事件番号 | 令和6(ネ)1154 |
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事件名 | 損害賠償等請求控訴事件 |
裁判所 | 大阪高等裁判所 第10民事部 |
裁判年月日 | 令和7年1月23日 |
結果 | 破棄自判 |
原審裁判所 | 京都地方裁判所 |
原審事件番号 | 令和1(ワ)3532 |
事案の概要 | 公の施設(地方自治法244条)である滋賀県立長寿社会福祉センター(本件事業場)の一部である滋賀県福祉用具センター(本件福祉用具センター)においては、福祉用具についてその展示及び普及、利用者からの相談に基づく改造及び製作並びに技術の開発等の業務を行うものとされており、本件福祉用具センターが開設されてから平成15年3月までは財団法人滋賀県レイカディア振興財団(レイカディア)が、同年4月以降はレイカディアの権利義務を承継した被控訴人が、指定管理者(同法244条の2第3項)等として上記業務を行っていた。 控訴人は、平成13年4月、本件福祉用具センターにおける上記の改造及び製作並びに技術の開発(以下「本件業務」という。)に係る技術職としてレイカディアに雇用されて以降、上記技術職として勤務していた。また、控訴人と被控訴人との間には、控訴人の職種及び業務内容を上記技術職に限定する旨の合意(本件合意)があった。 被控訴人は、控訴人に対し、その同意を得ることなく、平成31年4月1日付けで総務課施設管理担当への配置転換を命じた(本件配転命令)。また、被控訴人は、新たな人事評価制度に基づく人事評価において、控訴人を5段階評価のうち最低ランクに位置付け、控訴人の基本給を月額3000円減額するという不利益変更を行った(本件不利益変更)。 本件は、控訴人が、被控訴人に対し、①安全性に重大な問題のある福祉用具(障害児向け入浴介助用具)について安全面を確保するため寸法の一部変更を行うよう提案したものの採用されず、従前の寸法で製作するよう求められたがこれを拒否したところ、被控訴人から業務命令拒否等を理由に訓戒書の交付を受けたこと等により、控訴人は精神疾患を発病して休職に至ったとして、労働契約上の安全配慮義務違反による損害賠償請求権に基づき、通院慰謝料184万円、弁護士費用18万4000円の合計202万4000円及びこれに対する平成22年6月23日(上記精神疾患の診断日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの、以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、②平成25年2月1日に復職した後も、上司の控訴人に対する言動がパワーハラスメントに該当するとして内部相談窓口に通報したにもかかわらず、被控訴人は、詳細な検討を行うことなく、パワーハラスメントに該当しないとの回答を繰り返すほか、本件配転命令を強行し、本件不利益変更を行ったことにより、控訴人は精神疾患を再発し、再び休職に至ったとして、労働契約上の安全配慮義務違反又は不法行為による損害賠償請求権に基づき(選択的併合)、通院慰謝料52万円、弁護士費用5万2000円の合計57万2000円(一部請求)及びこれに対する令和元年8月21日(上記再発した精神疾患の診断日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、③本件配転命令は、当事者間の本件合意に反するなどとして、債務不履行又は不法行為による損害賠償請求権に基づき(選択的併合)、慰謝料100万円、弁護士費用10万円の合計110万円及びこれに対する平成31年4月1日(本件配転命令に基づく異動日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(以下「本件損害賠償請求」という。)をそれぞれ求めるとともに、④本件不利益変更は、被控訴人による人事権の濫用に当たり、違法、無効であって、控訴人の賃金は、令和元年6月度支給分が9000円、同年7月度支給分が3000円の未払になるとして、労働契約による賃金請求権に基づき、上記未払賃金合計1万2000円及びうち9000円に対する令和元年6月22日(同年6月度賃金支給日の翌日)から、3000円に対する同年7月22日(同年7月度賃金支給日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 |
判示事項の要旨 | 被控訴人に雇用されていた控訴人が、被控訴人から職種及び業務内容の 変更を伴う配置転換命令( 本件配転命令) を受けたため、同命令は控訴人 と被控訴人との間でされた控訴人の職種等を限定する旨の合意( 本件合意) に反するとして、被控訴人に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害 賠償を求めた事案において、被控訴人は、控訴人に対し、その同意を得る ことなく職種及び業務内容の変更を伴う配置転換を命ずる権限をそもそも 有していなかったにもかかわらず本件合意に反して本件配転命令を行った ものであるから同命令は違法であり、被控訴人には同命令を行ったことに ついて過失が認められるとして、本件配転命令は、控訴人に対する関係で 不法行為を構成するものと判断され、被控訴人に対し、不法行為に基づく 損害賠償として慰謝料及び弁護士費用の支払が命じられた。 |
事件番号 | 令和6(ネ)1154 |
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事件名 | 損害賠償等請求控訴事件 |
裁判所 | 大阪高等裁判所 第10民事部 |
裁判年月日 | 令和7年1月23日 |
結果 | 破棄自判 |
原審裁判所 | 京都地方裁判所 |
原審事件番号 | 令和1(ワ)3532 |
事案の概要 |
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公の施設(地方自治法244条)である滋賀県立長寿社会福祉センター(本件事業場)の一部である滋賀県福祉用具センター(本件福祉用具センター)においては、福祉用具についてその展示及び普及、利用者からの相談に基づく改造及び製作並びに技術の開発等の業務を行うものとされており、本件福祉用具センターが開設されてから平成15年3月までは財団法人滋賀県レイカディア振興財団(レイカディア)が、同年4月以降はレイカディアの権利義務を承継した被控訴人が、指定管理者(同法244条の2第3項)等として上記業務を行っていた。 控訴人は、平成13年4月、本件福祉用具センターにおける上記の改造及び製作並びに技術の開発(以下「本件業務」という。)に係る技術職としてレイカディアに雇用されて以降、上記技術職として勤務していた。また、控訴人と被控訴人との間には、控訴人の職種及び業務内容を上記技術職に限定する旨の合意(本件合意)があった。 被控訴人は、控訴人に対し、その同意を得ることなく、平成31年4月1日付けで総務課施設管理担当への配置転換を命じた(本件配転命令)。また、被控訴人は、新たな人事評価制度に基づく人事評価において、控訴人を5段階評価のうち最低ランクに位置付け、控訴人の基本給を月額3000円減額するという不利益変更を行った(本件不利益変更)。 本件は、控訴人が、被控訴人に対し、①安全性に重大な問題のある福祉用具(障害児向け入浴介助用具)について安全面を確保するため寸法の一部変更を行うよう提案したものの採用されず、従前の寸法で製作するよう求められたがこれを拒否したところ、被控訴人から業務命令拒否等を理由に訓戒書の交付を受けたこと等により、控訴人は精神疾患を発病して休職に至ったとして、労働契約上の安全配慮義務違反による損害賠償請求権に基づき、通院慰謝料184万円、弁護士費用18万4000円の合計202万4000円及びこれに対する平成22年6月23日(上記精神疾患の診断日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの、以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、②平成25年2月1日に復職した後も、上司の控訴人に対する言動がパワーハラスメントに該当するとして内部相談窓口に通報したにもかかわらず、被控訴人は、詳細な検討を行うことなく、パワーハラスメントに該当しないとの回答を繰り返すほか、本件配転命令を強行し、本件不利益変更を行ったことにより、控訴人は精神疾患を再発し、再び休職に至ったとして、労働契約上の安全配慮義務違反又は不法行為による損害賠償請求権に基づき(選択的併合)、通院慰謝料52万円、弁護士費用5万2000円の合計57万2000円(一部請求)及びこれに対する令和元年8月21日(上記再発した精神疾患の診断日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、③本件配転命令は、当事者間の本件合意に反するなどとして、債務不履行又は不法行為による損害賠償請求権に基づき(選択的併合)、慰謝料100万円、弁護士費用10万円の合計110万円及びこれに対する平成31年4月1日(本件配転命令に基づく異動日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(以下「本件損害賠償請求」という。)をそれぞれ求めるとともに、④本件不利益変更は、被控訴人による人事権の濫用に当たり、違法、無効であって、控訴人の賃金は、令和元年6月度支給分が9000円、同年7月度支給分が3000円の未払になるとして、労働契約による賃金請求権に基づき、上記未払賃金合計1万2000円及びうち9000円に対する令和元年6月22日(同年6月度賃金支給日の翌日)から、3000円に対する同年7月22日(同年7月度賃金支給日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 |
判示事項の要旨 |
被控訴人に雇用されていた控訴人が、被控訴人から職種及び業務内容の 変更を伴う配置転換命令( 本件配転命令) を受けたため、同命令は控訴人 と被控訴人との間でされた控訴人の職種等を限定する旨の合意( 本件合意) に反するとして、被控訴人に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害 賠償を求めた事案において、被控訴人は、控訴人に対し、その同意を得る ことなく職種及び業務内容の変更を伴う配置転換を命ずる権限をそもそも 有していなかったにもかかわらず本件合意に反して本件配転命令を行った ものであるから同命令は違法であり、被控訴人には同命令を行ったことに ついて過失が認められるとして、本件配転命令は、控訴人に対する関係で 不法行為を構成するものと判断され、被控訴人に対し、不法行為に基づく 損害賠償として慰謝料及び弁護士費用の支払が命じられた。 |