事件番号令和5(あ)246
事件名業務上過失致死傷被告事件
裁判所最高裁判所第二小法廷
裁判年月日令和7年3月5日
裁判種別決定
結果棄却
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号令和1(う)2057
原審裁判年月日令和5年1月18日
事案の概要丙は、平成14年10月から東京電力株式会社代表取締役社長、平成20年6月から同社代表取締役会長として、同社が福島県双葉郡a町に設置した発電用原子力設備である福島第一原子力発電所(以下「本件発電所」という。)の運転、安全保全業務に従事していた者である。被告人甲は、平成17年6月から同社常務取締役、原子力・立地本部本部長、平成19年6月から同社代表取締役副社長、同本部本部長、平成22年6月から同社フェローとして、被告人乙は、平成17年6月から同社執行役員、同本部副本部長、平成20年6月から同社常務取締役、同本部副本部長、平成22年6月から同社代表取締役副社長、同本部本部長として、それぞれ丙を補佐して、本件発電所の運転、安全保全業務に従事していた者である。被告人甲、同乙及び丙(以下「被告人ら」という。)は、想定される自然現象により本件発電所の原子炉の安全性を損なうおそれがある場合には、防護措置等の適切な措置を講じるべき業務上の注意義務があったところ、同発電所に小名浜港工事基準面から10mの高さの敷地(以下、同基準面からの高さを「O.P.+10m」などといい、敷地の高さを「10m盤」などという。)を超える津波が襲来し、その津波が同発電所の非常用電源設備等があるタービン建屋等へ浸入することなどにより、同発電所の電源が失われ、非常用電源設備や冷却設備等の機能が喪失し、原子炉の炉心に損傷を与え、ガス爆発等の事故が発生する可能性があることを予見できたのであるから、10m盤を超える津波の襲来によってタービン建屋等が浸水し、炉心損傷等によるガス爆発等の事故が発生することがないよう、防護措置等の適切な措置を講じることにより、これを未然に防止すべき業務上の注意義務があったのにこれを怠り、防護措置等の適切な措置を講じることなく、漫然と同発電所の運転を継続した過失により、平成23年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「本件地震」という。)に起因して襲来した津波が、同発電所の10m盤上に設置されたタービン建屋等へ浸入したことなどにより、同発電所の全交流電源等が喪失し、非常用電源設備や冷却設備等の機能を喪失させ、これによる原子炉の炉心損傷等により、①同月12日午後3時36分頃、同発電所1号機原子炉建屋において、水素ガス爆発等を惹起させ、同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果、被害者3名に傷害を負わせ、②同月14日午前11時1分頃、同発電所3号機原子炉建屋において、水素ガス爆発等を惹起させ、同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果、被害者10名に傷害を負わせ、③上記水素ガス爆発等により、被害者43名に長時間の搬送や待機等を伴う避難を余儀なくさせた結果、同被害者らを死亡させ、④上記水素ガス爆発等により、a町所在の病院の医師らが同病院から避難を余儀なくさせられた結果、同病院で入院加療中の被害者1名に対する治療及び看護を不能とさせ、これにより同被害者を死亡させた(以下、被害者らの死傷結果を「本件結果」といい、本件地震の発生から本件結果の発生までの一連の事象を「本件事故」という。)
判示事項津波による原子力発電所の事故につきこれを設置し運転していた電力会社の役員らに業務上過失致死傷罪が成立しないとした第1審判決を維持した原判決が是認された事例
事件番号令和5(あ)246
事件名業務上過失致死傷被告事件
裁判所最高裁判所第二小法廷
裁判年月日令和7年3月5日
裁判種別決定
結果棄却
原審裁判所東京高等裁判所
原審事件番号令和1(う)2057
原審裁判年月日令和5年1月18日
事案の概要
丙は、平成14年10月から東京電力株式会社代表取締役社長、平成20年6月から同社代表取締役会長として、同社が福島県双葉郡a町に設置した発電用原子力設備である福島第一原子力発電所(以下「本件発電所」という。)の運転、安全保全業務に従事していた者である。被告人甲は、平成17年6月から同社常務取締役、原子力・立地本部本部長、平成19年6月から同社代表取締役副社長、同本部本部長、平成22年6月から同社フェローとして、被告人乙は、平成17年6月から同社執行役員、同本部副本部長、平成20年6月から同社常務取締役、同本部副本部長、平成22年6月から同社代表取締役副社長、同本部本部長として、それぞれ丙を補佐して、本件発電所の運転、安全保全業務に従事していた者である。被告人甲、同乙及び丙(以下「被告人ら」という。)は、想定される自然現象により本件発電所の原子炉の安全性を損なうおそれがある場合には、防護措置等の適切な措置を講じるべき業務上の注意義務があったところ、同発電所に小名浜港工事基準面から10mの高さの敷地(以下、同基準面からの高さを「O.P.+10m」などといい、敷地の高さを「10m盤」などという。)を超える津波が襲来し、その津波が同発電所の非常用電源設備等があるタービン建屋等へ浸入することなどにより、同発電所の電源が失われ、非常用電源設備や冷却設備等の機能が喪失し、原子炉の炉心に損傷を与え、ガス爆発等の事故が発生する可能性があることを予見できたのであるから、10m盤を超える津波の襲来によってタービン建屋等が浸水し、炉心損傷等によるガス爆発等の事故が発生することがないよう、防護措置等の適切な措置を講じることにより、これを未然に防止すべき業務上の注意義務があったのにこれを怠り、防護措置等の適切な措置を講じることなく、漫然と同発電所の運転を継続した過失により、平成23年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「本件地震」という。)に起因して襲来した津波が、同発電所の10m盤上に設置されたタービン建屋等へ浸入したことなどにより、同発電所の全交流電源等が喪失し、非常用電源設備や冷却設備等の機能を喪失させ、これによる原子炉の炉心損傷等により、①同月12日午後3時36分頃、同発電所1号機原子炉建屋において、水素ガス爆発等を惹起させ、同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果、被害者3名に傷害を負わせ、②同月14日午前11時1分頃、同発電所3号機原子炉建屋において、水素ガス爆発等を惹起させ、同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果、被害者10名に傷害を負わせ、③上記水素ガス爆発等により、被害者43名に長時間の搬送や待機等を伴う避難を余儀なくさせた結果、同被害者らを死亡させ、④上記水素ガス爆発等により、a町所在の病院の医師らが同病院から避難を余儀なくさせられた結果、同病院で入院加療中の被害者1名に対する治療及び看護を不能とさせ、これにより同被害者を死亡させた(以下、被害者らの死傷結果を「本件結果」といい、本件地震の発生から本件結果の発生までの一連の事象を「本件事故」という。)
判示事項
津波による原子力発電所の事故につきこれを設置し運転していた電力会社の役員らに業務上過失致死傷罪が成立しないとした第1審判決を維持した原判決が是認された事例
このエントリーをはてなブックマークに追加