、無効である。 ⑴ Aは、上記の締結の当時、86歳という高齢の単身者であり、その約半年後にはアルツハイマー型認知症により成年後見相当と診断された。 ⑵ Aは、Yの教理を学び始めてから上記締結までの約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓してYの儀式に参加していた。 ⑶ Yの信者らは、上記書面の文案を作成し、公証人役場におけるその認証の手続にも同行し、その後、Aの意思を確認する様子をビデオ撮影した。 ⑷ 上記不起訴の合意の内容は、上記多額の献金について、何らの見返りもなく無条件に不法行為に基づく損害賠償請求等に係る訴えを一切提起しないというものであった。 2 宗教法人Yの信者らによる信者Aに対する献金の勧誘について、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、献金をする者が献金をするか否かについて適切な判断をすることに支障が生ずるなどした事情の有無やその程度、献金により上記の者又はその配偶者等の生活の維持に支障が生ずるなどした事情の有無やその程度等を総合的に考慮し、上記勧誘が勧誘の在り方として社会通念上相当な範囲を逸脱するといえるかについて検討するという判断枠組みを採ることなく、上記信者らが上記勧誘において献金をしないことによる具体的な害悪を告知したとは認められない、Aがその資産や生活の状況に照らして過大な献金を行ったとは認められないなどとして上記勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断には、献金勧誘行為の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、上記の判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法がある。 ⑴ Aは、献金当時、80歳前後という高齢であり、種々の身内の不幸を抱えていた。 ⑵ Aは、Yに対し、1億円を超える多額の献金を行い、また、自己の所有する土地を売却してまで献金を行い、残りの売得金をYの信者らによって構成される組織に預け、同組織を通じてさらに献金を行うとともに、同組織から生活費の交付を受けていた。 ⑶ Aの献金をめぐる一連の行為は、いずれもYの信者らによる勧誘等を受けて行われたものであった。 |